【決定版】 2023年 エンタメスタートアップ
アニメ・漫画などのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップ、株式会社MintoのCEOの水野です。
気がつけば、2023年も終わり… ということで、水野が2023年に気になった日本の「エンタメ×テクノロジー」「エンタメ×スタートアップ」の動向をまとめました。実に1万字超のまとめになったので、気になるトピックだけ読んで頂ければ…!と思いつつ、全て読めば、エンタメビジネスの新しい潮流が掴めるので、年末のお時間ある時に、ぜひごゆっくりと。
① VTuber & VLiver
キズナアイがYouTube「A.I Channel」を開設してから早7年(リスペクト)。2022年6月のANYCOLORの上場に続いて、2023年3月にHololiveのカバーが上場し、VTuberがエンタメビジネスとして広く認められた年になりました。
上場後、ANYCOLOR、カバー、共に順調に業績が推移しており、YouTubeの活動だけでなく国内外のリアルイベントなどでもファン層が拡大しています、もう完全に一大市場です。
一方で、中堅のVTuber事務所の、M&A、撤退等の再編も増加しています。Brave groupは、既に多くのVTuber事務所のM&Aを実行していますが、2023年6月には、国内外におけるM&Aやアライアンス、海外展開等を目的として、19億円の資金調達を発表し、12月には追加の資金調達を発表。累計で58億円の資金調達を実施しており、今後もVTuber事務所再編の中心になりそうです。
2023年4月には、MBSイノベーションドライブ(TV局 MBSのグループ)がVTuber事務所 .LIVEを運営するアップランドの子会社化を発表。『電脳少女シロ』などVTuber初期から人気のバーチャルタレントを擁しています。
また、2023年11月には、2017年に設立された古参のVTuber事務所の岩本町芸能社の廃業・倒産と、所属しているVRアイドルグループ『えのぐ』のメンバーなどの独立が発表されました。
VTuber自身での事務所立ち上げは、今後の流れになっていきそうです。2023年に4月にVTuber『甘狼このみ』が設立したミリプロは、所属2名の新しいVTuber事務所ですが、甘狼このみは、2022年末にデビューして約1年でYouTubeチャンネル登録者数が50万人(12/20現在)まで伸びています。
その他、ななしいんく、Re:AcTなどのVTuber事務所の2024年動向にも注目しています。
VLiverのエンタメビジネス経済圏も拡大しています。GREEグループのアプリ『REALITY』やDeNAグループの『IRIAM』などのライブ配信アプリは、スマホひとつで、手軽にバーチャルタレント活動が始められるのが利点で、VLiverやVTuber市場の裾野を広げる役割をしているとも言えると思います。
ライブ配信アプリプラットフォームの「ポコチャ」や「17LIVE」の市場が広がるとライバー事務所が増えるのと同様に、VLiverのライブ配信アプリ『REALITY』『IRIAM』の人気が広がるのに比例して、VLiver事務所も増加しています。
また、VTuberで括るべきではないとは思いますが、VTuberが脚光を浴びる前から匿名のエンタメアイドルユニットとしてYouTubeやツイキャスを活用して絶大な人気を誇り続けている『すとぷり』も触れておきます。2023年はアリーナツアーで44公演・35万人を動員し、更に2023年の紅白出場が決定するなど、グループとしてその勢いは増すばかりです。
加えて注目すべき点としては、未上場オーナー会社の利点を活かし、株式会社STPRとして、今までに得た収益を、出資者として資本業務提携に投じている点。2023年春から夏にかけて、上場会社のモイ社(ツイキャスの運営)やAppbank社との資本業務提携を発表し、存在感を示しています。また、リリースでの発表はありませんが、UUUM社の株式も一時大量保有していました。2024年も、すとぷり、STPRの動きには注目ですね。
② YouTube/TikTok アニメ
