離散が相次ぐリブラ計画~ビザ、マスターも~
先日、ペイパル脱退について以下のnoteを書かせて頂きました。
ここでは以下のように書いて締めました:
いずれにせよ、10月中にはリブラ協会のメンバーが正式決定されるという中で、今回のペイパルの動きが「蟻の一穴」となりそのまま瓦解に向かうのか、それとも再びリブラを支持する企業が次々と現れるのか、リブラ計画は瀬戸際に来ていると言えます
残念ながら、現状では前者のシナリオが走っているように見受けられます。私は金融市場の参加者であり、またマクロを見るエコノミストですのであくまで既存の金融システムの参加者として摩擦なく運営していけるかという視点でしか議論ができません(その知見しかありません)。その意味で諸々のコラムを書かせて頂いて参りました。特に最初に書いた以下のコラムは大変多くの反響を頂戴しました:
ここで展開した議論を再度強調するつもりはありませんので、ご一読頂けると幸いですが、やはり技術的なことが分からない、GAFAとの距離もさして近くない金融の人間から申し上げると、リブラ協会に最低1口1000万ドル拠出してまで参画する企業の立場に立てば、①「そもそも儲かりそうにない」、②「規制当局から睨まれる恐れ」、③「そもそもドルではダメなのか?」の3点について明確な反論が用意できない計画に手を貸すインセンティブはないということではないでしょうか。
例えば③をどう考えるべきでしょうか。筆者は「ドルに裏付けられる資産は、それもまた、ドルなのである」と思うのですが、リブラの強みとして再三、法定通貨に裏付けられた価格安定性が強調されるので違和感を覚えます。なお、円やユーロの対SDR(IMFの特別引出権)相場を見れば分かりますが、バスケット通貨建てにしたところで価格変動はビットコインよりは抑制されても、現状の変動為替相場並みにはあるはずです。これをステーブル(安定)と呼ぶかどうかは語り手・聞き手の主観に拠る部分が小さくないと筆者は当初から思っています。今と大して変わらないならドルで良い。そう考える向きは相応に存在するはずです。
また、超低金利環境を思えば①の懸念が、欧米の高官発言を見れば②の懸念が拭えません。リブラ協会はバイサイドとしては新米なわけですから①については特に入念な説明を求めたい向きもあるのではないでしょうか。
いずれにせよ「2020年前半までに100社」を目指していたリブラ協会のメンバーは増えるどころか減る一方です。これを打開するだけの調整が水面下で進んでおり、ジュネーブ会合を経て急激に勢力を拡大するという展開もあったりするのでしょうか。まずは今月下旬、いよいよ開催されることになったザッカーバーグの米議会における公聴会に注目が集まります。