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起業家はエゴイスト?遠慮と思いやり、押しつけと変革のちがい

起業家とサラリーマンを比べると必死さがちがう、とかいう話をよく聞きます。もちろん起業しないと必死になっていない、ということはないと思うのですが、たしかに起業家の大部分にある種の「必死さ」を感じるのは真実だと思います。


たとえばイベントなどで人と会って話す機会があった際、起業家の多くが、聞かれてもいないのに隙を見つけて自分の事業について熱く話してきます。空気も読まず、ちょっとうざいくらいに話しだすと止まらない。

一方で(自分もかつてはそうだったのですが)、企業で事業をしている人は、なんというか、もっと紳士的です。「なんか押し売りみたいだし、迷惑だろうし…こっちから言わなくても興味をもったら聞いてもらえるんじゃないかな…」という感じ。

僕も大企業から起業した口なので、色んな人から「起業したい」という相談されることも多いのですが、相談に乗ってみると後者のような人が意外と多い気がします。

「そのサービス、ほんとにいいと信じるならとりあえず周りにもっとがんがん薦めてみようか!」

と熱く言ってみると、「は、はあ…」と腰が引けてしまうことが多い。


「遠慮」と「思いやり」のちがい

両者を比べると、前のめりに売り込む前者は「エゴ」でしょうか?

ですが、僕はむしろ、遠慮して薦めない人も、否、遠慮する人の方にこそ「エゴ」を感じる事が多いです。

「遠慮」は一見、相手の立場を考えていて、その意味で「エゴ」で無いように見えます。しかしよくよく観察してみると、実は遠慮する人のほとんどが「悪く思われたくない」とか「そこまで苦労したくない」という自己保存の行動原理で動いている場合が多かったりします。

ちょっとややこしいですが、僕は「遠慮」と「思いやり」は違うと思っています。「思いやり」は、たとえ自分が不利益を被ったり、自分の立場を賭けてでも、相手のために行動を起こすことです。

「相手の気持ちを考えると…」という言葉が、ただの行動を起こさない言い訳なのか、自らを賭しても他者に寄り添おうとする本当の「思いやり」なのか。この違いを見極めるポイントはその行動で「自分」が「変化」するか?ということな気がしています。


「押し付け」と「変革」のちがい

同じように、たとえば人にガンガン売り込んでいくような人でも、それがただの自分勝手な「エゴ」の押し付けでしかない場合もあるとおもいます。

例えば、満員電車で電車に乗っていたりすると、ぐいぐい肘で押しながら乗り込んで来たり、やたら舌打ちをしたりするような人がいます。相手の話も聞かず、ただただ自分の自慢をするような人には、これと似たような印象を覚えます。

先ほど、「遠慮」と「思いやり」について「変化」が鍵、と言いましたがここでも同じことが言えるのではと思っています。


ちょっとややこしいので表にまとめます。

「自己」と「他者」の観点の二軸に、「保存」と「変化」の2つのパラメーターを取ると、2×2=4パターンのタイプができます。

僕はこの中で、「エゴ」のゾーンは「遠慮」と「押し付け」の2パターンだと考えています。自分のコンフォートゾーンは維持し、保存する。そのために相手の側に変化を強要する「押し付け」はもちろんですが、行動を起こさない「遠慮」もまたエゴな行動原理ではないでしょうか。

相手のことを本当に考えるなら、本来、その関係性の力によって自分が変化しないわけにはいきません。他者がコンフォートな状態にあれるように自分の行動を変える、これが「思いやり」だと思います。


では、起業家はどうか?

起業家は、社会や価値の変革を目指します。すると、他者にとってはまだ理解できない価値観を実現するために、相手にも変化を求めざるを得ない。

ただし、それは自分も変化させ続けることが前提です。起業家は、その行動がどれだけアンコンフォートであっても(失敗する、とか馬鹿げている、とかセンスが悪いとか言われ続けます)自らも変化し続けながら、他者の価値を変化させていき、社会変革を引き起こしていくのです。

ですから、やはり僕は「遠慮」をしていてはいけない、と思います。自分が信じるもの、実現すべきと信じるものがあれば、やはりそれを訴えていくべきだと思います。

起業家はエゴイストか?

行動が自分起点である点では「エゴ」のように見えるかもしれません。ですが、多くの起業家と話すと、自分の存在をも賭けて行く様は「エゴ」を超えているように思えます。

「エゴ」を超えたなにか。

それに突き動かされながら、自己と他者が「変化」のうちに止揚する、そういうゾーン、ここが起業家の行動原理ではないかという気がしています。(そしてこのゾーンの起業家の行動原理は「アート」と似たところがあるかもしれません)


というわけで、もし今、起業を考えてる方がいらっしゃったら、僕からの最初のアドバイスはこちらです。

「そのサービス、ほんとにいいと信じるなら、とりあえず周りにもっとがんがん薦めてみようか!」

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