日本版DBSの閣議決定と、わいせつ教員は相変わらず3年で復帰可能なままになった現実と、来年のタスク
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日本版DBSの閣議決定と、わいせつ教員は相変わらず3年で復帰可能なままになった現実と、来年のタスク

2020年の夏、私たち認定NPO法人フローレンスは、子ども達を性犯罪から守るために声をあげました。

ベビーシッターマッチングサービス大手企業の登録シッターが、派遣先の子どもに対する強制わいせつ罪で立て続けに逮捕された事件がきっかけでした。

指導的立場を利用して、子ども達からの純粋な信頼につけ込むこんな卑劣な行為が、なぜまかり通ってしまうのか? 調べてみると、先進各国では普通に整備されている、子ども達を性犯罪から守る仕組みが、この国にないことがわかったんです。

例えば、英国では保育教育現場に就労する際は、DBS(Disclosure and Barring Service)という政府機関から無犯罪証明書を発行してもらい、それを教育水準監査局(OFSTED = Office for Standards in Education )に提出することが義務付けられています。だから、性犯罪など重い前科がある人は、そもそも保育教育現場で働くことができません。

日本もこの事例にならい、保育教育現場に就労する際には性犯罪の前科がないことを証明する無犯罪証明書の提出を義務化すべきではないか、これを日本版DBSとして、政府に訴えかけてきました。以来、大きな反響をいただき、多くのメディアで取り上げていただきました。


それから半年間、まさか、年の瀬にこんなニュースを目にすることができるとは! 本日12月25日、第5次男女共同参画基本計画が、閣議決定されたのです。この中に、日本版DBSの概念がしっかり盛り込まれています。

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教育・保育施設等や子供が活躍する場(放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブ等)において、子供に対するわいせつ行為が行われないよう、法令等に基づく現行の枠組みとの関係を整理し、海外の法的枠組も参考にしつつ、そこで働く際に性犯罪歴がないことの証明書を求めることを検討するなど、防止のために必要な環境整備を図る。


この文面を見たときは、鳥肌がたちました。本件を応援してくださっていた皆さまには、進捗がある度にSNS等で「私たちの声が、政治に届きました」と発信してきました。でも、本日付で、私たちの声は政府の最高意思決定者に届いたんです。

「閣議決定」とは、政府の方針の中でもっとも重いもの。行政は、この意思決定に縛られます。もちろん、上記の文面をみれば明らかな通り、これで日本版DBSの実現が決まったわけではありません。「検討することが決まった」という感じです。しかし、これは本当に大きな一歩です。何せ、政府がやるって言ったのだから!

これまでは、あくまで私たちフローレンスや関係各位が市民の立場で政治行政に日本版DBSの実現を働きかけてきました。でもこれからは、政府が旗を振って本制度の実現を考えていくフェーズに切り替わったのです。本件を進める大義名分ゲットォ!

改めて、この男女共同参画の基本計画に日本版DBSを盛り込むことに尽力してくださった関係各位に、心からお礼を申し上げます。

✊ 😆 

一方で、まさかの同日にこんなニュースも飛び込んできました。

わいせつ行為(というか、どんな深刻な犯罪であれ)で懲戒免職になった教員が、たったの3年で免許を再取得できるというキテレツな現状を問題視した文部科学省が、その期間を40年に延長する法改正を検討していましたが、それを断念するというのです。

理由は、「個人の権利制限につながるため」だそうです……! 

いや、子どもたちの権利はどこにいった……?


関係者にヒアリングしたところ、具体的な理由としては主に3点

① そもそも、刑法の規定上、どんな深刻な犯罪であれ服役後10年が経過すれば、刑を受けたことがない者として取り扱われる → それを超える期間を犯罪者として記録に残すのは妥当ではない

② 小児性愛を問題にしているが、小児性愛の概念や診断基準が不明確 → 特別扱いして記録に残すのは妥当ではない

③ 教員が懲戒免職にされても、その理由が明記されていない場合が多い → そもそも記録が残せない

それぞれ、言いたいことは山ほどあります。

保育教育現場(子どもと関わる職場)への復帰を制限すればいいだけなのだから、加害者の人権や更生の妨げにはならないでしょ!とか 

小児性わいせつは他の性犯罪と比べて再犯率も再犯者率もぶっちぎりで高い(法務省調査)のだから対策とるべきでしょ!とか

そもそも、わいせつ行為を行った教員を懲戒免職にしておいて、なぜ警察に報告しない!?とか…… (わいせつ行為で懲戒免職になった教員のたったの6%しか起訴されていません)

でも、一番言いたいのは、なんでこんなに「できない理由」を一生懸命考えてるのに、「どうやったらできるか」を考えてくれないの!?

確かに、制度を変えることによって生じるリスクがあるのはわかります。でも、変えないことによって苦しんでいる人たちはどうなる?

日本版DBSを訴えはじめてからずっと、こういう行政の姿勢に頭を抱えてきました。まさか、年の瀬でまで炸裂させてくれるとは

😇

この事例ひとつ取ってもそうですが、日本版DBS実現の道には、本当に多くの課題が横たわっています。深く進めば進むほど、その深刻さを理解させられます。「もう無理なんじゃないか」「もう十分やったんじゃないか」って思うことが何度もありました。

でも、家に帰って娘の屈託のない笑顔をみる度に思うんです。

子どもは、自分ではこの問題を解決することができません。解決できない限り、この笑顔が卑劣な行為で消えていく。じゃあ、誰が解決するのか? それは、私たち大人しかいないのではないかって。

2020年は、失敗も沢山したけど、今回ついに日本版DBSを検討するとする閣議決定がなされました。私たちは、確実に前進しています。来年もきっと色々「えーー!?」ってなる課題が出てくるに違いない。けど、また前進してやります。

結局これをやれるのは、私たち大人だけなのだから。

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認定NPO法人フローレンス代表室長。政府「こども政策の推進に係る有識者会議」委員。著書『パパの家庭進出が ニッポンを変えるのだ!』 ▶︎ http://amzn.to/2QTNtCn 。前職はリクルートHDの新規事業開発室でプロダクトマネージャー。妻と娘と三人暮らし。