TikTokの縦型動画フォーマットが、YouTubeでも Shortsとして一般的になり、縦型・横型の動画フォーマットをうまく活用しながらユーザーリーチできているチャンネルやコンテンツが伸びています。
YouTubeアニメでは、テイコウペンギンや混血のカレコレ等でジャンルを牽引するPlottが、講談社との協業で提供しているミステリーコンテンツ『ハンドレッドノート』のクロスメディア展開や、新しいアニメ潮流『私立パラの丸高校』の集英社Webコミック連載など、新しい試みを発表しています。
YouTubeアニメ潮流としては、漫画動画以外にも、レトロタッチなエモいイラスト/脱力系の会話を中心にしたアニメも増えています。ジャンルの先駆けでもある、YouTube144万登録(12/2時点)の『マリマリマリー』は、2023年も順調に数字を伸ばした印象です。
『マリマリマリー』は、放送作家の深見シンジさん、さかもと良介さん、イラストレーターのMORISAKI SHINYAさんが立ち上げ、現在は、漫画動画の代表的なチャンネル『ヒューマンバグ大学』を運営している映像制作のケイコンテンツにて運営しています。アパレルやグッズなどポップアップストア展開まで広がっているのが興味深いですね。
動画発でのキャラクター・IP展開では、TikTokでフォロワー数660万を超えた『あさみみちゃん』。キャラクター事業を展開するadavitoが運営しており、国内外で多くの反響を得ています。2024年は、更にあさみみちゃんのグッズ展開・海外展開を広げていくのか?それとも他のキャラクターやトレンドを更に、生み出していくのか? 時代感を捉える稀有なプロデュース力をどう活かすのかに注目です。
③ YouTube/Tiktok ショートドラマ
TikTokやYouTubeの動画コンテンツでは、アニメだけでなくショートドラマも次の潮流として注目を集めてきています。
ショートドラマ・クリエイター集団『ごっこ倶楽部』は、YouTubeやTiktok向けのショートドラマ制作では国内で先陣を切っています。運営会社のGOKKOは2022年11月にVCや事業会社から資金調達しており、2023年にはTikTokのフォローワー数が100万人を超えました。ショートドラマのジャンルが徐々に世の中に浸透していく流れを感じます。
広告と芸能のハイブリッドエージェンシーのFOR YOUも、2023年9月に縦型ショートムービースタジオFYSSを発足を発表しており、すでにTikTokでショートドラマを配信しています。タレントやインフルエンサーをマネジメントする会社がショートドラマへ参入する流れは、今後続くかもしれません。
また、YouTube/TikTokなどの大手動画プラットフォームではなく、新たに有料課金型のショートドラマ・プラットフォームを運営するスタートアップも生まれています。
emoleが運営する『BUMP』は、ショートドラマ視聴プラットフォーム。ショートドラマコンテンツを1話毎の課金型の有料課金/待てば無料(広告モデル)形式で、提供しています。2022年12月にアプリリリース後、主にZ世代ユーザーをターゲットにしながら急速にユーザー数を増やしており、2023年9月には資金調達も実施しています。
ピッコマの電子書籍販売のビジネスモデルが、もしショートドラマでも成立するようになれば、新たな有料コンテンツ市場が生まれる可能性があり、期待が集まっています。
④ Webtoon
昨年も取り上げた縦型漫画のWebtoonは、引き続き市場が拡大し、国内では既に600億円程度の市場規模になっています。
Webtoonは韓国で生まれたフォーマットなので、プラットフォーム、制作(スタジオ)のいずれの企業も日本より韓国の方が先に進んでいます。
2023年の7月には、韓国のY LABが、Webtoonの制作を主体とした会社として初めて韓国の新興株式市場KOSDAQ(コスダック)に上場しました。公開されている資料によると、会社売上で約40億円程度、webtoon事業売上で15億円程度、映像制作で22億円程度、時価総額は130億円程度となっています。
売上の内訳は、今後IPOを目指していく日本のWebtoonスタートアップにとっても興味深い資料で、Webtoonと映像をハイブリッドで制作するスタジオが増えるのかもしれません。(原作としてのWebtoonを映像化するのは相性が良い)
