よく分からない時代(1)
ここにきて、未来を予測する、未来がどうなるかを考える組織が増えている。企画部署に未来展望をさせることが増えている。しかしこれまでのようなトレンド引きのばしの未来予測には違和感があり、技術開発アイテムを並べ、こうなります式のハード中心の未来予測も通用しなくなった。それは日本だけでなく、世界も同様で、前提が大きく変わっている.。みんな、思考停止している
1 これから先はどうなる?
コロナ禍3年が経った。コロナ禍が終わったのか終わっていないのか、よく分からない。それもあり、先がより見えなくなった
コロナ禍が落ちついたと思い、街にでてくる人が増え、インバウンドが戻りつつあるが、コロナ禍前の社会に戻るとは思えない。ウクライナ紛争がどうなるのかもよく分からない。世界中で今までになかったような事柄が刻々と起こっている。世界に起こっている変化の構図の全貌が見えてこない。世界が、日本がこれからどうなろうとしているのかがよく分からない
コロナ禍の社会影響を研究しつづけていることから、これからの社会がどうなるのか?どんな社会影響があるのか?を問われ、未来展望シナリオを描いたり、コロナ禍後社会の見取り図について講演をすることが多いが、ますますよく分からない時代になってきた。ではどうしたらいいのか?と訊かれることも多く、答えを先にいうと
これからこうなるという答えよりも
変化のメカニズムをつかむことが大事
2 未来予測は信じない
VUCAやブラックスワンといったパワーワードを散りばめた将来予測がこれまでどれだけつくられただろうか?未来予測は、なんどもなんどもつくられ、いろいろなバージョンの未来予測をしてきた
企業のトップは企画スタッフにその策定を求め、企画スタッフはコンサルにその作成を依頼するー日本人は、未来予測とか未来展望が好き。それに関する本が出たら中身よりもタイトルに飛びつきベストセラーになり、未来予測の講演会を開けば満席になる、オンラインセミナーを全国どこからでも聴く
しかしその誰かが予測した未来図や未来シナリオを信用しない。そんな本を持っていることやセミナーに参加したことに意味がある。勉強はしたよ、知っているよ、しかしそれを受け入れない。それは、なぜ?
そうはならへんで、そこまでならんで
と、トップがその予測を受け入れないだろうことを分かっているから、その予測を自社・自組織の長期経営戦略に盛り込まない
たしかにそれらは、最小自乗法で過去の傾向線を引き延ばす将来予測だったり、見えている問題を論理的に解決するデザイン思考擬(もど)きの予測だったりして、最近流行のチャットGPTを活用した未来予測だったりと、これまでの実績・枠組みが崩れかけようとしている現在を起点とした未来予測は、リアルの場では使えないと思っている
技術もそう。世界から新たな技術が次々と入ってくる。それらを受けいれる日本は相変わらずの供給者論理で、社会・市場・人々のリアルな姿が見えていない、つかんでいないので、どんなに進化した技術も社会のアリルとつながらないので、あらたな社会の様式・スタイルがうまれてこない
3 どこを、だれを見本にしたらいいの?
失われた日本の30年は令和に入ってもつづき、コロナ禍になって、ウクライナ紛争がつづき、グローバルサプライチェーンが崩れて、エネルギーや食糧等価格が急騰して、世界的金融不安が起こりはじめ、世界秩序が変わりだしている。いままで「勉強」したことがないことが起こっている
いままでと流れとちがう。いままでのやり方では通用しそうにない。それは今までも言われてきたが、今回は今までとは違う、どうなっているのだと言われても
よく分からない
現在がどうなっているのか、これからの方向性が見えない。何が正しいのか正しくないのか、どっちがいいのかよくないのか、よく分からない。絶好調だと言われていた世界的企業でさえ、ずっこけだしている。どうなっているんだろう
どこを見本にしたらいいのだろう
これまでベンチマークしていた企業があった。その企業のやり方を真似していたら、なんとかなるだろうと思っていた。ロールモデルにしていた人がいた。その人のようにしていったら、うまくいくだろうと思っていた。それがそうでなくなった。名門と言われる大企業も、これからのロールモデルにならない
よく分からない時代になった
4 マスクをつけるのかつけないかは自己判断
どうしたらいいのか、これから先が見えない、分からないのだとしたら、自分・自社はこうだと考えることを実行するしかない。そのような自分・自社が思うにようにできる立ち位置にいないといけない。とはいうものの
自分のことを自分で決められない人が多い
世の中がどうなろうとも、自分・自社がやりたいことをやればいいが、そうできない人・企業は大変である
これまでも、トップが無能だったら、会社がどうなるのかが不安だった。アホな経営者はたいてい経営の舵取りに失敗するから、歴然とアホな経営者は分かった。しかし20年前のバブル期までは、まだ日本の人口が増えて市場が伸びていたので、どんなに上がボンクラでも、会社はそれなりに回った
しかしそれがそうでなくなった。今は歴然とした失策をしなくても、失敗する時代となった。あの人は立派な経営者だ、すごい先見の明がある経営者と言われていても、あっという間にひっくり返る時代になった。世の中でどんなに素晴らしいと言われている企業ですら、つぶれるかもしれない時代になった。経営者がアホでもアホでなくても、よく分からない時代となった。つまり現代社会は
よく分からない
がキーワード。コロナ禍後を支配する社会観は「よく分からない」。今、あなた、あなたの会社が考えていること、しようとしていることが、正しいのか正しくないのかが分からなくなっている
正しいのか正しくないかが分からない。それがよく分からない時代だから、自分・自社のことは自分・自社で決めることができる能力が大事である。卑近な例がある
マスクをつけても
つけなくてもよくなった
この4月から、マスクをつけないといけないと強制されることがなくなった。マスクをつけている人がマスクをつけていない人に、どうしてマスクをつけていないのかと言ったり、マスクをつけている人がマスクをつけていない人から、いつまでマスクをつけているんだよと言われたりする状況になった。これは、どういう状況かというと
「自己判断」が求められる
コロナ禍3年の現在地は、それ。マスクをつけるのが正しいのか正しくないのかが、だれにもよく分からない。その会社に入ることがいいのか悪いのか、よくわからない。その会社に入れば、何歳でどうなって、何歳でこのようになると、約束されてきたレールがなくなった。そんなことは会社は決めるのではなく、自分で決める
だとしたら、大学に行くのが正しいのか正しくないのかも、よく分からない。大学に進学したら必ず偉くなれる、それが保証されている時代は終わっている。駅近のタワーマンションを買ったら幸せになれるというのも、よく分からなくなっている。それは
マスクをつけるのかつけないかと
同じようなもの
マスクをつけるかつけないかは「自分の判断」で、マンションを買うのも買わないのも自己判断で、大学に行くのか行かないのも自己判断
時代のキーワードは「よく分からない」
「よく分からない」シリーズの次回は、ではどうしたらいいのかを、考えてみたい