見出し画像

お店につくネガティブコメントを裁判する機能が中国デリバリーアプリの美団で誕生。これでクソコメ撃退できるか


最近、中国のデリバリープラットフォーム大手のサービスで面白い動きを見つけました。ぜひみんなに共有しようと思います。

美団(メイトゥアン)というデリバリーサービス大手のアプリ(Uberイーツを発展させてスーパーアプリにしたようなものをイメージください)に、「评审员」という”サイバー判事”機能が実装されました

中国のデリバリーサービスとその成長の歴史をもっと知りたい方はこちらを↓

デリバリーサービスでサイバー判事とは?と意味不明に感じるかもしれません、ここから詳しく説明していきます。

実装されたのは、美団アプリ内での裁判員制度の機能で「小美评审团」という名前。日本語で言うなら「美ちゃん裁判団」のニュアンスです

美団アプリ内の画面キャプチャより。この機能はメニューからとべます

デリバリー系のサービスでは、サービス利用後にレーティングして口コミを書くことができますよね。そして、デリバリー系サービスに限らず、お店を経営してたり商品を売ったりしているみなさんはすごく理解できると思うのですが、わざと低いレーティングされたり口コミに理不尽なクソコメントを書かれて抗議したいときがありますよね。

美団に新たに実装された「小美评审团」のサイバー判事機能は、ユーザーからの悪い評価やクレームなどを受けた場合、「ネット法廷」に上訴し、「審査員」を招いてその評価が公平であるかどうかを決定し、悪い評価を表示するかどうかを決めることができるというものです。

ネット民の実際の評価画面より。表態で自分の評価を示すこともできる

お店側はコメントを受けた後に、異議のあるコメントに対してはプラットフォーム側に「非表示」の申し出が可能。そして、その申し出の可否を判定するのは複数のユーザーによる判断というもの。

このような判事制度が登場した理由はシンプル。まず、理不尽コメントに対する店からのクレームの申し出があまりにも多く、全てをプラットフォーム側が判断することになってしまうと仕事の量とコストが膨大にかかること。

また、非表示にされたコメ主のなかには「どうせプラットフォームがお店の味方をしたのだろう」「お金貰ってるだろう」といった先入観がある人も少なくない。「自分の実体験に基づく評価なのに勝手に非表示にされたら納得できない」などの不満も。

そこで生み出されたのがこの仕組み。こうすることで、非はお店にあるか、それともお客にあるのかを一般の皆さんの判断に任せることになり、プラットフォームの(どちらもお客になるから)フェアが保たれる解決案です。

面白いのは、どのユーザーでも条件を満たせば「審査員」となることができ、お店と消費者の間の議論に参加することができます。条件とは、利用登録してから3ヶ月間以上経過、実名認証済み、90日間で美団経由で消費したことがあり、審査基準に関する簡単なテスト(5問中の4問)に合格すればOK。ちょっと面倒ですが、何の制限もなく審査員になれちゃうと別の問題や抜け道ができそうなので、このくらいの塩梅がちょうど良いのかもしれません。ちなみに、参加できる回数にも制限があります。

審査員になるためのテスト画面

実はボクもこのnoteを書くためにテストをクリアして審査員になってみました。

このサイバー判事、ネット民のあいだでけっこう話題になっていて、喜んで参加している人もいます。判決はお店側やレビューを書いた人には死活問題な場合もあるかと思いますが、参加するサイバー判事たちは正義を下す意義と同時にエンタメとして楽しんでいます。

そして面白い事例がたくさんSNSでシェアされています。ここからはいくつかの面白い”裁判”を紹介します。少なくとも人間観察の大好きなボクにとっては、中国皆さんの多様性を観察しながら異なる習慣や価値観を知ることができてとても楽しいです。

まずはこちら↓

(画像:Weiboから)

花を買った消費者が評価に星一個(=非常に悪い)でその理由が「彼女は気に入らなかった」。

こんな理不尽コメントで評価を下げられたらたまったもんじゃない。

(画像:Weiboから)

↑マクドナルドへの「非常に悪い」というクレームのコメントには「2人前頼んだのにお箸が一つもなかった」

(画像:Weiboから)

お店からの異議ありの返事:「マクドナルドではお箸を提供しませんので、お客さんのご希望にそえません」

ほとんどの人は手でハンバーガー食べますが、お箸でハンバーガーを食べたい人は意外といるようです。

他にもあります、どんどんいきます

(画像:百度から)

客:おかずは冷たかった。
店:よだれ鶏は冷菜なんです、お客さま

(画像:百度から)

客:パクチーいらないと書いたのになんで入れたの!
店:お客様、あれはネギです

(画像:百度から)

客:タピオカ(ふにゃふにゃのやつ)2つ注文したけど、なんでコーラーにタピオカ入れたの、呆れたわ
店:ご注文は食べ物とコーラーとタピオカのトッピング。飲みものはコーラーだけでした。もしコーラーに入れなかったら、ポテトや手羽先へのトッピングにすれば良かったんですか?