翻って日本のWebtoonスタジオも2023年は、ピッコマやLINE漫画で総合1位になるヒット作が何本も生まれました。『神血の救世主』『夫を社会的に抹殺する5つの方法』『傷だらけ聖女より報復をこめて』『小悪魔教師サイコ』『おデブ悪女』などなど。
日本のWebtoon市場環境は、混沌としており、M&Aや資本業務提携による新しい展開も既にいくつか出てきています。
面白い動きとしては、前述もしたWebtoon+ドラマ展開です。日本でも既に事例が出てきており『サレタガワのブルー』『サブスク不倫』はMBSにて地上波ドラマ化、ソラジマ社のWebtoon原作はBUMPでショートドラマ化されています。
弊社(Minto)も2023年は複数の作品でピッコマ総合1位の実績を獲得することができました。2023年のwebtoon業界トピックのまとめについては、弊社のWebtoon担当取締役の中川が記事を書いているので、こちらもぜひご覧ください。
⑤ AI
OpenAI社のChatGPT、クリエイティブ領域では、MidjourneyやStable Deffusion、DALL-E 2などを活用して、世界中で、日々革新的な事件が起きています。
日本独自のAI活用=AI+VTuberの軸で事業を広げているのは、Pictoriaです。生成AIブームの前からAI軸で事業を展開をしており、時代が追いついた感があります。
そもそもVTuberは、VRデバイスとYouTuberを日本式魔改造で組み合わせて生まれた奇跡的なジャンルだと思いますが、そこに更にAI(言語モデル、音声etc)の要素を加えて魔改造したのがAIVTuberのジャンルかなと。
VTuberのようにキャラクターを動かす仕組みを整え、YouTubeのコメント欄でデータを扱えるようにし、ChatGPTなど言語モデルと連携し(教育し)、音声もAIで出せるようにして、組み合わせる。それによって生まれたAIVTuberが、紡ネン。百聞は一見にしかずなので、こちらの動画をどうぞ。
HP社による紡ネンのスポンサー契約締結も話題になりましたね。
時代が追いついたかもしれない会社とプロダクトで言えば、Gateboxも。
『Gatebox』は、2016年に発表されたキャラクター召喚装置(ハードウェア)ですが、当時はまだAIキャラクターに必要な技術が追い付いていませんでした。それが、ChatGPTの頭脳に変わった瞬間、本当に人=逢妻ヒカリちゃんとコミニュケーションするかのようにスムーズ&無限にやりとりできるようになったという、衝撃。
その後、実施されたクラウドファンディングでは、目標の500万円を大幅に超える5000万円を調達。2024年はGateboxの進化か、他のサービスやプロダクトを作るのか、資金面やチームの舵取りに注目が集まっています。
AIタレントという文脈では、伊藤園のCMにAIタレント(モデル)が使われたことが話題になりました。AIタレントはいくつかのスタートアップが取り組んでいますが、2023年10月にはParadigm AIが資金調達と第一弾第1弾AIアイドルユニット『aideal』を発表、2023年11月には、ハイボールがAIタレント「レモン」のAI広報就任を発表しています。
AIキャラクターではなく実在のタレントさんとの擬似コミュニケーションという文脈だと、Spiral AIは、タレントの真島なおみさんと会話ができるAIコミュニケーションサービス『Naomi.AI』をリリースしました。
もちろん、AI キャラクター、AIタレント以外にもさまざまなエンタメ利用のR&Dが進み、スタートアップが生まれています。
生成AIに特化した東京大学・松尾研発スタートアップのneoAIは、自社サービスとしてオリジナルアイコン作成サービス、ペット用似顔絵サービスなどをローンチ。
AI Hubは、生成AI技術を駆使したwebtoon制作開始をアナウンス。
生成AIによる映像や漫画・アニメ制作工程の効率化を得意とするAIスタートアップは世界中で生まれています。日本でもそのようなアプローチのスタートアップはもっと生まれてくるのではないでしょうか?
