
自分の常識を捨てるためにフィールドノートの技法を学ぼう
マーケティングリサーチで大切にしたい態度がまとまっている記事を、日経クロストレンドの連載で見つけました。
赤ちゃん向けの玩具を開発するピープル株式会社が運営する「ピープル赤ちゃん研究所」という、赤ちゃんの行動観察を行う専門組織の取り組みが紹介されていました。
研究所のコンセプトが素敵です。
“赤ちゃん観察”を商品開発にとどめておくのはもったいない。もっとみなさんに広げたい。
記事の中で、このような行動観察の「心得」が紹介されていました。
観察の心得
1.いつも赤ちゃんから
知識や常識より、 目の前の赤ちゃん
2.まるっと全肯定
どの行動にも、意味がある
3.もしかしてを楽しむ
気づきからはじまる、 明日もまた変わる
調査前に決めつけていないか?
私も、普段の仕事で行動観察(エスノグラフィーと呼ばれるもの)をプロジェクトで取り組むことがあります。
行動観察に限らず、マーケティングリサーチで大切なのは「自分の常識の外に出る」ことだと考えています。
こちらは、個人的に大切にしている3つのこと。
1. 自分たちの外「顧客の行動や感情」に帰依する
2. そのために顧客を徹底的に観察する
3. 自分たちの常識の外に出る
しかし…
常識なんて簡単に捨てられませんよね。
ピープル赤ちゃん研究所の心得も、とても良いなと感じながらも、
では、どうすれば?
で行き詰まってしまいがちです。
そこで工夫したいのがメモの取り方です。
観察時に、どのようにメモをとるかを変えるだけで「発見の量と質」を高めることができます。
ヒントは文化人類学のフィールドノートにある
学生のときに文化人類学のゼミに入っており、その時に教わった「フィールドノートの記述」が今のマーケティングの仕事に活きていると感じています。
文化人類学の分野では、
・フィールドワーク=現場に出て観察する
・フィールドノート=観察したことを記述する
この2つが基本の作法としてあります。
現場に出て行動観察をする際に、下記の要素を押さえてメモをとります。
フィールドノートの書き方
1. その場ですぐに書く(記憶に頼らない)
2. 抽象化せず具体的かつ描写的に書く
3. 基本情報 (いつ、 どこで、 誰が、どのような振る舞いを、どのような状況で)
4. 自分自身の状況(感情も含めて)を書く
5. 後から引用できるようにノートをとる
ポイントは主観を入れずに書くこと。
メモを取るときは、意味ある、ないの判断・解釈をせずに事実を描写していきます。
参考書籍
質的社会調査の方法―他者の合理性の理解社会学 の書籍がとても面白く、下記の観点が参考になります。
書かれている内容のポイントをまとめます。
・非合理な他者の行動を合理的に読み解く、ことが質的調査の目的
・アンケートや既存顧客データから「○○○の人びとは△△△である」と語ってしまいがちなので注意
・調査の中で感じた自分の「気分」は、発見のヒントになる
顧客の行動は、いつも非合理なので、
これは関係ないかも…
と感じる行動にこそ意味があったりします。
このような人文学のリサーチで体系化されている、態度とフィールドノート=メモの取り方を意識するだけでも、行動観察は、より楽しく意味あるものになると考えています。
ぜひ日常生活の中にも、マーケティングの仕事の中にも、常識の外に出るために観察する練習を入れ込んでみてください。
ちなみに、ゴールデンウィークは観察力を磨きたい!という方には、この2冊の本がおすすめです!