「この一年、何も進まなかったなあ..」と思ってしまったとき
古くからの友人の言葉。「年の瀬はいつも焦るなあ。この一年も、大して何もできなかった。このまま、何者にもなれずに終わるのかなって」。そのように思う人は、少なくないように見えます。年を重ねるにつれ、これからの人生に不安と焦りを抱いてしまう、というような。
年の瀬になると、この一年を振り返ります。人によっては、「あっという間に終わったなあ」「挑戦はしてみたけど、思うような成果にはならなかったなあ」と落ち込んでしまう時期でもあるかもしれません。
一方、SNSやメディアでは、いつも輝いているように見える人がたくさんいます。華やかな実績やキラキラした写真を目にすると、「自分はダメだ」「うらやましい」という気持ちが頭をよぎってしまうこと、ありますよね。
私も以前は、成功事例や華々しい成果にばかり目を奪われて、「自分もあんなふうに活躍できればいいのに..」ともやもやしたり、焦ってしまったりすることがありました。
けれど、そのような「成功者」に少し踏み込んで話を聞いてみると、想像以上に、たくさんの苦労、そして焦りを抱えていることがわかります。
先日、とある経営者の方とお話ししたときも、会う前は「成功しているんだからきっと自信満々なのだろう」と思い込んでいました。ところがふたを開けてみると、日々の資金繰りの不安や人間関係のトラブルで頭を抱えることも多く、「本当は自分がやっていることが正しいのか、毎日不安で仕方ないんですよね」と胸のうちを打ち明けられたのです。
どれだけ表向きに華やかな場面を見せていても、その舞台裏には膨大な苦労が渦巻いていて、成功らしき瞬間はほんのひとときにすぎない。実際に会って話を聞いてみると、そんな方がほとんどです。
考えてみれば、挑戦するからこそ悩みや焦りが生まれるともいえます。まったく新しいことに挑戦しなければ、失敗するリスクも、悩む必要もないでしょう。たとえ低空飛行だとしても、きっとのんびりと毎日を送ることはできます。
でも、そこにワクワクや達成感、心を震わせるような感動がどれほどあるのかを考えると、やはり物足りない。多くの人が不安を抱え、焦りながらもチャレンジを続けるのは、その先にある一瞬の輝きを知っているからだと思うのです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26B4B0W4A221C2000000/
実際、どんなに偉大な業績を残した人も、歴史的な有名人であっても、苦労と幸せのバランスは私たちとそう変わらないはずです。いや、「圧倒的に苦労と焦りに支配された人生」だった人も多いはずです。
大半の時間は試行錯誤と苦戦の連続で、その中でほんの数回だけ “華々しい瞬間” が訪れる。まわりが目にするのは、その光り輝くワンシーンだけ。
それを横目に見て「うらやましいなあ」と思うのは自然なことかもしれませんが、その背景にどれだけ多くの苦難が詰まっているかは、表面的にはわからないものです。
だからこそ、もし今、「何者にもなれないのでは」と焦りや不安を感じていたとしても、そうした気持ちを抱く自分を責めないことが大切だと思います。
誰だって、失敗や遠回りをしたり、深く落ち込んだりしている。でも必死に模索しながらも、前を向こうとするからこそ、また新しいチャンスをつかむ可能性が得られるはずです。
たとえ一年間の結果がどうであれ、次の年もまた自分なりの挑戦を続けてみることが大事だと思うのです。まわりと比べてうらやむ必要などない。それよりも、自分の歩幅や経験を尊重して、「この一年もよくがんばった」と自分を褒めてあげることが大切だと感じます。
もしかすると、今日も明日も、まだ何も結果が見えないかもしれません。でも、地道な努力がきっと未来につながるはず。そう思える人が、最終的には "良い人生" を過ごせることができると思うのです。
つらい。不安だ。焦る... 長い人生、そう感じられる瞬間もまたあるでしょう。しかし、そのような一瞬一瞬こそが実は私たちの人生を豊かに彩ってくれているのだ、そう信じています。