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『ネット興亡記』を読んで歴史を振り返る

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

「ネット興亡記」をご存知でしょうか。ちょうど2年前に始まった日経新聞電子版での連載で、当時は新ストーリーが公開される度に話題になっていた記憶があります。

ビジネス書の中でも、有名企業の創業ストーリーや発展の歴史などはポピュラーなジャンルだと思います。ホンダ、ソニー、パナソニックといった日本企業が戦後の混乱の中で掴んだ世界の座。その裏にある人間ドラマに、人は心を動かされるのでしょう。

一方で、すでに1世紀近く前の話であったりもします。歴史としては面白いし参考になる部分も多いのですが、時代背景がかなり変わっているのでその部分は割り引いて読んでいる自分もいます。その意味で「ネット興亡記」は、IT企業の発展が非常に早いペースで進んだこともあり、登場人物はバリバリ現役であり、企業も業界で確固たる地位を築いています。そのストーリーをリアルタイムに共有できるのは、業界史の形としても新しく、また意義深いものだと思います。

わたしは幸運にも、ここに登場する業界史のど真ん中で、10代後半から30代前半を過ごしました。連載でもたびたび「ロン毛の反逆児」だとか、悪巧みを仕掛ける人として掲載されていました。おかげで一時期では検索ワードのおすすめに「村上臣 裏切り者」と出るくらい(苦笑)。著者の杉本記者に会う度に文句を言っていましたが、本書ではさらに取材を進め、また書籍用に書き起こしたとのことで、背景や経緯の精度が増したなという印象です。

当時は、その日その日を生き残り、またモバイルインターネットで世の中を便利にするんだー!ということしか考えていませんでした。正確にいうと、世の中を便利になんて大きなことはほぼ考えておらず、「おれ得」つまり「おれが便利ならば、みんなも便利に違いない」と信じ切っていました(若さゆえの傲慢さですね、、、)。なので、こうやってその当時のことを俯瞰してみるのはむしろ新鮮で、新たな驚きや発見もありました。

本書で一番うれしいのは、我々が師として仰ぎ、兄貴分として尊敬していた「サトカン」さんの存在に日を当ててくれたことです。本人は表に出ないことを信条にしたせいもあり、これまでは業界内の知る人ぞ知る人物でした。文中では彼が志半ばでヤフーを去るときのエピソードが明かされています。あのときにサトカンさんのデスクでPCを挟んで交わした言葉は、いまでも克明に記憶しています。

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KDDIのEZwebの技術プラットフォームとして採用された「Unwired Planet」社(当時)。思えば彼らとの出会いこそが、モバイルインターネットに深く傾倒するきっかけでした。まだベンチャーで小さなオフィスしかなく、一緒にワークショップをして技術を学んだのを思い出します。ガラケーを知るWeb開発者の方はUserAgentにある「KDDI-XXX UP.Browser/6.2.x.x」という文字列を覚えていらっしゃるかと思います。このブラウザが、Unwired Planet社が開発したものでした(略してUP)。その後、紆余曲折がありPhone.comとかいろんな社名に変わってしまいましたが、このUPという社名はすごく好きでした。

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印刷した書類のヘッダーにより、1998年5月14日であることがわかります。アメリカのAT&Tの端末で、テストページを動かしているところです。日本でiモードがスタートするのが、翌年2月。IDOとDDIのEZwebは、4月にサービスインします。見た目的にはすごく地味だと思いますが、このときの自身の興奮は凄まじいものがあり、結果ヤフーを退任する2017年までずっと追っかけ続けることになりました。

普段は先のことしか考えていないのでなかなか過去を振り返ることはないのですが、ちょっとセンチメンタルな週末ということでご容赦ください。明日からはまた、40代をかけて成し遂げると決めた、日本の労働市場をフェアにする活動に邁進したいと思います!

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※ 写真はすべて筆者撮影

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