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世界を豊かにすることを目指したデジタル通貨Libra(リブラ)は前途多難

ブロックチェーンという非中央集権・分散型の技術は、国家や国際法に統制されてきた様々な事象に不満や不安をもった人たちに、希望を与えました。

しかし、ブロックチェーン技術を使ったビットコインなどの仮想通貨は、価格変動幅が大きく、投機性が高過ぎるために、思想的な支持があっても、それだけでは保有しづらいものでした。

そんな中で、フェイスブックは複数の国際基軸通貨を担保にした、価値の安定性の高い、デジタル通貨リブラを開発しました。

リブラは、

「数十億人に力を与えるシンプルな国際通貨と金融インフラを実現すること」

をミッションステートメントとしています。

以前から、フェイスブックが発展途上国に住む20億人に対するサービスを提供しようとしてきたことと、直接的に結びついたミッションです。

まずは、少額決済と無料送金の実現を目指しており、銀行口座を持つことのできない発展途上国の消費者に対して、国や政府の枠組みを超えて、金融インフラが整備されることが期待されます。

しかし、実現までには2つの大きな困難があります。

1. リブラを各国政府が認める

発展途上国では国の信用が低い傾向にあり、貨幣の価値が不安定になりがちです。

もし、多くの国民が、不安定な自国通貨を安定性の高いリブラに変換していくと、国内で流通する通貨をリブラが占有していき、政府や発券銀行が通貨の入出管理を行う経済調整ができなくなる危険性があります。

リブラ・アソシエーションは、各国の規制に従うと宣言しているため、実際には規制を遵守し、大きな問題は発生しないかもしれません。

しかし、そもそも非中央集権型のブロックチェーン技術によるデジタル通貨を、中央集権の権化である各国政府が認可することは、なかなか難しいのではないでしょうか。

2. フェイスブックを各国政府が信用する

英国の選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカは、フェイスブックの個人情報を悪用しました。その活動が、2016年のブレグジットや米国大統領選挙へ多大な影響を与えたとされ、世界的な問題になりました。

フェイスブックの情報管理のずざんさと不透明さが激しく追及される事態となり、その後も、米国議会からのフェイスブックに対する風当たりは強いままです。

もちろん、リブラはリブラ・アソシエーションによって運営されるため、フェイスブックからは独立した存在であり、問題は切り離されていることになっています。

それでも、リブラ・アソシエーションの創設メンバーや評議会の加入基準が不明瞭であるため、本当にフェイスブックから独立した機関であるのか疑念が持たれているなど、すっきりした状態にはなっていません。

既存秩序の枠組みの中で生きる人たちにとって、新たな思想と技術の力によって27億人のユーザを抱える、若き経営者であるマーク・ザッカバーグCEOは、ただでさえ恐怖の対象になりがちです。それが、このけちが付いた現状からの信用回復は、容易ではなさそうです。

リブラは、金融インフラが未整備な環境に暮らす人々へ、大きな価値をもたらす可能性を秘めており、是が非でも推進を続けてもらいたいです。それでも、実現までの道のりは、まだま長く困難であると予想しています。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)

エクスペリエンス設計を支援するビービットの代表( https://www.bebit.co.jp/ ) 鳥取県米子市出身、横浜国立大学経営学部卒業。TED 貢献志向の仕事( https://www.youtube.com/watch?v=FUTi1At5B-o )

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