長期分散は懐に優しいけど、必ず儲かると盲信しないことが重要かも〜シミュレーションで見えたこと〜
長期積み立て投資に注目が集まっています。下記の記事にある通り、積み立てNISAで設定されている投資信託への資金流入が顕著です。それだけ積み立て投資を行う人が増えているようです。実際、私も自分のポートフォリオには積み立て投資を導入しています。
積み立て投資全盛の昨今、「長期積み立て投資は必ず儲かるんですよね?元本毀損リスクはないんですよね?」「米国S&P500をドルコスト平均法で購入していけば負けなんですよね?」「ドルコスト平均法には、時間分散効果があるんですよね?」などなど、いろんな質問を受けることが増えました。しかし、これ全部、かなりの誤解があるんです。ファイナンス視点で、長期積み立て投資はほったらしでいいわけでもなかれば、絶対安全でもなければ、時間分散という言葉に注意すべき理由を記載します。投資には積み立ても、アクティブに自分で投資をする視点もどちらも重要なことを記載していきます。
時間分散とは何か?
分散投資の中には、投資する資産を分散するだけでなく、時間をずらして投資を行う「時間分散」という言葉が注目されることがあります。しかし、この言葉は、ファイナンス分野の研究者や、プロ投資家からは、「?」と思われることがあります。
もちろん購入時期をずらして投資をするドルコスト平均法は、平均購入コストを下げることも期待できますし、始めやすく続けられやすいとのメリットもあります。しかし、ずらして投資をする「時間分散」へのリスク低減効果には過度に期待するのは禁物だと思います。というのも、「時間分散」には必ずしもリスク低減効果はないからです。投資タイミングが、ズレるという事は、そのタイミングで計算される理論株価も変化しますし、そもそも分散とは言えないからです。例えば、あるT社の株を購入タイミングをずらして投資をしていたとします。しかし、突如、T社には会計不正が発覚しました。T社に期待できる理論株価は、積み立て投資を始めた頃と、不正が発覚した今では、同じ理論株価は期待できるでしょうか?
更には、ドルコスト平均法は、投資資産の平均回帰性を前提にしていますが、これがどの資産にも当てはまるかは、学術界でも答えは出ていません。
長期積み立て投資は、お財布に優しい投資には変わりはないのですが、完全ほったらかしや盲信は禁物のようです。
積み立て投資VS一括投資
最後に、Finatextの斉藤裕輝さんが日経CNBCで紹介してくれた積み立て投資と一括投資によるシミュレーションも紹介しておきます。下記のような条件で斉藤さんがシミュレーションを行いました。
株式の期待リターンを7.0%/年、期待リスクを15.4%/年とする(米国株式を想定)
投資期間は30年間とする。
つみたて投資は投資資産の1/360を360ヶ月かけて投資を行う
一括投資は投資資産の全額を最初に投資する
幾何ブラウン運動による株価のシミュレーションを30年間、10万回行う
10万回のシミュレーションの中で、つみたて投資、一括投資のリターンの平均値、勝率、元本割れの確率などを計算する
結果は、つみたて投資と一括投資のリターンの平均値も勝率は、後者のほうが高く、元本割れの確率ですらつみたて投資が高いという結果になりました。アメリカ株のように平均回帰性の前提が成立していない状態だとこのような状況が起こりやすいのかもしれません。もちろん、これは一つのシミュレーターではありますが、積み立て投資やドルコスト平均法は、とにかくほったらかしで良いわけでなく、脳に汗をかく知的な行動でもあるようです。
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崔真淑(さいますみ)
*画像は、崔真淑著「投資1年目のための経済・政治ニュースが面白いほどわかる本」より抜粋しています。無断転載はおやめくださいね♪
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