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二拠点居住、なぜしない?〜#2023年の働き方

「#2023年の働き方」というお題だが、2023年は「二拠点居住元年」となるのではないだろうか。(写真は、UnsplashS. Tsuchiya撮影)

二拠点居住を後押しする政策

なぜなら、二拠点居住を後押しする政策が目白押しだからだ。まず、東京から子連れで移住すれば100万円もらえる。東京に住んでいる子育て家族であれば、誰でも手にできるお金だ。

この制度は移住を前提としているが、会社が東京でテレワークであれば、東京にも住居を残して、地域に家を借りて住民票を移してしばえば100万円をゲットできる。

このような強引な制度が実現してしまう背景には、地方創生をいくら進めようとしても東京流入が止められなかった政府が、手段を選ばず東京流出を増やそうと躍起になっていることがある。

さらに、企業もこういった制度の活用を後押ししているように見える。パナソニックホールディングスもNTTグループも、社員がどこに住んでもいい人事制度を導入済みだ。

移住はつらいよ

しかし地方に移住、とくに子どもも一緒となると、難問が多い。学校の選択肢がせばまるし、もちろん転職の選択肢もせばまってしまう。運良く大企業にリモートで働き続けられればよいが、会社を辞めた時に、家族で移住してしまっているとリスクは高い。東京への大企業や政府の一極集中をそのままにしながら、地域への移住を促進することには無理があるだろう。

空き家対策に政府も本腰を入れ始めたが、移住して空き家をリノベーションして住む家族は、まだまだ一握りのイノベーターにすぎないだろう。

まずは関係人口ということで、メタバースを活用する事例も現れている。地域の自治体も「いきなり移住」をねらうのではなく、「まず関係人口」とターゲットを絞っている。

移住の決め手は学校

私の周りでも、軽井沢の風越学園をめあてに移住する人がかなりいる。神奈川県の藤野がこれほどまで移住者を集めているのも、シュタイナー学園の存在が大きい。島根県の海士町が移住者の活躍で有名になったのも、未来を変える島の学校「島前教育魅力化プロジェクト」のおかげだ。徳島県の神山町に新たに生まれた「神山まるごと高専」も話題だ。

自然のなかで子育てをしたいというニーズに加え、詰め込みではない主体性を活かした教育が魅力となっている。感度の高い移住者が増えていること自体も、新たに移住する人たちにとっての魅力となっている。

移住政策の美味しいとこどりとしての二拠点居住

さて、「2023年の働き方」に戻って考えてみよう。移住を促進したい政府が多様なインセンティブを用意し、リモート化でオフィスコストを削減したい大企業もそれに相乗りする。

そのなかで次の大きな二つのトレンドが生まれるのではないだろうか。

  1. 子育て世帯では、魅力的な学校のある地域への移住が増える。ただ仕事は東京に残しているため、二拠点居住となる可能性が高い。

  2. 単身世帯では、パラレルワールドを楽しむ二拠点居住が増える。地域に安い部屋を借りることで、かんたんにワーケーションができるようになるからだ。

住む場所の自由の格差

これらを実行に移す人たちは、ある程度の経済的余裕のある事業主や大企業社員に限られているかもしれない。言い方を変えると、「住む場所の自由の格差」が生まれてくることでもある。

良い話かどうかわからないが、二拠点居住をしていることがステータスになるだろう。二拠点居住は「自分が自分の人生のボスである」ことの証明になるからだ。このようなトレンドが進むことは、新たな格差が生まれるようにも見えるが、実は悪いことではない。それは、二拠点居住がその実践者の視野を広げ、東京一極集中の効率化社会への疑問をもたらし、「真のウェルビーイングとは何か」といった本質的な問いをもつきっかけとなるはずだからだ。

ステータスとしての二拠点居住が、本質的なウェルビーイング社会の入り口になれば、それこそ政府が求める結果に近づくに違いない。

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