自動車業界再編から見る日本のサラリーマン社長がパッとしないと言われがちな構造的な理由
日産自動車の経営難が連日ニュースで報じられている。経営陣の手腕が厳しく問われ、非難の声が高まる中、多くの人が「経営者の資質」に疑問を抱いている。しかし、ここで考えたいのは、日産のトップを務める経営陣は、決して無能ではないという点だ。むしろ、日本の大企業で一定のポジション以上にいる人は、非常に優秀であることが多い。
それにもかかわらず、バブル崩壊以降、日本の大企業が経営危機に直面すると「サラリーマン社長」の経営手腕が疑問視される場面が繰り返されてきた。これは個々の経営者の能力の問題というよりも、日系大企業に根付く「サラリーマン社長」の構造的な問題が影響していると考えられる。
変革とスピード感が求められる時代に苦手な「サラリーマン社長」
グローバル化や技術革新が進む現代において、企業経営には変革とスピード感が求められる。しかし、多くのサラリーマン社長は、こうした環境変化への対応が苦手とされている。その背景には、以下の三つの要因がある。
内部事情に精通しすぎている
長年同じ会社に勤めることで、企業内の事情に精通しすぎてしまい、何かを変えようとするときに、そのコストとリスクにばかり目が行きがちになる。その結果、本質的な変革を躊躇し、現状維持の傾向が強まる。成功体験の呪縛
サラリーマン社長は、既存のビジネスモデルの中で成功を収めた結果、トップに昇りつめる。しかし、変革には過去の成功体験の否定が伴うことが多いため、自らのキャリアを否定することへの抵抗感が生まれ、新しい挑戦が難しくなる。外の世界を知らない
一つの会社でキャリアを積んできたため、外部のビジネス環境や他業界の動向に対する知見が不足しがちである。そのため、変革の必要性は理解していても、具体的なイノベーションの方向性やビジョンを描きにくい。
「両利きの経営」と知の探索
現代の企業経営では、「知の深化」と「知の探索」をバランスよく進める「両利きの経営」が求められている。特に、イノベーションを生み出すためには、遠い関係性を持つ要素との希少な組み合わせを生み出すことが重要とされる。
しかし、サラリーマン社長は、社内での経験に偏ることで「知の探索」の経験が不足し、異業種との連携や新しいビジネスモデルの発想に弱い傾向がある。このため、既存のビジネスモデルに固執し、大きな環境変化に対応しきれないリスクが高まる。
変化に弱い経営構造の見直しが急務
現在の自動車業界の再編が示しているのは、変革を促進できる経営体制の必要性である。サラリーマン社長の弱点を克服するためには、企業が経営陣の育成やサクセッションプラン(後継者計画)を抜本的に見直すことが求められる。企業経営の在り方を見直すことが、これからの競争力強化のカギとなるだろう。