⑥ メタバース / VR
日本発のメタバースプラットフォームの先駆け的存在のクラスターは2023年5月に52億円の大型の資金調達を実施しました。クラスターは、この数年で一般ユーザーの利用だけでなく、バーチャルイベントや法人利用でも売上を伸ばしていた印象ですが、教育分野への進出、海外展開などを実施するために資金調達をし、短期的なIPOに頼らずとも、腰を据えて事業に取り組める状態なのかなと思います。
メタバース/VR領域は、国内での独立系メタバースプラットフォームの立ち上げ自体は減り、メタバース空間を活用した制作やイベント(バーチャル+リアルのミックス)実施の需要へシフトしている印象です。2023年6月に発表されたActiv8とSynamonの経営統合もそうした流れの一つかと思います(経営統合後10月には資金調達も)。単なるメタバース制作だけでなく、IPを活用したメタバース/VR/ARエンターテイメントへの発展へ期待ですね。
また、FortniteやRoblox等の海外のゲームプラットフォームが、もはやメタバースプラットフォームと認識されるようになり、関連した制作が増えた年でもありました。(これらのプラットフォームのクリエイター向けの収益還元やCGM的な進化がめざましかったとも言えます)
フォートナイトに特化したメタバースゲームメーカーNEIGHBORは、2023年5月と11月に資金調達を発表。2023年5月には、映画『すずめの戸締まり』のメタバースをフォートナイトに制作・公開するなど実績を積んでいます。
Roblox向けも、ロブラボなど制作を請け負うスタジオが増えていますね。Fortnite向けもRoblox向けも制作は、めちゃめちゃ忙しそうです。
VRゲーム領域は、引き続き日本からは、MyDearestが独自の道を切り開いています。2023年11月に11.6億円の資金調達を実施しており、『東京クロノス』や『ALTDEUS: Beyond Chronos』『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』などのオリジナルゲーム開発&グローバル展開に加えて、VR専用の3vs3対戦アクション『Brazen Blaze』や、新たにVRゲーム専門パブリッシャー事業も開始するとのこと。
日米でゲーム開発を行っているThirdverseは、2023年5月にVRゲーム事業と、Web3事業で分社化してThirdverseはVRゲーム会社として存続し、新たに11月に12億円の資金調達を実施しています。
⑦ Web3
2023年、Web3領域の事業環境は厳しい1年でした。ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産の相場が軒並み下落し、連鎖してその他のトークンや、NFTの価値が下がっていました。その中でも2022年から仕込んでいたブロックチェーンゲーム&トークンのプロジェクトが、2023年にはいくつか立ち上がってきました。ソーシャルゲームで名を馳せた企業及びチームが手がけているプロジェクトが多かった印象です。
2023年1月には、株式会社Thirdverse(会社分割後Mint Townへ社名変更)とBLOCKSMITH&Co.の共同事業としてブロックチェーンゲーム『キャプテン翼-RIVALS-』がリリース。
エイチームが手がけたブロックチェーンゲーム『Crypt Busters』は、2023年8月にローンチ。トークンは『My Crypto Heroes』の開発/運営メンバーが、トークンに関する各種ソリューションを提供するBOBGとの協業。
ドリコムが手がけたブロックチェーゲーム『Eternal Crypt - Wizardry BC - 』は「Wizardry」の世界観を踏襲しつつ、シンプルで手軽に遊べるクリッカーゲームで、2023年10月に先行版のリリース。リリース前のコインチェックの第一号INO(Initial NFT Offering)案件としても話題になりました。
大手ゲーム会社だと、スクウェア・エニックスはWeb3参入が早く、先行して得たWeb3/NFTのノウハウを次のステップへと進めています。NFTデジタルシール『資産性ミリオンアーサー』に続き、2023年には、NFTコレクティブアートとゲームユーティリティーを融合させた『SYMBIOGENESIS(シンビオジェネシス)』を発表し、初期のNFTオークションを実施しています。
