西武の新聞広告「わたしは、私」を掘り下げて考えてみる #マーケティングトレース
昨日は元旦ということもあり、新聞広告のクリエイティブに関してTwitterで盛り上がりました。
新聞広告は学びの宝庫であることは間違いないです。
とくに元旦の広告となれば、その企業のブランドメッセージや1年の事業戦略におけるメッセージが集約されるわけなので。
このnoteでは、特に盛り上がった西武の「わたしは、私」の広告をマーケティング視点で掘り下げて考えてみたいと思います。
広告も、「良かった」で終わらせてしまったらもったいないので。
西武・そごうの元旦広告は3年前から
西武は、過去3年は、同じ広告コンセプトで元旦に仕掛けてきています。
ちなみに2016年は樹木希林さん。
年齢を脱ぐ。
冒険を着る。
2019年は、「女の時代」を表現した広告が賛否両論をよびました。
批判も浴びながらも、自分たちのコンセプトをブラさずに打ち出し続ける姿勢は素晴らしく、このコンセプトの裏側に何があるかを背景を読み解いていきたいと思います。
西武・そごうってどんな会社?
店舗数:西武8店舗、そごう7店舗
池袋本店、横浜店など首都圏を中心に全国に15店舗
売上:6043億6200万円(2019年2月28日時点)
営業利益:32億6600万円(2019年2月28日時点)
主要株主:セブン&アイ・ホールディングス
※2005年にセブン&アイ・ホールディングスが買収
店舗事業のミッション:新しい発見を提案し続ける百貨店へ
百貨店カテゴリーでは、国内では5番目の売上規模。
最近の傾向としては、地方の店舗は閉鎖をし、リストラも行っています。
構造改革中という状況で、決して右肩上がりに成長してきているわけではないわけです。
キャッシュポイントは大きく分けると下記3つ。
①百貨店売上げ(オンライン売上含む)
②不動産収益
③クレジットカード
※非公開企業なので推測です
百貨店を取り巻く市場背景を整理
まずは、百貨店業界の市場背景や業界構造を簡単に整理しておきます。
PEST分析のフレームワークから、外部環境を整理してみましょう。
政治:インバウンド対策は政府としても強化
経済:百貨店の市場規模は1991年の約10兆円をピークに縮小
社会:百貨店離れが進む
技術:消費におけるEC化率が上がる
収益源は不動産やクレジットカードを中心とした金融にシフトしている百貨店は増えてきている。
直近の百貨店売上を支えているのは、内需よりインバウンドの傾向が強い。
高度経済成長期に買い物の王様として君臨していた百貨店は、今は苦戦が強いられていることは変わらない状況です。
新規参入者としてのEC業界
新規参入者として、人が自分にあったものを、お手軽に変える場所としてZOZOタウンのような存在が出てきています。
SNSやスマートフォンの影響により、社会的に、消費のとらえ方が変わってきているわけですね。
西武が生き残っていく上での問い
ZOZOタウンを超える買い物体験を提供するためにはどうすれば良いか?
西武の競合は、直接競合が百貨店、間接的に競合になるのがZOZOタウンを中心としたインターネットで買い物ができる環境をつくっている事業者と定義します。
西武のターゲットは誰か?
百貨店で買い物をしたいというニーズが顕在化している層は、既に他の百貨店(伊勢丹や京王など)の会員の可能性が高く、態度変容を起こすことは難易度が高そうです。
そのため、20代後半~40代前半の顧客層に対して、西武が魅力的な場所として認知してもらえることが重要だと考えます。
百貨店全般が、ロイヤル顧客は「高齢化」が進んでおり、どのように若者にサービスを届けていくかは課題になっているのは共通ですね。
マーケティングの4Pと広告訴求の関連性
今回の元旦広告で注目を集めたのは、西武の広告Promotionです。
百貨店は価格Priceは安くい買い物する場所ではありません。
広告メッセージの意図を考えてみます。
仮説
消費ではなく「自己投資」という態度変容を起こす必要があったのではないかと考えています。
自己投資という視点をもってもらうための「わたしは、私」というコンセプトだったのではないでしょうか?
百貨店は、社会のトレンドを発信する「起点」となる役割がある。
というより、社会のトレンドを自ら創り出していくポジションをとらないと、生き残っていけない。
西武は上記の流れから、スタンスをとり、メッセージ性を強調した広告を仕掛けているのではないかと考えています。
マーケティングトレースのまとめ
与件整理
●ターゲット
今後は20代後半~40代前半の若い顧客層の行動を促していくことが鍵
●競合
価値競合としてのZOZOタウン
●マーケティングミックスの工夫
プロモーションの軸は「わたしは、私」をブラさず価値観を伝える
●収益ドライバー
売上=客数×客単価とシンプルに捉えて、客数を伸ばすための打ち手を考えていく
上記の条件を、「新しい発見を提案し続ける百貨店へ」の事業ミッションとブレない形で展開していくことが大切になってくると考えています。
そして、百貨店カテゴリーの5番目にいる西武・そごうは、商品Productでの差別化を図ることは難しく、広告Promotionで差別化を図ることが、フォロワー戦略の教科書通りに考えても重要だと捉えています。
自分が西武・そごうのCMOだったら?
上記を踏まえて自分なりの仮説を言語化します。
打ち手①店舗周辺で過去のキャンペーンも配信
キムタクや、きりんさんなど、過去の「わたしは、私」の広告も流すと、コンセプトが浸透しやすくなるのではないでしょうか?
駅ナカのサイネージや、ジオターティング広告を活用して、西武店舗の近くを通った時にメッセージを伝えて、ブランド好意度を高めていきたいところです。
②「わたしは、私」のコンセプトに紐付くキャンペーン
2018年は、SNS主導で社会に問題意識を伝えていく広告が注目を集めました。これらのキャンペーンとコラボレーションをして、顧客接点を増やすのはどうでしょうか?
例えば、ミルボンの「女子力」って何だろう。というキャンペーンと、「わたしは、私」のキャンペーンでコラボするという形。
オフラインイベントを店舗で開催して、若くて自分の生き方を追求している人たちが百貨店を訪れる機会をつくれると良さそうです。
自己投資産業というカテゴリーの可能性
消費という考え方を自己投資という考え方に置き換えることができた時に、消費者とブランドの関わり方は変わるはずです。
ちなみにライザップは自己投資産業と自分たちのことを定義しています。
百貨店は、自分たちの事業の意味を再定義して、マーケティングミックス・大きくはビジネスモデルを組み直していくような発想が求められてくるのではないでしょうか。
西武・そごう以外の百貨店も含めて、2020年以降にどのような変化があるか楽しみです!
2020年は広告表現を掘り下げて、マーケティングトレースする機会も増やしていきたいです!
本日の日報は以上です!
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