見出し画像

若手続々?ドイツのアニメ声優界隈

ドイツでは若手声優の活躍の場が増えているようです。イベントでファンと交流する2人の声優、ヤーナ・ドゥニャ・グリースさん、エレーニ・メラーさんを眺めてきました。今回は日本から発信されるアニメの海外展開について少し考えてみたいと思います。

日本ではアニメ声優は増加傾向にあるようです。

声優の活躍の場はアニメだけにとどまりません。ライブやゲームなどを含めると、4兆円規模の市場をけん引していると日経新聞は伝えています。

ドイツでもアニメ声優は増えているのかもしれません。アニメ専門では日本国外で最大手となるクランチロールはサイマル配信で吹替版も制作しています。また、ディスク版が制作される際には、ドイツ語音声のキャストの発表はドイツのニュースサイトで必ず取り上げられています。筆者も2018年にドイツのベテランと若手声優の2人にインタビューしたことがあり、吹き替え需要は増えていると伝えていました。

さて、こうしたドイツの声優たちは国内の大型イベントには以前からゲストとして招待されていました。そして、そういった事情が最近変わってきたなと感じたのが、今回訪問した「Wie.MAI.KAI」です。フランクフルト近郊の町フレアスハイムで6月18日、19日に開催され、来場者数は3000人を超えました。コロナ前の記録を更新したそうです。といってもドイツでは「Dokomi」、「AnimagiC」、「Connichi」といった大型イベントでは来場者の桁がひとつ増えます。

ここで大事なのは、中堅イベントでもアニメ声優が招待されるようになったということです。

ドイツの中堅アニメファンイベント「Wie.MAI.KAI」

さて、ドイツの声優さんんたちのトークはどういった内容だったのでしょうか。筆者が様子を見に行ったのはいわゆる「Q&Aパネル」。来場者から質問を受け、それに応じる形でトークが進行するというものです。

会場でメモした内容をざっくり紹介してみましょう。

・ドイツの声優はエージェントに所属せず、録音スタジオが直接手配する。
・自身もアニメファンなのでモチベーションが維持できる。
・批判については、話題にされること自体が素晴らしいと思う。
・嬉しかったのは、子供のときに見た作品の声を担当できたこと。
・収録はグループではなく、個別に行う。
・音響監督がアニメに不慣れが場合があり、感情表現で対立することも。
・日本の声優の演技を参考にすることもあるが、最終的には音響監督の指示に従う。

筆者メモ
ドイツの声優ヤーナ・ドゥニャ・グリース(左)さんとエレーニ・メラーさん(右)

質疑応答のメモのうち太字にした最後の2点がちょっと気になりました。日本の国外におけるアニメの現地語吹き替えの課題が見え隠れしているようにも思えたからです。(機会があれば一度じっくりインタビューしてみたいものです。)

ちなみに、ヤーナさんは2021年だけでも『ホリミヤ』、『僕のヒーローアカデミア(4期)』、『小林さんちのメイドラゴンS』など21作品に参加、エレーニさんもゲーム『ファイナルファンタジー7リメイク』や『ワンピース』、『僕のヒーローアカデミア』などで声を担当したそうです。

この他、ドイツでは筆者の住むフランクフルトでも7月に中堅クラスのアニメイベント「Cosday」が開催され、「ワンピース」に参加した声優数人がゲストとして参加しました。

さて、まとめます。ドイツのアニメ声優業界を眺めてみて、気になったのは2点です。ひとつは、声優の活躍の場が大型イベントから中堅イベントに広がりつつある点。もうひとつは、音響監督の事例にとどまらず、例えばアニメ音声の制作ノウハウの分野で交流ができる余地があるのではないかという点です。

アニメ声優を言祝ぐファン界隈というと、日本ではもはや当たり前かもしれません。一方で、ドイツでは今、生まれつつあるのかもしれません。

他の言語圏ではどうでしょう?同様にアニメ声優のプレゼンスが上がっているのでしょうか?皆さんはどう思われますか?

(最後に蛇足ですが、当日撮影した写真をもう少しお見せします。)

「Wie.MAI.KAI」で実施されていたチェロのコンサート。ゲームやアニメの音楽をリッチな演奏で聞かせるプログラムは最近ドイツのイベントでもよく見かけます。
「Wie.MAI.KAI」の物販エリアで見かけた「お守り」。
「Wie.MAI.KAI」の会場は町の市民文化施設ですが、会場の外にはドイツの町でよく見かける木組みの家が立ち並ぶ風景も。コスプレの写真撮影がはかどりそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
写真はすべて筆者が撮影。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?