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「自分は何がしたいのか?」がより重要になる時代

今回の日経COMEMOのお題は「環境を整えれば障害はなくなるか?」である。私の答えは、「YES」ーーーそう思う。そもそも、何かしら「参加することの前提条件」が存在するから、そのための何かしら「障害」という概念が存在する。

今のWAmazingで働くためには身体障害は、障害ではない

「参加するための前提条件」があるからこそ「障害」という概念が存在するという話は、非常に概念的な言い方なので、「は?」と思われても仕方がない。なので卑近な例で恐縮だが私が経営する会社、訪日外国人旅行者向けサービスを展開するスタートアップ企業「WAmazing(わめいじんぐ)」を例に考えてみたい。弊社は、インバウンド事業を行っていたため、コロナ禍の直撃を受けた。2020年4月の売上は同1月と比べ98%ダウンという直撃っぷりである。市場消滅ともいえる事態に、従業員の解雇も一瞬考えたが、創業3年半、100人超に育ってきた組織にメスを入れるのはあまりにも忍びなく、そしてまた採用しなおすのも考えるだに億劫だったため、人件費以外のコストを徹底的に削減することにした。結果、オフィスは全面退去となり、フルリモートワークへ移行した。どこにいても、インターネット環境さえあれば仕事はできるし、通勤も必要ない。こうなると、「身体障害」は、WAmazingでは障害とはならない。もしPCでタッチタイピングする手指に障害があっても近年の音声認識技術はかなり高度になっている。言葉を発することができればいい。

目的に照らし障害を取り除く環境が整えば、それはもはや障害ではない

コロナ禍初期、2020年3月、4月ごろ、学校や保育園が一斉休校になったことで、WAmazingで働く多くの父母が普通に働ける状態ではなくなった。子供が常に家にいる状態になり、パートナーも働いている場合は、お互いに時間を融通しながら子供の面倒を交代でみるために、仕事につかえる時間や働き方に制約が生じた。通常であれば、保育園や学校などの環境が整えられていて、親も仕事に集中できる環境が、コロナ禍で崩れ去った。逆を言えば、環境さえ整っていれば、障害は障害ではなくなるのだ。

働き方の柔軟性は多様な障害に対する環境を整えられ多様な人材が活躍する

働き方の柔軟性が増して、多様な障害に対して環境を整えることができれば障害はなくなるはずだ。当社は、コロナ禍で、働く場所を問わなくなってから、日本全国から、その地域に居住したままの正社員採用が増えた。日本全国津々浦々、どこに住んでいてもいいので、採用する側からとってみても、優秀な人材採用の母集団が増え、有難い限りだ。
当社では、もともと外国人社員は多かったが、最近はさらに増えて半数を超えてきた。今では、日本以外に、中国本土、台湾、香港、韓国、アメリカ、韓国、ベトナム、ドイツ出身のメンバーが働いていて、職種も年齢も人種も宗教も性別も多種多様だ。
私が女性であるがゆえに、「社長が女性なので、多くの女性がご活躍ですか?」と聞かれるのだが、実は日々増える社員の男女比を正確に把握していないので、「ええ、たぶん男女比は半々ぐらいはなずです。」と答えるのみだ。当社にとって、性差というのは、あまり環境整備において大きな障害ではない。それよりも、在留ビザが切れる前に社員登用したり、留学生ビザでは週28時間しか働けないので労働時間ケアを徹底するなどのほうが気を遣う。働き方の柔軟性を高めて、環境を整えれば、多様な人材に活躍してもらうことが可能だ。しかし、一律に障害がなくなるわけではない。例えば、WAmazingの経営という目的においては、私に身体障害があっても、大きな問題にはならないが、知的障害・精神障害は困る。状況理解と適切な判断は、数少ない私の仕事であるし、メンタルタフネスは全社員の中で一番求められるポジションかもしれない。


究極バリアフリー環境ではビジョンが一番必要とされる

働くための障害が一切ない究極的なバリアフリーを思い浮かべてみると、逆説的であるが、なぜ、そこにいるのかが真に問われる環境でもある。この仕事をするために、この会社で働くためのバリアが一切ないということは、障壁なく集まり参加できても、すぐに去ることができる。
もし国境というものがないならば、何のために日本で暮らし日本で働いているのか。なぜ日本人でいつづけるのか、を皆考えるだろう。
AIが労働を代替してくれる世の中になったら、働く喜びのために、本当に自分がやりたいことを見つける力が最も必要になるだろう。
障害のない世界で、「なぜ、この仕事をするのか」「自分は何がやりたいのか」「自分は何をやると最も社会に貢献できるのか」などの問いの重要性が高まっていくだろう。


#日経COMEMO #究極のバリアフリーとは

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