大手通信会社のWeb3への進出も、2023年は水面化で進捗していました。KDDIは2023年3月にメタバース・Web3サービス正式に『αU』ブランドで始動。NTTドコモは、Web3事業を推進する子会社として、NTT Digitalを設立。Web3 Walletは「scramberry」という呼称で、パブリックベータは11月から、来年2月には、V1.0.0のフルバージョンをローンチ予定です。両社ともにWeb3領域のスタートアップとの提携を積極的に行っており、2024年にはプロダクトや事業が立ち上がってきそうです。
スタートアップとしては、トークノミクスに全張りしているナナメウエが、2023年11月に「YAY ホワイトペーパー」を発表。趣味に合わせた「好き」でつながるワールドバーチャルワールドYay!のサービスの意義や、サービス内外に構築するトークン経済圏についての詳細を公開しています。
Minto(弊社)からは、2023年は、海外のWeb3メタバースプラットフォーム『The Sandbox』上で、日本の著名IP『北斗の拳』『東映アニメーション』のメタバース事業を発表させていただきました。
2023年は厳しい市場環境だったWeb3領域ですが、2024年に向けて暗号資産の相場が上昇しています。Web3エンタメの事業環境も再び明るくなることが期待されますね。あ、あとベリロンはナイジェリアで爆発するのか。
⑧ リアルへの拡張
ここまでピックアップしてきたエンタメスタートアップ&プロジェクトは、ネットビジネスがメインでした。とはいえ、エンタメといえばリアル展開も欠かせません。ここからは、ECサイトや、リアル店舗、映画館、イベント関連の新しい動きについてもピックアップしておきます。
アニメイトなど老舗のアニメオタク向け企業がひしめくなか、新興勢力としてアニメ向けのEC・グッズ領域で、大きく事業を伸びているのが、2015年設立のarma bianca。独自のデザインブランドによるアニメグッズを多数制作して自社ECで販売をしている他、多くのポップアップストアの実施、アニメ製作委員会などへも参画しています。
キャラアートも、エンタメスタートアップですが、こちらもグッズがメイン事業です。ただし、従来のキャラクターグッズとは異なり、インテリアとして使える複製原画などのアートを主軸としており『大ベルセルク展』等は大きな話題になりました。
2011年にFacebook ページで日本のアニメや漫画など日本のポップカルチャーを英語で配信するメディアから始まったTokyo Otaku Modeは、越境ECサイトでの海外ファン向けグッズ販売で事業を拡大していましたが、2023年11月に小学館による買収が発表されました。コロナ禍で一時的に止まった世界物流は、すでに復活しています。今後の動きが楽しみですね。ひとまず、お疲れ様でした。
映画好きな人ならほぼ全員知っている映画レビューアプリのFilmarksを運営するつみきが、新たに進めている映画リバイバル上映の事業は、プラットフォームに集まるデータとリアルを連動させた新しいアプローチの事業です。
『Filmarks 90’s』というブランドを掲げて、Filmarksユーザーが再び見たい90年代の映画を募り、上位の作品をリバイバル上映(例えば、レオンは上映館が全国で80館)。つまり、データを元にした映画配給事業です。
コロナが明けて、テーマパーク等への集客も回復してきました。次世代型テーマパークのリトルプラネットは、AR技術などの「テクノロジー」と体験型の「遊び」を組み合わせたエンタメを提供しています。お台場のダイバシティー東京プラザや全国のイオンモールなど既に全国10箇所以上に展開し、コロナ禍明けで拡大が加速していますね。
AR技術などの「テクノロジー」と「スポーツ」を組み合わせたエンタメを提供するのはmeleap。同社が生み出したARスポーツ「HADO」は、頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着して、仲間と連携しながら最大3対3で対戦を楽しみます。既に、国内だけでなく、世界39カ国109店舗に展開されているのが本当にすごい。2022年11月には、世界展開国の一つである中国のQC Investment等から資金調達もしています。
