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少子化はおいといて、まずジェンダーギャップ撃滅しようぜ

ある週末のこと。妻のママ友が生まれたばかりの赤ちゃんを連れて、家に遊びに来てくれました。妻とママ友と、お互いに赤ちゃんを抱えて(うちはもうすぐ1歳の娘がいます)リビングで話し込んでいました。私は根がコミュ障なので、台所で食器を洗ったり二人にお茶を出したりと、会話にはがっつり加わらず、二人の会話に耳を傾けていました。

仕事の話になると、ママ友がとても寂しそうに言いました。仕事にフルタイムで復帰できなそうで、それだと今の会社ではキャリアを積むのは難しそうなんだ、と。これまでたくさん頑張ってきたけれど、保育園のお迎えの時間があるしね。夫は色々手伝ってくれるけど、平日は仕事で帰りが遅いから、しょうがないよね。私は、お母さんなんだから。

妻は友人の話に聞き入り、私は黙って食器を洗い続けていました。

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政府はここ数年「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げて、様々な対策を講じてきました。それは「少子化対策」の一環として位置付けられていたようです。しかし、日本の少子化は改善するどころか悪化しています。

「3年間抱っこし放題」を実現する育児休業の拡充とか、3歳からの幼保無償化とか、たくさんやったのに、いったいなぜ!?政治家の中には頭を抱えている方もいらっしゃると思います。

でも、私はその答えを知っています。たくさん聞いてきた、というべきか。それは、さっきの妻とママ友の会話に集約されています。出産育児の負担が、女性に偏り過ぎているのです。キャリアの機会損失が大きすぎるともいえます。つまりは、この国のジェンダーギャップ(男女不平等)が酷すぎる。

世界経済フォーラムは「Global Gender Gap Report 2020」の中で、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数を公表しています。この指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を表します。2020年の日本の総合スコアは0.652、順位は153か国中121位でした。

お隣の中国(106位)はもとより、インド(112位)、アラブ首長国連邦(120位)よりも下の順位です。

このジェンダーギャップ指数と合計特殊出生率(※1)の間には、明確な相関関係があります。男女平等な社会ほど、女性が安心して子どもを産めるのです。(先進国に限った現象です)

※1 : 一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均

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参照元:内閣府資料


つまり、日本社会に深く巣食うジェンダーギャップという問題を撃滅しない限り、いくら「少子化対策」を講じたところで効果を発揮しません。

私たちが考えるべきは「どうしたら子どもが増えるか」ではありません。そんなこと(と、あえていいますが)より「どうしたら女性に対する不当な差別を社会から一掃することができるか」だと思うのです。

それを達成して初めて、私たちは少子化について正面から考えるステージに立てるのではないでしょうか。


ただ、こういう話をすると必ずくる反論があります。「女性の就業率が上がると出生率は下がるでしょ!」というやつです。女性の就業率がジェンダーギャップの全てでないにせよ、それを改善するのは少子化にとっては悪影響である、というのです。

例えば、荒川和久さんがこんな記事を出されていました。

記事中では、アラサー女性の就業率と出生数の強い負の相関が示されています。確かに、女性の就業率が上がるほど出生率は下がっています。

荒川さんがおっしゃっていることは全く事実。反論の余地はありません。ただ、このデータを読み解くにはひとつ留意をする必要があります。それは「今の日本の状況ではそうなる」です。

世界(OECD諸国)に視野を広げてみると、女性の就労と合計特殊出生率の間には、正の相関があることがわかります。女性の社会進出が進むほど、合計特殊出生率は改善しています。

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参照元:内閣府男女共同参画局資料


なお、この相関関係は福祉国家論の巨人、イエスタ・エスピン=アンデルセン教授も指摘しているところです。下記の著作でとてもわかりやすく解説されているので、ご興味がある方はぜひご一読を。

でも、どうしてこんなチグハグなことが起こっているのでしょう。なぜ世界で通用することが、日本では通用しないのか?

それは、ちょっと歴史を遡ってみるとわかります。1970年代では、OECD諸国でも女性の社会進出と合計特殊出生率の間には負の相関がありました(下図の左)。それが、1985年(真ん中)、そして2000年(右)と時を経て、徐々に正の相関になっていったのです。

そしてそれは、ジェンダーギャップ改善の流れと一致しています。

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参照元:内閣府男女共同参画局資料


この事実が意味するところは極めてシンプルです。

女性が男性と同じように社会で働くことを希望した時、社会がそれを拒めば少子化は加速するし、その希望を叶える為に社会のあり方を変えれば少子化は改善します。

日本は、上図左の1970年のOECD諸国と同じ状況なわけです。この状況では、女性の就労が進めば合計特殊出生率が下がるのはあたりまえです。

なお、私は荒川さんの主張と結論には大賛成。少子化と女性活躍は別に議論するべきだし、「30年間も平均給与があがっていない先進国なんて日本だけです。そっちの方がよっぽどおかしい」にも大共感です。

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では、この国のジェンダーギャップを解消するにはどうすればいいのか。私はまず、ターゲットを変えることが必要だと思います。

先に記載した通り、政府は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げていますが、それがもう違うと思う。なぜなら、今変わるべきは女性じゃなくて男性だからです。

女性は社会進出したくてもできないんです。なぜなら、男性が家庭進出しないから。

冒頭の妻とママ友との会話にあった通り、日本人男性は家事育児にほとんどコミットしません。これは、他の先進国と比較して突出しています。

日本の6歳児未満のいる家庭の夫の平均的な家事・育児時間は1日あたりたったの1時間7分です。なお、アメリカは2時間29分、スウェーデンに至っては3時間21分です。日本のパパの3倍…!年間にしたらその差たるやなんと815時間…!

