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給与収入が伸びない2021年以降の社会構造

コロナ禍では、働き方や資産運用の方法によっても格差がさらに開いている。格差は金融資産だけでなく、健康問題にも及んでいるのがコロナ以降の特徴であり、従来の常識やマニュアルに従うだけの生き方では、安全で幸福な生活を確保することも難しくなってきている。

野村総研の調査によると、日本では純金融資産(貯金、株式、生命保険などの金融資産から負債を引いた金額)の保有高が3000万円未満の世帯は、全体の78%を占めており、1億円以上の純金融資産を持つ富裕層は2.4%に過ぎない。しかし、富裕層は15年前と比べて、127万世帯から221万世帯に増えている。

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保有資産が1億円以上の富裕層と、3000万円未満のマス層では収益構造が大きく異なっている。富裕層は、事業収入と投資益で資産を増やしているのに対して、マス層の収入源は「給与収入」に依存しているのが特徴だ。

しかし、サラリーマンの賃金は過去20年でほとんど伸びていない。これは、国内の景気が悪いためではなく、パート労働者が増えたことにより、一般労働者(正社員)の賃金水準が押し下げられていることが大きな要因と考えられている。企業が支給する賃金の総支給額は増えても、正社員とパート社員を合算した給与所得者の総数も増えているため、一人あたりの取り分は伸びないという構造である。

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さらに、2019年以降に起きた「働き方改革」のムーブメントも、サラリーマンの年収下落に拍車をかける“負の力”になっている。それは総労働時間の推移から裏付けられるもので、時間外労働を減らす企業が増えたことで、近年はジリジリと伸びていた給与相場も、2019年の一人あたり月間給与額は6年ぶりに減少に転じた。

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2020年は、コロナ禍によって在宅勤務の普及率が高まったが、これも通勤手当や残業代のカットにより、年収を下げる要因になっている。リモートワークは、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を向上させるには良い働き方だが、基本給+各種手当で年収を形成してきた人達にとっては、痛手となるのも事実だ。

厚生労働省が7日発表した11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、1人当たりの現金給与総額は27万9095円と前年同月比で2.2%減った。8カ月連続の減少で、新型コロナウイルス禍での賃金下落が鮮明になった。残業代などを示す所定外給与が1万8184円と10.3%減った影響が大きい。(日経新聞2021年1月7日)

「働き方の質」が重視される社会変化の中では、労働時間数をベースとした賃金体系で働き続けるだけでは、年収を伸ばしていくことは難しく、自身の収益構造を見直していく必要がある。具体的には給与収入以外に、複数の収入源を持つことが有効であり、副業のビジネスで得た収入(事業収入)を、株式などで運用した、投資益で資産額を伸ばしていくのが理想的な形といえる。

日本でも、複数の仕事を掛け持ちする「パラレルワーカー」としての働き方は珍しくなくなっているが、1日、1週間単位で働ける時間には制約があり、複数の仕事に費やす時間の使い方についても発想転換をしていく必要がある。

パラレルワークの働き方して最も危険なのは、正社員としての仕事の他に、時間給のアルバイトを加えて、両方の雇用主から拘束される時間を増やしてしまうことである。これでは、労働時間を増やすことでしか、収入を伸ばせる道は無く、疲労が溜まるだけで、貧困から抜け出すことは難しい。

サラリーマンとしての給与は、月々の生活費を得るためのベース収入と捉えて、残りの時間は、他人に拘束されずに自分の裁量で仕事ができる「事業収入」を作り上げていこうとすることが、体力的にも限界がある「労働単価×時間数」の呪縛から逃れて、2021年以降の収入を伸ばしていくための道筋となるだろう。

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