穀物価格高騰が家計に及ぼす影響
確かに、シカゴ市場の大豆・トウモロコシの先物価格は今月に入って前年比でそれぞれ5割、4割以上、小麦先物価格も同1割以上の水準まで上昇しています。
この背景には、まず供給面としてラニーニャ現象に伴う穀物の供給不安や、ロシアやアルゼンチンの穀物輸出制限などがあります。
また需要面では、中国の穀物輸入増やバイオエタノールの需要増が見込まれていることがあります。
そして金融面でも、各国中銀の大規模金融緩和により、巨額マネーが穀物先物市場に流れ込んでいることもあります。
穀物価格が上昇すれば、企業の投入コストが上昇し、その一部が製品やサービス価格に転嫁されるため、消費者物価の上昇を通じて家計の実質購買力の低下をもたらすことになるでしょう。
実際、ドル建ての穀物先物価格を見ると、大豆は1・2月平均で2020年の平均価格はを+4割近くも上回り、トウモロコシも同+2割以上も上回っています。
円建てで比較しても、2020年の平均価格に比べて大豆が+3割以上、トウモロコシで+2割弱、小麦に至っては+1割弱程度の上昇となります。
こうした中、過去の傾向に基づくと、最も影響が早く現れるのがトウモロコシで、円建て先物価格+10%の上昇が12か月程度かけてコア食料品CPIを+0.09%程度押し上げると計算されます。
それに続くのが大豆で、円建て先物価格10%の上昇が15か月程度かけてコア食料品CPIを+0.10%程度押し上げる計算となります。
そして、小麦の円建て先物価格10%上昇の場合には、15か月程度かけてコア食料品CPIを+0.07%程度押し上げると計算されます。
特に日本の小麦輸入は政府によって一元的に行われ、政府が決めた売り渡し価格で国内メーカーに売り渡されます。
また、売り渡し価格の改定は4月と10月に行われ、価格改定月の2ヶ月前から遡って6ヶ月間の買い付け価格と諸経費等を勘案して価格が決まります。
このため、2021年4月からの小麦売り渡し価格は1割以上の上昇が見込まれます。
そこから製品価格に転嫁されるため、結果的に食料品価格への波及に1年近くの時差を伴うことになることが推察されます。
そこで、今後ドル・円レートと穀物価格が横ばいで推移した場合の影響を試算すれば、1年程度の時間をかけて、コア食料品CPIを前年比+0.55%程度押し上げることを通じて、二人以上世帯の家計支出を月337円(年換算4045円)程度押し上げると試算されます。
足元までの穀物高は来年にかけてじわじわ家計の購買力を圧迫することになりそうです。