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中国で“オンライン講義を爆破”する人々が登場。ネット暴力の社会問題をどう解決する?

オンライン講義中のネット暴力の影響で中国の女性教師が心筋梗塞で亡くなった件は日本のメディアでも報道されました。

そもそもオンライン講義を行っている理由は中国のゼロコロナ政策による防疫対策ですが、今回の件はゼロコロナ政策への不満よりも、ネット暴力への怒りがほとんど。

そして、この新たなネット暴力の実態が日本ではほとんど報道されていない。日本の皆さんがイメージするものの斜め上をいく悪質ぶりなのです。今、中国のみんなが政府やプラットフォームに規制や対策を求める状態になっています。

■まずは今回の件について

今回の話題の中心になった残念な出来事は河南省の新鄭市で起こりました。

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↑高校の歴史教師(娘がいるママさん)がオンライン講義でネット暴力を受け、その後自宅で亡くなったとの書き込みがWeiboに投稿され瞬く間に拡散、炎上しました。10月中旬から新鄭市はコロナ対策として全ての高校がリモート授業状態です。

その後、この教師が勤めている高校である新鄭第三高校の管理部門もオフィシャル発表をしました。

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↑ローカルの教育現場を管理する政府機関である教育局は「ネットで話題となっている女性教師の死亡について、すでに警察に介入してもらっておりネット暴力犯罪について調査を進めている」と発表しました。

また、同日に受講した学生が提供した情報からオンライン講義に関する情報が外部に漏れていて、受講生ではない人もオンライン教室にいて迷惑行為を行っていたことが判明。

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↑生徒は学籍番号や名前で登録するのが一般的ですが変な名前とアイコンで入った人がいました。

亡くなった教師の娘の話によると、当日のオンライン講義では何者かが乱入し、勝手にマイクをオンにして歌を歌ったり、汚い言葉で叫んだり、エロい動画を流したり、と講義の邪魔をしていたとのこと。

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↑乱入者は講義に入るための情報共有者に感謝し、同じこと(迷惑行為)に興味がある学生の募集までしてました。

もちろん、授業で使われていたオンライン会議用のソフトには主催者が強制的に参加者の一部の機能を禁止したりすることが可能なのですが、IT技術が進んでいて情報スキルが高い中国においても、教師の中にはパソコンの操作に詳しくない先生も相当な数がいます。

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↑この日も授業の秩序を取り戻したがったとある学生が、迷惑行為を行う乱入者を追い払おうと先生に主催者権限を要求していたのですが、結局できないまま講義が終わってしまったそうです。

亡くなった教師の娘の話によると、似たような状況は10月中旬からすでに始まっていて、最初はクラスの学生の悪ふざけだと思っていたそうです。ただ実際には2週間以上ネットいじめを受けていたとのこと。

■「網課爆破」について

そしてこの女性教師の事故が社会問題の議論への引き金となりました。今回の書き込みがWeiboでバズってから一部の学生や教師は、自分もネット暴力に遭っていること、自分が授業中に受けていることは偶然ではないことにようやく気づきました。この事象には「網課爆破」(オンライン講義を爆破する)という名前までつけられました。

爆破を実行する人はまず受講生からオンライン講義のリンクや暗証番号を入手し、学生のふりをしてオンライン会議室(授業)に入って、授業の途中で邪魔を実施します。また、「網課爆破」を実行する人たちはすでに組織化されていて、ハンターや爆発者と自称し、IMアプリでのグループチャットを使って交流していることが明らかになります。

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↑この「網課爆破」はすでにビジネスになっていると言われています。記者の調査報道によると、相場は10元前後(約200円)で、案件の良い時は1日で数百元を稼ぐことができます。一番安い依頼はたったの1.5元(約32円)で行われるとも。

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↑次々とネットで明かされるケース。これは実際の依頼記録で、依頼者は「会議室番号はxxxxxxです。20数分間しかないから誰か早く来て」と募集。ほかにも「xxxx会議室から支援要請、xxxx会議室に侵入してください」などの交流が見られます。

記者の調査によると、最初は一部の学生が面白がって自分のオンライン講義の情報を漏らし、侵入者が講義への邪魔も軽くいたずら程度だったよう。ところがこれがエスカレートしていて、受講したくない学生がお金を出してまで講義ができなくなるように邪魔することになり、罵倒や違法情報のスクリーン共有まで実行するようになっています。

また、記者が実際に潜入した爆破組織のグループチャットを見ると、“爆発者”のほとんどが2000年以降生まれで、中学生が一番多い、かつ男性が7割程度。自分が未成年であり万が一バレても法的処罰にならないということを武器にしているということ。

中国のネット民曰く、この年の不良たちが、オンラインでの活動によって簡単に“大人をひねり潰す”ことは、低学年の学生へのいじめしかできない時代に比べ、だいぶ刺激的であるとも分析されています。

■現時点の対策

ここまで発展してきたネット暴力「網課爆破」に対し、国は新たな動きをみせました。

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中央インターネット情報弁公室が各インターネット企業にネット暴力を防ぐために一連の措置をできるように要求しました。この内容が長いのですが、簡単にまとめると

・ネット暴力が発生する時にはDMやコメント、RTなどワンクリックでの防護(ブロック)機能を提供する
・ネット暴力の首謀アカウント、多発アカウント、煽るアカウントなどに対しサービス停止などの対応策を作ったり、法的措置で対応できるようにする
・簡単に利用できる告発機能を設置し、ネット暴力だと分かり次第素早く対応できるようにする

などの指導・要求提示となります。海外メディアからみて、より一層言論の自由がなくなるではないかと思う方もいるかもしれませんが、僕の観察では、言論の自由うんぬんよりも網課爆破をなんとかしてもらいたいという中国ネット民が圧倒的に多いです。

そしてもちろん政府の動きだけではないです。リモートサービスのテンセント会議や釘釘(アリババ)なども素早く対応しました。

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↑例えば主催者が招待したアカウントだけが入ることが可能で、その招待をRTすることもできない仕様に(これはこれで不便で困りそうな時はありますがね)

情報リテラシーの水準によって、亡くなった先生のように複雑な機能をうまくこなせない教師もたくさんいるわけです。

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↑中国のネット民が様々な「網課爆破」対策を共有し、爆破防止するためにソフトの既有機能をどう利用すればいいかのスクショと詳しい説明がまとめられています。そして学生に対して「自分の先生に送るように」と呼びかけが入っています。

■中国のネット環境と規制管理の変化

中国ではすでに10億以上ネットユーザーがいて、ネット社会はある意味成熟されました。みんなの収入や学歴だけでなく世界観や価値観、教養、人間としてさまざまな差があり、ネット社会なのにリアル社会に近づいていると言えます。さらに半匿名性のネット社会ではリアル社会以上に様々な問題が生じています。

そしてここ数年感じているのは、中国政府のインターネットへの管理態度は、すでにネット上のどうのこうのを規制することではなく、ネット社会をリアル社会の延長として捉え、リアル社会と同じような管理対策を実行する傾向が強いというもので

先日の政府による発表もそのベクトルにあったもののように思います。SNSやネットサービスは日本より発達しているので、今後中国で起きているような問題が日本でも起こりうるかもしれません。話題になった事例をこのnoteで取り上げていきますのでぜひ参考にしていただければと思います。

(参考資料)

https://m.thepaper.cn/baijiahao_20619002





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中国情報局@北京オフィス

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