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歯磨き粉の国内市場が拡大!?価格帯の幅を広げることで収益が最大化

歯磨き粉の店頭価格が上がっており、国内市場が拡大しているのをご存じでしょうか。POS(販売時点情報管理)データで分析すると、11月の平均価格は、前年同月比で6%上昇しました。ここで面白い点は、主な商品で値上げは無かったということです。一体なぜこういったことが起こるのでしょうか?

歯磨き粉が高機能商品へのシフト

この背景として、歯磨き粉が「歯周病や口臭の予防」、「歯の美白効果」など付加価値を付けた高機能商品へのシフトが進んでいることが挙げられます。歯磨き粉の価格帯別販売シェアによると、2022年は1~11月は「600円以上」が37%と17年通年と比べて5ポイント上昇。「1000円以上」では17%を占める。一方で「200円未満」は11%と17年比で6ポイント低下しました。

全国のスーパー約470店の販売データを集めた日経POS情報によると、「練り歯磨き」の11月の平均価格は1本357.6円で、前年度同月比より20.7円高く、6か月連続でプラスでした。売れ筋ランキング上位の半数近くが500円を超えました。従来は100円から200円程度の低価格帯を一度に大量買いする客が多かったのですが、現状として歯磨き粉のパーゾナライズ化が進み、歯磨き粉の「歯周病や口臭の予防」や「歯の美白効果」など様々な高機能化が進み、個人の用途に沿った商品が作られたことが、このように高価格帯の商品の売れ行きを伸ばしている要因だと考えられます。

高価格と低価格の使い分けが収益最大化に繋がる?

どんなサービスにも「高くても買う層(支払い意欲が高い)」と、「安くないと買わない層(支払い意欲が低い)」が存在します。一律に値上げを進める場合、前者は購入し続けてくれますが、後者は取りこぼしてしまう可能性があります。そのため、それぞれに対し、「支払い意欲が高い層からは高く取り、支払い意欲が低い層も取り込める」料金体系を作ることが収益最大化に繋がります。実は今回の歯磨き粉のケースでは同じような現象が起こっているのです。

余談ですが、これと同じような戦略を東京ディズニーリゾートが行っています。詳しくはこちらの記事をご覧ください!

東京ディズニーリゾートは大胆な価格戦略をとっており、具体的には、2022年5月に「ディズニープレミアムアクセス」が導入されました。この「ディズニープレミアムアクセス」は利用するとパーク入園後、東京ディズニーリゾートアプリなどから特区帝の施設を時間指定で予約し、短い待ち時間でアトラクションを体験することが可能なシステムとなっています。料金は1施設につき(1回)、1人2000円です。

また東京ディズニーリゾートには、このように単価を上げる戦略もあれば、下げる戦略も存在します。

値下げ戦略の一つで、「東京ディズニーリゾート・キッズサマーファン!キャンペーン」があります。これは、6月27日~8月31日までの期間、子ども(幼児・小学生)の東京ディズニーランド、東京ディズニーシー両方の入園料を通常の半額にするというもので、子供料金の1デーパスポートは通常4700~5600円のところを2350~2800円で提供しました。料金体系を入園料のみに統一するのではなく、このように「ディズニープレミアムアクセス」や「東京ディズニーリゾート・キッズサマーファン!キャンペーン」を導入し、価格を複雑化させる理由は、各顧客のセグメントごとの収益を最大化させることに狙いがあります。

つまり、お金を払ってでも待たずにアトラクションを体験したい支払い意欲が高い顧客には「ディズニープレミアムアクセス」を導入する一方で、子供連れの家族など、一人当たりのチケットにそこまでお金をかけられず、子供のチケット料金が安くなると嬉しい支払い意欲が低い顧客には「東京ディズニーリゾート・キッズサマーファン!キャンペーン」を導入し、それぞれの顧客が望んでいる取り組みを行いました。

このように値上げと値下げを同時に行い、支払い意欲が高い顧客と低い顧客を両方カバーするような価格体系をとることにより、収益を最大化することができるということです。

価格は品質の指標につながる

一般的に、価格と需要量は反比例し、価格が高くなるにつれ需要は減っていくと考えられているのですが、そうでない場合もあります。高い方が売れることもあるということです。それは価格が品質の指標となることがあるからです。要因は大きくわけて3つあり、「経験」「比較しやすさ」「コストプラス心理」が考えられるでしょう。

・経験
消費者が過去に高価格商品で好ましい経験をしていれば、価格が高いほうが安いほうよりも品質の保証になりそうだと思うようになります。
例えば、普段より価格が高い電子レンジを購入したら、普通は2年で壊れてしまうところ4年壊れなかったというような経験により、価格が高いと品質が良いと考え、逆に低価格であることは品質への懸念を抱くように、価格が消費者にとって商品の品質を評価する基準になることがあります。そのため、価格を上げた方が安く販売するときより販売数量が増える可能性があるのです。

・比較のしやすさ
価格が固定されていて、他に交渉の余地のない状況だと価格を使えば、商品を客観的に比較ができます。

・コストプラス心理
多くの顧客にはコストプラスのマインドセットがあり、コストに利益を上乗せして価格が設定されていると考えられることが多いです。例えば飲食店で、商品の価格を見て、作るのにどのくらいのお金がかかっているのか推測する心理です。顧客が価格のみによって商品を評価するタイミングは、初めての商品やほとんど買わない商品を目の前にしている時、代替品の価格が不透明な場合、時間的なプレッシャーがある時などが挙げられます。

このような場合は価格は品質の指標となるケースが多いです。価格が品質の指標となることは、歯磨き粉を例にしても同じことが言えます。高価格でも「歯周病予防」や「歯の美白効果」などの付加価値がついていることから、消費者は安い歯磨き粉よりも品質が高いと考えます。そのことから、高価格でも、高機能な歯磨き粉が欲しい層から売れ行きを伸ばしているのです。

(参考)Confessions of the Pricing Man: How Price Affects Everything


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