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育休の取得率も、日本人男性はたったの7.48%です。先にあげたスウェーデンではおよそ9割。当然、この日本のパパがやっていない家事育児は、ママが引き受けています。

どう考えても、こんな状況で妻にもっとキャリアを積んでもらおうとするなら、やるべきことは夫がもっと家事育児を頑張ることだと思うのです。それをせずに妻に「もっと頑張って働いて!」と言うのはあまりに酷い。想像力に欠けると思いますし、問題解決の手段として筋が悪すぎます。

つまり、女性の社会進出を実現するには、「男性の家庭進出」が必要不可欠だと思うのです。政府・社会が本来出すべきメッセージは「すべての男性が安心して家事育児できる社会づくり」ではないでしょうか。

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ただ、私もひとりの男性として自覚するところですが、これは男性だけが気合いを入れればどうにかなる問題ではありません。多くの女性がジェンダーギャップで悩んでいるように、私たち男性もまた「男らしくあれ」という社会からの謎のプレッシャーに悩んでいます。

家庭を持って子どもを育てるには、正社員になってバリバリ働いて出世して、お給料をたくさん稼がねばならない、と。家族のため、子どものため、そう思って朝から晩まで歯を食いしばって働いている男たちのなんと多いことか。

なのに、この国ときたら実質賃金はずーっと下がりっぱなしです。働いても働いても、お給料が増えないんです。こんなのは、先進国ではやっぱり日本だけです。貯蓄ゼロの現役世代が、鰻登りに増えています。

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この状況では、男たちが自分の生き方を変えようにもできません。がっつり働き続けなければ、まともに生活することもできない。結婚できない、子どもが持てない。だからもっと働かないと… という負のスパイラルです。これが、ジェンダーギャップが日本で改善しない要因のひとつではないでしょうか。でも、いったいどうすれば…

それは、現役世代の気持ちになって考えればわかります。現役世代が将来のことを考えるときに、お金の心配をしなくてもいいように社会でサポートすることです(というか、してください😇)。

「いつか結婚したい、子どもも欲しい、でも、私の今の経済力じゃ…」そんな不安に寄り添って欲しいのです。

でも日本政府は、私たち現役世代に対する投資をひたすらケチってきました。諸外国と家族関連支出(※2)を比較すると、そのケチり具合がよくわかります。

※2 : 各国が家族手当、出産・育児休業給付、保育・就学前教育、その他の現金・現物給付の ために行った支出を指します

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参照元:大和証券「日本の女性就業率は欧州より低い? 注目すべきは就業率の男女差」


この家族関係支出が増えると、女性の就業率が上がることがわかっています。こうなってようやく、男性も安心して生き方を考え直すことができるのです。そりゃそうだよね。

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参照元:大和証券「日本の女性就業率は欧州より低い? 注目すべきは就業率の男女差」


なお「政府が何から何まで現役世代の面倒をみないといかんのか!」というわけでは全くありません。

女性が出産育児でキャリアを損なわず、機会損失をなくすことができれば、世帯収入も大幅にアップするからです。下記のケースでは2億円以上生涯所得がアップしています。こうなったら、消費も活性化するのではないでしょうか。

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参照元:厚生労働省「第6回21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)」


ジェンダーギャップが解消する時、日本経済くんも30年の長い寝坊からようやく醒めてくれるのではないかと思うのです。

そしてその時には、気がつくと少子化も改善しているのではないでしょうか。なにせ、女性が理想の子ども数を持たない理由のぶっちぎり1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」ですから、その悩みは解決しているはずなのです。

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参照元:国立社会保障・人口問題研究所

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最後に、こんなタイトルで記事を書いといてアレですが、私は少子化は大問題だと思っています。なにせ、今のペースだと2035年にはピーク時の2010年の九州と四国の人口がそっくり消滅するのです。その時の、そしてその先の日本社会がどうなっているのか考えるのも恐ろしい。

私は日本が好きです。この国の文化や歴史、人が大好きで、先人から多くのものを受け取っていると感じています。願わくば、娘やその子どもたちにも、希望ある社会を引継ぎたい。だから、政治家の方々が少子化対策に躍起になるもわかります。

でも、国家ってなんのためにあるのでしょうか。抽象的な問いなので、答えは人の数だけあると思いますが、私なりの答えは「個人の自由と権利を守るため」です。その役割を果たせたなら、次の世代は産まれてきてくれます。多くの人に望まれながら。

人類の歴史の中で、多くの国家がこの役割を果たせず滅びていきました。私は日本に滅びてほしくないです。そのためには、原点に立ち返る必要があると思うんです。


専門家の分析、そして最新のデータをもとに、少子化の原因をさらに掘り下げました。その内容を、著作でまとめています!

全体のテーマは、「パパの家庭進出」です。現代の家族のあり方について、実体験を軸にしつつ、政治、経済、歴史など、様々な視点から考えてみました。


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マーケター / 認定NPO法人フローレンス 代表室。著書『パパの家庭進出が ニッポンを変えるのだ!』 ▶︎ http://amzn.to/2QTNtCn 。前職はリクルートHDの新規事業開発室でプロダクトマネージャー。慶応義塾大学総合政策学部中退。妻と娘と三人暮らし