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SXSWでバズフィードCEOが語ったインターネットを救う方法:

デジタルニュースメディアの象徴として知られるバズフィードCEOのジョナ・ペレッティ氏が、現在テキサス州オースティンで開催されているテクノロジーとスタートアップの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に登壇しました。

今年始めには全社員15%のレイオフを実施し、フェイスブックのアルゴリズム変更、ベンチャーキャピタルから出資を受けたデジタルメディアゆえの困難さが指摘されていただけに、ペレッティ氏の発言には注目が集まっていたと思われます。

スピーチ全体を視聴して感じたのは、こうした同社、そして業界の不安を払拭するために、そして何よりインターネットを救うために、具体的な取り組みや成果を伝えつつ、楽観主義を力強く訴える内容が印象的でした。

最近は国内でもジャーナリズム、デジタルメディアに対する悲観論、惨状を示す記事、議論は多く見受けられます。これをスピーチの中では「Dumpster Fire:手のつけられない大混乱、炎上状態」という表現を使っています。ただ一方で、今回のペレッティ氏のように、具体的なビジョンや解決策を眼にする機会は少ないと感じます。そんな意味でも以下の動画、或いは同じタイミングで公開されたペレッティ氏による社員向けメモなどは数多くのインターネット、デジタルメディアを救うためのヒントが共有され、たくさんの刺激と楽観主義(Optimism)を感じさせてくれる内容になっています。

ペレッティ氏のスピーチの中で気になったポイントは2つあります。

①巨大テックプラットフォーム、FANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)からの収益は過去4年間で700万ドルから8400万ドルへと12倍に成長している。フェイスブックの動画プラットフォームからの収益は2018年の第1四半期から第4四半期にかけて50万ドルから300万ドルに急激に成長している。時間はかかったけれど、テックプラットフォームとのパートナーシップには改善が見られ、今後も更なる成長が予想される。

インターネットだからこそ出来ること、例えば双方向コミュニケーション、共同イノベーション(co-creation)などを行うことで、今まで想像出来なかったような新しい収益源から持続可能な収益を上げることが可能になっている。

インターネットビジネスというのはかつて注目を集めるコンテンツを作成してページビュー、クリックを稼ぐというモデルだった。そこへソーシャルメディアが登場したことでシェアされるようになり、そこで友達や知り合いとの会話が生まれ、メディアとの相互やり取りが行われることが可能になった。コンテンツに共感することでコミュニティが生まれ、トランザクション(購買体験)、さらにはアクションやソーシャルインパクトが生まれ、体験につながる例が数多くバズフィードのコンテンツをきっかけに生まれている、と事例を紹介しています(紹介ビデオコンテンツがきっかけで有名店になったトラック販売レストラン、レシピサイトがきっかけでウォルマートやメイシーズのキッチングッズの購入につながるケースなど)

フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを辞めることが人気があったり、インターネットはひどいものだ、と悲観論を唱える人が最近多いけれど....インターネットはよくなる、インターネットだから出来ることがあるんだ、ということを感じさせてくれる内容です。

スピーチの最後のスライドには「喜びと真実を拡げよう。インターネットにはそれが必要です。そしてそれは世界が求めているものです。私たちはそれができます、一緒に取り組むことで。」と記されています。

久しぶりにペレティ氏のプレゼンテーションを見て思うのは「具体的に」実験を積み重ねながら「ビジネスパーソン」として今までにないデジタルメディア「ビジネス」に取り組んでいる姿勢に対する尊敬です。アイデンティティ、食べ物、かわいいアニメなどの切り口で読者に訴えかけるコンテンツ作りに関しては、以下のような読者の共感ポイントを分類し、緻密に計算された上でメディア運営がされていることが分かります。

調査報道、ジャーナリズムに対しては今回のプレゼンテーションの中ではあまり多くは触れられてはないですが、以下のブライアン・ステルター氏とのポッドキャストの中では巷で噂されているニュース部門の売却の観測を退け、コストはかかるけれど、とても大事なもので、個人的にも今後継続的に力を入れていきたい、とその想いを語っています。

最後に、個人的に一番共感した点は、デジタルメディアは具体的な行動をもたらす大きな力を持っているという点、そのためにもソーシャルメディアに過度に悲観的にならないで欲しい、というペレティ氏の訴えでした。インターネットに対して少し悲観的になっていた自分にとってもとても染み入る内容でした。メディアビジネスに関わる方は全編通して是非チェックしてみてはいかがでしょうか。

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*過去関連記事(2016/12/21)

*更に深掘りしたい方は以下のCNNブライアンステルター氏とのポッドキャスト、ニーマンラボによる記事も参考になります。

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