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2023年は対面でのコミュニケーションが強い組織を作るのに鍵となる

2023年はニューノーマルの定着が課題となる

コロナ禍は、私たちの働き方に大きな影響を与え、変化を促した。テレワークの推進やワーケーション、業務プロセスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に代表される「ニューノーマル」と呼ばれる働き方が一気に浸透した。
2022年は、コロナ禍での自粛が緩和される中で、「ニューノーマル」と従来の働き方の間でどのようにバランスをとるべきか手探りで最適解を見つけようとしてきた。富士通のようにテレワークを積極的に進めようという企業もあれば、ホンダのように対面を基本とする方針に立ち返った企業もある。
基本は0か100ではなく、ハイブリッドで運用する中で、自社にとって最適な在り方を見つけようとしている。これは日本のみならず、米国をはじめとした海外でも同様だ。

テレワークで生まれた個人と経営者の認識ギャップ

ニューノーマルで変化が生じるなか、各社の対応が最もわかれるところはテレワークだろう。たとえ同じ業界であっても、テレワークを認めなければ人材の確保が難しいと肯定的に考えるところもあれば、対面ではないと難しいとテレワークを認めない企業もある。
テレワークではなく対面を重視したいと述べる企業で有名なところでは、イーロン・マスク氏の率いるテスラモーターズやTwitterが挙げられる。また、スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏も、テレワークからオフィスに戻って欲しいという意向を伝えている。

これらの経営者の言葉を聞いていると、同じテレワークよりも対面だと言っているのに、多くの日本企業がテレワークを拒否してきた理由とは趣が異なっているように感じる。それは、「+α」の付加価値を生むためにテレワークが障害となっているようだ。
ホワイトカラーが業務を行う上で、対面かテレワークかによってアウトプットが大きく異なることはほとんどない。特に個人にとっては、人間関係のストレスが軽減し、自分のペースで仕事ができることが大きな恩恵と感じる人も多い。特に、子育てや介護がある個人からするとテレワークは非常に助かる制度だ。エンジニアを中心に「テレワークが認められない企業で働くことは考えられない」という声を、求職者と採用担当者の両方から耳にする。
一方で、企業にとって競争優位は個人が目の前の業務を確実に遂行する中だけで、できあがるものでもない。強力な企業文化や企業特殊的技能(特定の企業内でのみ必要とされる企業に固有の熟練)が源泉となって競争優位が生み出される。加えて、企業文化や企業特殊的技能は他社にとって模倣が困難であるがゆえに、企業の独自性を生み出すことができる。
テレワークでは、目の前の業務をこなし、個人が持っている専門性を発揮するという点では問題なく仕事をこなすことができる。個人目線では仕事をこなすことができているし、成果も出ているので問題はない。しかし、経営者目線から見ると、自社の独自性や競争優位を生み出すような強い企業文化や企業特殊的技能が育まれているようには感じられない。そして、この状態に危機感を募らせることになる。
コロナ禍になってデジタル化が進む中、パーパス経営の重要性が声高に叫ばれた。これはテレワークによって仕事は進むものの、企業文化の醸成が疎かになっている現状への危機感と無関係ではないだろう。

対面のコミュニケーションに意味付けが必要になる

テレワークを推進している企業の人事担当者や若手ビジネスパーソンと話をしていると、組織へのコミットメントや組織文化を理解して体現しようという意識が希薄になっていると感じることがままある。彼ら・彼女らには仕事上の問題もないし、テレワーク下で成果を出している。しかし、組織コミットメント・上司部下間の相互理解・企業文化の浸透・エンゲージメントのように、組織行動論の分野で重要だと考えられてきた要素の欠落があるように思われる。
当然、テレワークの環境下でも、優れた組織コミットメントとエンゲージメントを発揮し、上司部下の良好な関係を築き、組織文化を体現しているような個人は存在する。いわゆる、スター社員と呼ばれるような人たちだ。このような上位数%のスター社員がテレワークでも優れた生産性を発揮することはイーロン・マスクもハワード・シュルツも認めている。しかし、問題なのは中位程度の過不足ないレベルで成果を出している従業員だ。そして、この層が最も大多数を占める。
そうすると、「対面のコミュニケーション」は、業務遂行のためというプロジェクト・マネジメントよりも、組織文化や企業特殊的技能を培うチーム・ビルディングとしての性格が強くなるだろう。ただ業務をこなすだけであればテレワークで終始しても大きな問題はない。問題は、テレワークのままだとチームにならず、強い企業文化が生まれないことだ。
しかし、チームにならず、企業文化ができないことに個人レベルで問題意識を持つことは難しい。チームができておらず、企業文化が醸成されていなくても、目の前の業務は進んでいるためだ。
テレワークが浸透する前は、企業文化は一緒に仕事をする中で浸透させることができた。しかし、テレワークとハイブリッドで運用するようになると、企業文化の醸成と浸透には意識して取り組む必要がある。そのためのチーム・ビルディングの手段として、2023年は「対面のコミュニケーション」を上手く活用することが重要となるだろう。

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