花粉の大量飛散が日本経済に及ぼす影響
花粉情報 飛散、2023年は過去10年で最多の恐れ 関東など注意 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
昨夏の猛暑の影響により、今春は花粉が大量飛散する可能性が高まっています。
背景には、昨夏が記録的な猛暑になったことがあります。特に7-9月期の全国平均気温は平年を+1.4℃、前年を+0.9℃上回り、2010年と94年に次ぐ高温となりました。この影響により、今春は花粉が大量に飛散する可能性が高まっており、今春の花粉は、記事の通り過去10年で最多の大量飛散の恐れとされています。また、スギ花粉の飛散量のピークは3月中旬までとされており、大量飛散が懸念されます。このため、花粉が大量飛散すれば、花粉症患者を中心に外出が控えられ、日本経済への悪影響が懸念されます。
実際に、過去のデータから7-9月の平均気温が+1℃上昇すると翌1-3月の家計消費支出が▲0.5%減少する関係があり、花粉の飛散量と春先の個人消費には関係があることが窺えます。
また、過去の経験から、花粉大量飛散の影響として、外食を含む「食料」、レジャー関連を含む「教養娯楽」、外出頻度が増えれば支出されやすくなる「被服及び履物」等を中心に家計の消費支出が減少する一方で、外出頻度が下がれば支出が増えやすくなる「光熱・水道」や、薬やマスク・医療費等を含む「保健医療」、空気清浄機等を含む「家具・家事用品」等の消費支出が増加する関係があります。
なお、過去の経験によれば、花粉の飛散量で業績が左右される代表的な業界としては、製薬関連やドラッグストア関連があります。また、カーテンやメガネ関連のほか、乳酸菌関連食品等も過去の花粉大量飛散時には売上げが大きく伸びています。
そして、昨年夏の平均気温が平年より 1.4℃上昇したことに基づけば、今年1-3月の実質家計消費は平年に比べ▲0.5%×1.4℃=▲0.7%(▲3,033億円)程度押し下げられる可能性があります。そして、産業連関表の付加価値誘発係数に基づけば、同時期の実質GDPは同▲0.2%(▲2,590億円)程度減少する計算になります。同様に前年比への影響を見れば、昨年夏の平均気温が前年より+0.9℃上昇したため、今年1-3月期の実質家計消費は前年比で▲0.5%×0.9℃=▲0.4%(▲2,455億円)、実質GDPが同▲0.1%(▲2,096億円)押し下げられる計算になります。
今春の花粉大量飛散により花粉症患者が増加すれば、悪影響は更に拡大する可能性もあります。今後の動向次第では、日本経済に花粉の大量飛散が思わぬダメージを与える可能性も否定できないことには注意が必要でしょう。