⑨ グローバル / 総括
日本のエンタメスタートアップの伸び代であり課題でもあるのが、グローバル展開です。最後に、グローバル志向の強い会社をまとめます。
VTuber領域では、にじさんじやホロライブなど既に海外のファン向けに事業を展開している会社はありますが、本格的にグローバルを志向している日本の会社はまだまだ少ないです。そんな中、IZUMO運営のAnotherBall社はシードラウンドで19億円を調達し海外展開を進めています。VTuberなのか、AIなのか、Web3なのかはベールに包まれている部分はありますが、楽しみですね。
前述した、VRゲームの2社(MyDearest、Thirdverse)もグローバル展開に勝ち筋を見出していると思います。ゲームはグローバル・ヒットした時の規模感が計り知れないので、ホームランを狙う姿勢にリスペクトです。
同じく前述した、HADOのmeleapや、リトルプラネットのリトプラは国内で得た企画・制作ノウハウを知財化し、海外にライセンスすることで活路を開いています。
視点を少し変えてみます。日本から海外を目指すエンタメスタートアップもあれば、創業者自身が他国で市場を切り開いている例もあります。例えば、2013年創業で、ベトナムでキャラクター版権を展開するTAGGER。現在は、『ドラえもん』『ワンピース』『ドラゴンボール』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』などを扱っています。
日本だと、グッズ、イベント、映画、広告利用などが各キャラクター毎に権利が分かれて、それぞれに事業者や協力会社がいるのですが、タガー社はベトナムでは、それらを横断的に扱って事業を大きく成長させています。特に2022-23年の映画配給事業は凄まじく『ONE PIECE FILM RED』など、日本のアニメ映画を多数ヒットさせ、ベトナムの配給会社の興行収益ランキングの上位に食い込んでいます。日本では寡占されている領域が、海外ならまだ空いている(但し事業化は熱意と根性が必要)という好例かなと思います。
新興国自体の成長率を背景にして、事業を拡大させるのも、ひとつのグローバル事業戦略です。エンタメではありませんが、食の世界では、同じくベトナムで元サイバーエージェントベンチャーズの益子さんが起業したピザレストランの『Pizza 4P's』は、ベトナムから広がりグローバル32店舗。2023年11月には、日本の麻布ヒルズに逆輸入する形で新店舗がオープンされました。
脱線したので、最後に総括します。
ここまで読んでいただいた方は、既にお分かりかと思いますが、2023年は2010年代から着実に実績を積み上げてきた多くのエンタメスタートアップやプロジェクトにとって飛躍の1年でした。また、コロナが明けて潮目が変わって来た感覚があり、新たなエンタメスタートアップやプロジェクトにとってもVCや事業会社からの支援や受けやすい前向きな環境になったと感じます。
加えて、今年4月の、経団連による政府への提言「Entertainment Contents ♾️ 2023」にもあるように、エンタメ産業自体への社会からの期待も強く感じるようになりました。
ここに取り上げたエンタメスタートアップやプロジェクトは、各々が強みをもち、一部はライバル関係でもありますが、世界へ広げる・エンタメ自体を広げると言う観点では仲間だと思っています。2024年は、ジャンルを超えた横断的な連携をもっと意識していきたいな、と思っています。
ということで、今回は【決定版】2023年エンタメスタートアップというタイトルでコラムを書いてみました。過去記事もぜひチェックしてください。
あと、いいね(ハート)も何卒!
Minto社は、今回のジャンル分けに当てはめるとWebtoon、Web3、メタバース、リアルへの拡張、グローバルなど多くのジャンルで事業を推進しています。共に働く仲間を絶賛募集中ですので、ご興味ある方は、ぜひ下記もご確認ください。