自分と向き合うのを避ければ避けるほど自己肯定感は逃げていく
本日、J-WAVE「STEP ONE」という番組にゲスト出演させていただきました。ナビゲーターは、サッシャさんと増井なぎささん。
お話する話題は「世界一不幸なのは日本の40代男性?その背景に迫る」というものです。
東洋経済の連載で書いたこちらの記事に、番組の方が興味を持っていただいて、今回出演させていただくことになりました。
ISSPの国際調査の結果などから、日本の未婚男性の不幸度は世界的にもっとも高いことがわかっています。というより、未婚と既婚で比べると世界のほとんどの国で、未婚の方が不幸度が高いのです。未婚の方が幸福な国は、メキシコと台湾くらいです。
年代別に見ても、40代は男女とも不幸度が高まります。それでも男の方が女より不幸度が高い。
そして、幸福度に密接な関係があるのが自己肯定感。
今回は、なぜ40代未婚男性の自己肯定感が低くなってしまうのか、についていろいろとお話しました。
番組の中でもお話しましたが、「年収が高ければ自己肯定感は高くなるのでは?」と思われがちです。確かに年収があがればあがるほど自己肯定感の高さもあがりますが、それでも既婚と未婚との差は縮まらない。例えば、同じ1000万円以上稼ぐ既婚男性と未婚男性とでは、自己肯定感が10%ほど未婚の方が低くなります。というか、どの年収でもきれいに10%ほど未婚の方が低いのです。
そう出てしまうと、年収よりも未既婚の差の方が自己肯定感に影響があると思いますよね。
未婚と既婚の差とはなんだろうか?というのを突き詰めて深堀りすると、男らしさ規範という視点が出てきます。
男らしさ規範というと、随分と古臭いもののように思えますが、そもそも男というものは、自前で「男らしくある」などと感じられるほど強くない。男が男らしくあると感じられるのは、女性や子どもなど守るべき対象がいて、自分は頼りにされていて…という環境があってこそはじめて得られるものではないかと思います。
つまり、男が「男らしくある」と自己認識させているのは女性の存在があっての話で、決して男がたった一人で辿りつける境地ではないのです。
自己肯定感とはそうした他者との関係性の中で、自分と向き合うことでしか感じられないものではないでしょうか。
今日のお話についてはradikoで一週間だけ聴けます。
ここから先は、時間が足りずラジオではお話できなかった内容について。
多くの人が勘違いしているものに、自己肯定感と自己有能感の混同があります。勉強ができるとか、お金を稼いでいるとか、他人から褒められるとか、達成感や承認感というもので上昇するのは自己有能感であって自己肯定感ではありません。極論を言えば、マイナスであっても肯定できること、が自己肯定感です。
noteで「ハードワークや深夜残業によって得られる自己肯定感は麻薬だ」という言葉を見ましたが、これこそ自己肯定感じゃなく自己有能感なんです。努力や頑張りによって得られるものは自己肯定感とは似て非なるもの。気を付けるべきは頑張ってない自分はダメと思う思考回路の方でしょう。
プラスもマイナスをひっくるめて、今の生活における自分そのものと正確に向き合い、自己を客観的に見る視点から、自分で自分を認めてあげられるという感情こそが自己肯定感なのだと思います。
たとえば、今日の放送を聞いて「40代未婚が自己肯定できてないとかムカつくわ」という人がいます。属性の大きな傾向を話しているのであり、決してあなたのことをディスっているわけじゃないのに、自分が非難されているように感じてしまう人。
よく言えば敏感な人ですが、それこそ自分に自信がなくて、誰もが自分のことを非難しているんじゃないかと無意識にびくびくしている人です。だから、そういう言葉に過敏に反応し、攻撃的になってしまうのです。
つまり、客観視できていないということです。
自分の顔が嫌い、自分の声が嫌い、自分のスタイルが嫌い…などという人は、実は自分の顔などをあまり見ていない人です。見てしまうと理想とのギャップに気付かされてしまうから。
理想像を描き、それに向かって邁進することは良い事です。しかし、本来目指すべき目標であるはずの理想像を、「現実の自分はたいしたことない存在だ」とか、「理想に追い付いていない自分はダメなんだ」と自分を卑下するための道具として使うのであれば、それは害悪でしかありません。
自己肯定感がない人というのは、自己肯定力がゼロ以下の人です。マイナスの人も多いです。「どうせ私なんか…」と言いがちです。
いくら「そんなことないよ」とか「素敵だよ」という周りの声があっても、自己肯定感がゼロならいくら掛け算してもゼロのままだし、マイナスの場合なら、そういった声を掛けられれば掛けられるほど自己否定が増してしまいます。
最初から自己肯定感100とかになる必要はないんです。たった1でいいんです。1でさえあれば、周辺の人間関係や環境との掛け算で自己肯定感は自然と上がります。
たった1の自己肯定感とはなんてでしょう?
それは自分とキチンと向き合った上で、良い面も悪い面もひっくるめて「ああ、これが私なんだ」と正確に認知して、そんな自分を自分自身で慈しんであげることです。自分で自分のことを好きになり、愛することです。
それだけでいいんですよ。その1を作るのは、他人ではありません。自分自身でしかその1は作れない。
恋愛パートナーがいる人は自己肯定感が高いというのは相関ですが、それは因果ではありません。恋人や配偶者を作れば自己肯定できるようになるのではなく、あくまでそうした環境は増幅装置でかない。
自己肯定の根元は自分で自分を愛すること。それができれば、逆に言えば、人を愛することもできるようになるし、結果として恋愛も結婚につながるのかもしれないんです。
勿論、既婚者だからって全員が自己肯定感高いわけじゃないし、既婚者でも自分を愛せていないのに(だからこそ依存するために)結婚している人もむいます。配偶者と離別してしまうと孤独死してしまう元既婚男性なんかはその最たるものです。
誰かから愛されることより、自分が自分を慈しむこと。それができれば、結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、そんな状態に関係なく幸せなんだと思います。
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。