(画像:百度から)

客:不満です。ケーキを切るものがなかった。高いしプレゼントなのに
店:お兄さん、飲み過ぎじゃないですか。写真にはケーキを切るやつ写ってます。足で踏まれてますが

(画像:百度から)

客:頼んだ野菜が茹でられてなかったんだけど
店:勘弁して、こちらは新鮮野菜市場で料理店ではないんです。

(画像:百度から)

客が購入したのは消火器
客:星は2つ。美味しくなかった。(ちなみにスーパーのデリバリーでは消火器も買えるようです。買ったことないけど)
店:いやいや、もはや笑っちゃいましたよ。何か問題ありましたらきちんと連絡してください。対応しますから。

(画像:百度から)

デリバリーだけかと思いきや、ホテルへのクレームにもサイバー判事が適用されていた例が。
客:サービスも環境も良かったが、妊娠しちゃった。子供望んでないから評価下げとくわ。

想像を超えた理不尽コメントの数々が出てきました笑。これらのように、いわゆるクレーマーや常識のなさそうな客によるもので白黒はっきりできるものが多いのですが、なかには広い中国の異なる習慣の違いによるものもあり、判断しづらいものも

(画像:Zhihuから)

客:水餃子を注文したのに、来たのは水餃子なの?蒸し餃子なの?
店:うちの水餃子は茹でたもので、スープのあるものではないですよ。商品写真にもあるように、スープがないですよ。

裁判員コメントでは、
「この人、いままで水餃子を食べたことないの、どの家の水餃子にスープがあるのよ」
「スープ付きだと、すぐぐちゃぐちゃになるから食べたければ家で作る方がおすすめだよ」
「もしかして北と南の地域文化差異による問題ですか」
「なに言ってるの。南の方の水餃子にはスープありますよ。スープのないのは蒸し餃子です」
「たしかに南の方の水餃子はスープがありますね。店は商品紹介をもう少し詳しく書くほうがいいですよ。それで悪評回避できるから」
と、南北の文化の違いによる議論に発展していました。

ちなみに正義や面白さや共感以外に、サイバー判事へ参加するとプラットフォームからプレゼントをもらえます。

実際にもらったクーポンの数々

ボクが2月から裁判員になって、合計27回の裁判に参加しました。そして(ほぼ使うことのないジャンルの)クーポン合計14枚をもらいました。金額はまあまあないよりマシの感じで、いつも利用するサービスであれば喜ぶ人もいるかもです。

↑他にもデジタルバッチももらえました。いつ使えば良いのかなこれ


年間活躍していると評価された判事にはグッズのプレゼントがあるようです。評価基準はよくわかりませんが、ボクは年間活躍はさすがに無理かもw

といった感じです。デリバリーサービスが日本とは比較にならないほど影響力をもつ中国。そして、誰もがネットでの評価を見てお店を判断する時代に、悪い評価は多くの事業者にとって想像以上の影響がありますよね。

この機能を解説している中国の記事で指摘されていましたが、飲食業界では1人の不満足な顧客が17人の来店意欲に影響を与える「1=17」という数式が統計によって示されているようですね。

掲載されていたインタビューでも、ある事業者は「店舗が1〜2つの悪い評価を受けると実際の注文数に1割から2割の影響がある。特に小規模な店舗にとって影響が大きい」と返事をしていました。

あと、面白かったのは「このサービスを見てみんなまだまだ正義感があると見直せて安心した」いう意見。「普段、社会ニュースを見たり、炎上コメントが高評価されるのを見て、世の中悪い人ばかりだと感じていたが、”サイバー判事”たちが善悪を明確に判断する姿を見て少し和らいだ」とのこと。これは個人的にもわかる気がします。

日本でも口コミ対応に苦戦してる人々もいるようですね。この機能、もし日本のグルメ系サービスなどで導入されたら面白く、幸せになる人が増えるんじゃないかなと思い紹介しました(もう既にみんな導入してたらすいません、そっとコメントで教えてください)。

(参考資料)


よろしければサポートをお願いします。Twitterも良かったらどうぞ! https://twitter.com/bijingbball