組織の病としての「孤立」
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組織の病としての「孤立」

 このコロナ禍の中で、今まで以上に気をつけなければいけないこと。
 それが「孤立」です。

 私の勤めている会社(日立)では、テクノロジーを使って、この「孤立」を避ける活動を開始しました。「Remote Work Together」という活動で「バーチャルに密」を工夫して作る運動です。

 意外なことですが、この職場における「孤立」の問題は「ハイパフォーマンスの人が集まっている組織はハイパフォーマンスか」という問いと関係しているのです。

 このコールセンタは、ある商材を潜在顧客に電話をかけて売り込む、いわゆるアウトバウンドのコールセンタでした。従業員はパートタイムの社員が多い職場で、マニュアル通り顧客候補に電話をかけ、1時間当たり何件注文が取れたかによって従業員は評価されます。
 このコールセンタのパフォーマンスは何によって決まっているのか、どうすればよい生産性を上げられるのかは、大変重要な課題です。

 我々は、コールセンタで職場の従業員の行動をセンサで収集し、データを解析しました。
 まず、コールセンタ全体の受注率は、日々大きく変動していました。受注率は日毎に2倍以上も変動していました。
 さらに、日毎に働いている人は入れ替わっているので、出勤している従業員が、たまたま能力の高い人が多い時には、受注率が高くなるはずでした。このための個人のパフォーマンスデータ(過去の受注実績)は数値化されていました。
 しかし、驚くべきことに、パフォーマンスが高い人が多い日には、センタ全体の受注率が高いということは全く見られませんでした。
 電話での営業には、性格的な向き不向きがあると思われました。そこで、オペレータの方たちのパーソナリティ(性格)の調査も行いました。しかし、このパーソナリティと受注率との間にも相関はありませんでした。

 受注は、意外なことにがパフォーマンスを決めていました。それは「孤立」でした。

 我々は、多様な組織の客観的な行動データを、センサを使って過去14年に渡り大量に収集し、パフォーマンスや従業員のハピネスとの関係を解析してきました。
 この結果、従業員が幸せで生産性の高い組織には、4つの普遍的な特徴があることが分かったのです。この普遍的な特徴はコールセンタにも、ITの開発組織にも、製造業の設計部隊にも共通に見られたのです。
 4つの特徴の一つが、幸せで生産的な組織では、

  人と人とのつながりの数が均等

だったことです。逆に幸せ度が低く、生産性の低い組織では、特定の人が沢山のつながりを占有し、他の人は人とのつながりが少なかったのです。いわば、つながりをあまり持たない「孤立」した人が多かったのです。
 さらに重要なことは、この孤立した人、その個人のパフォーマンスが低いのではなく、孤立した人が多い日(これは職場が活性化していない日とも捉えられます)には孤立していない人のパフォーマンスも低かったのです。孤立した人がいるような活性度の低い状況では、全員のパフォーマンスが大きく低下することが分かったのです。
 コールセンタのように一見、個人プレーの業務でも、人は無意識のうちに、職場の雰囲気に強い影響を受けていたのです。しかも、それは受注率という数字に明確に
出ていたのです。

 我々は、この解決のために、アプリを開発し適用しました。コールセンタには、オペレータの支援を行ったり、声かけを行うスーパーバイザーがいます。この開発したアプリは、スーパーバイザーに孤立した人をつくらないような、声かけの優先度を示すものでした。
 このアプリを約1年に渡り使用してもらいました。また、全く同じ業務を行っているもう一つのセンタには、このアプリを使わずにそのまま業務を行ってもらい比較しました。その結果、この孤立を防ぐアプリによって、二つのセンタで、受注率は年平均で27%もの差がついたのです。大変大きな業績の差になって表れたのです。
 
 人が孤立しやすい職場(活性度の低い職場)では、従業員の身体運動に計測可能な特徴が表れることが分かっています。我々はこれに「ハピネス関係度」という尺度を作りました(*)。
 さらにテクノロジーを使えば、従業員の孤立を防ぎ、支援が必要な人に優先的にマネジャーが、データに基づき行動を起こすことも可能であることがわかりました。
 
 今や、大量のデータに基づく科学的な方法で、テクノロジーを活用して、幸せで生産的な組織が実現可能になりました。
 今こそ発想を変えるときではないでしょうか。
 企業経営にハピネスマネジメントが必要な時がきたと思います。

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*「ハピネス関係度」はスマートフォンのアプリで計測できるようにしました。さらに、孤立を防ぐ機能も組み込まれています。「Happiness Planet」と呼びます。


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矢野和男(ハピネスプラネットCEO、日立製作所フェロー)
AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をもたらすと考えています。著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』http://amzn.to/1mgfZHF http://bit.ly/Unmhs6