中国のフリマアプリ闲鱼(シエンユー)の新たな発表でネット民や転売ヤーがパニックに。メルカリとは違った使われ方やビジネスのやり方が面白い
今回は中国のフリマアプリの話題です。
少し前に、メルカリが日本国内では好調だが、アメリカでは苦戦していて規模を縮小する方向に進んでいるというニュースをSNSなどで目にしました。
このニュースでも取り上げられていた、アメリカでのライバルのTemuやSheinといった中国企業は絶好調。日本の皆さんも見る頻度が増えてきているTemuの恐るべき海外事業の戦略とスピード感は以前紹介しました↓
中国でのオンライン買い物アプリ系は、SheinやTemu、タオバオやJDが有名なのであまりご存知ない方も多いかもしれませんが、実は中国のメルカリこと闲鱼(シエンユー)というサービスがあります。タオバオでおなじみのアリババが運営していて中国国内では人気です。しかもメルカリには無い機能もたくさんあってかなり面白いサービス。
この、闲鱼に異変が起きていますので紹介しましょう。
■中国のメルカリこと闲鱼(シエンユー)の人気と市場規模
ボクの印象では最初はそこまでの人気ではなかった闲鱼ですが、今では億単位のユーザー数を誇る中国の中古品取引プラットフォームの最大手です。メルカリ同様に不要な物を処分してお金を稼いだり、余剰品を片付けて資源を有効活用できる。
しかも闲鱼(シエンユー)はメルカリとは違って手数料を一切徴収しないため、ネットユーザーから「功徳+n」と称賛されていました。
どのくらい人気サービスかというと、今年3月に発表されたデータでは
との巨大さと好調ぶり。闲鱼(シエンユー)は小红书(中国版のインスタグラム)やBilibilliと並び、現在の若者に最も人気のあるプラットフォームのひとつなのです。
しかし、「功徳+n」の神サービスにも変化が。まず、2023年6月に闲鱼は高頻度・高額の売り手に対してついに手数料を課すことを発表。ここで発表された規則は、売り手の当月の取引件数が10件を超え、累計取引額が1万元を超えた場合、超過分について実際の取引額の1%をソフトウェアサービス料として徴収するというものでした。
これには、多くのネット民が称賛。というのも、高頻度・高額の闲鱼売り手の中には、実際はプロの転売ヤーや再販業者がいるのは明らかで、迷惑していた人も多数です。「これらプロの人達はプラットフォームの流量がもたらす利益を享受しているのだから、一定の手数料を支払うのは当然のことだ」と評価されていました。
■手数料ゼロでもサービス運営可能だったのはなぜか?
ちなみに、手数料を取らずにどうやって事業を継続していたのか。2014年にリリースされた闲鱼は10年間も無料C2Cビジネスをどうやって続けていたのか、のカラクリがわかりますでしょうか?
闲鱼は中国では最も市場シェアの高いC2C取引プラットフォーム(昨年末に公開されたDAUは4000万、MAUが1.6億)なのですが、その中での主流な取引はC2C、B2C、C2B2Cの順。なかでも、売り手としてはCが絶対的優勢で、全体の約75%を占めるそうです。
そんな闲鱼のほとんどの収入は、残りの25%のBからでした。それは広告や、製品回収、性能テストなどで、Bだと認定されたらCと異なり手数料などが取られるのです(強いて言えば、Cからもデジタル商品など比較的価値の高いものの鑑定サービスからは収益化していたようですが、ビジネスとして成り立つほどの額ではない)。
また、なんといってもタオバオやTmall、アリペイを持っているアリババが運営している強みがあります。アリババグループのサービスの一環として活用されていて、タオバオとかで買ったものはワンクリックで闲鱼で転売できます。たとえ闲鱼で稼げなくても、タオバオとTmallのためにより良いエコシステムを構築してあげたり、アリペイの利用頻度を向上するための存在で十分過ぎるほどのビジネス価値があるとの分析も多数。
そして、闲鱼の急成長の背後にはコロナ禍後の節約志向もあるでしょう。日本でのメルカリもコロナ禍後に急成長しましたでしょうか?
↑商品じゃなくても、自分で提供できるサービスで闲鱼経由で稼ごうとする人もいます。上の図面にちょっと変わった需要のサービスの数々が挙げられました。例えば新米運転の乗り添い(心強くなる的な)、告白の練習相手、ゲーム上達の指導、上司の言葉や行動についての分析、拾いたい野良猫の”誘拐”、休みを取る口実のプランナーなどがあります。
また、周りの闲鱼の愛用者に聞いてみても、フリマだが、お得な値段で新品やほぼ新品の購入はよくあることだそうです。例えばAppleの新学期キャンペーンでイヤホンのおまけがあり、不要でそのまま未開封で転売する人が多いといった感じ。
これはフリマアプリあるあるですが、中国の企業では忘年会で豊富な景品を用意するところが多く、その前後を狙えば景品が出品された(デジタル製品から家電まで)をお得な値段で新品で買えるという攻略法も。
■ついに手数料が少額課される時代に。闲鱼の未来はどうなる?
話を手数料の件に戻します。前回の「高頻度、高額取引者に手数料を課す」とした発表から1年後の2024年の7月下旬、闲鱼は「9月1日からすべての売り手に基本ソフトウェアサービス料を課す」と発表。
具体的には、注文の実際の取引額の0.6%をサービス料として徴収し、1件あたり最高60元を上限とする、というもの。また、高頻度・高額の売り手について超過分の注文については、実際の取引額の1%をソフトウェアサービス料として徴収するというもの。
まぁ普通のユーザーにとってはごくごく少額ではありますが、0だったものが1になる衝撃はあります。C2Cの売り手も、消費者も、今までにない負担になることに抵抗があるのは当然です。闲鱼の告知が公開されてからSNSではすごい反響でした。「早く売りに出さないと」「誰か他の無料フリマ教えて」。なかにはアリババのライバルのJDに「チャンスだぞ!早く仕事しろ(手数料無料のサービス作って)」と応援する人も笑。
また、話題になったのはサービス料の徴収だけでなく、闲鱼の中古車取引でのチャット料金制度導入予定について。
闲鱼は中古車全車種カテゴリの売り手と、同カテゴリの商品情報でプライベートチャットするユーザーに対するルールを設定。それは、
「同一ユーザーは、1年間で最大100人の中古車全車種の売り手とプライベートチャットによるコミュニケーションを行うことができる。特定の期間内にユーザーのコミュニケーション制限数に達した場合、それ以上の中古車全車種の売り手とプライベートチャットでコミュニケーションを行うことはできない(新年度が始まるとコミュニケーション制限は解除される)」
とのこと。
この背景には、中古車の情報交換の際に、一部の買い手が売り手に執拗な嫌がらせをしたり、売り手の個人情報を不正に収集して転売するといった不適切な行為が増えていて、多数の苦情が寄せられていたことがあります。このあたりの悪どい商売を思いつく才能にはいつものように脱帽しちゃいますが、一般のユーザーに不利益がないような形に是正されることはポジティブと思います。
今回の手数料の発表について闲鱼側は「闲鱼のソフトウェアサービス料は主に、取引管理、データストレージ、ソフトウェア運営などの必須コストがこれに当たり、売り手の円滑な経営と買い手の円滑な体験を保証するために利用される」と回答。
まぁ妥当かなとは思いますが、今後サービスがどうなっていくのか。
そして、これを機に調べてたんですが、メルカリって10%も手数料とってるのですね。。日本のフリマアプリ利用者の皆さん、お疲れ様です。
(参考資料)