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高齢者を固定客にする訪問美容サービスの起業モデル

 全国には美容室と理容室を合わせて、約36万件の店舗がある。近年では男性も美容室に行くため、美容室の数は20年前と比べて1.2倍に増加しているが、廃業・倒産率も高いのが特徴である。特に好立地で洒落た店舗を構えて、傍目からは成功しているように見える美容室ほど、経営は厳しさを増している。

美容室が経営不振に陥りやすい要因には、店舗の家賃が高いこと、高額の広告宣伝費を投じて集客していること、多くのスタッフを抱えて人件費の負担が重いこと、さらに美容サービスの客単価も10年前と比べて2割近く下がっていることが挙げられる。

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しかし、髪は自然と伸びていくため、美容室や理容室の需要自体が無くなってしまうことはない。もともと理美容サービスで使う材料や消耗品などの原価率は、売上に対して10%前後と低いため、美容師か理容師の国家資格があり、自宅を店舗としている個人事業の形態であれば、1日に数名の来店客でも経営は成り立つのが、この商売の利点である。

厚生労働省の統計では、個人経営の理美容店は、1日の来店客数が平日は平均10名、土日は15名となっているが、1日の来店が5名以下でも存続している個人店舗は沢山ある。

そうした理美容業の原点に立ち戻りながら、新たな顧客を増やしていくルートとしては、高齢者の介護市場が注目されている。理美容業の法律では、衛生面の問題から、店舗以外での施術サービスは禁止されている。ただし、体が不自由な高齢者については、自分で店に行くことができないため、訪問理美容サービスは特別に認められているのだ。

これまでは、介護施設などへの訪問理美容サービスは、ボランティアとして行われるケースが多かったが、2018年の時点で65歳以上の人口は国民の28.1%(女性は31.0%)、75歳以上は14.2%(女性は16.8%)となる中、高齢者の理美容サービスは魅力的な市場となり、企業として参入するケースも増えてきている。10分1000円カット」の格安料金で全国展開する「QBハウス」でも、介護施設や病院を対象とした訪問理美容サービスを手掛けている。(訪問理美容の料金は10分1000円とは別体系)

要介護者向けの訪問理美容サービスは、保健所への届出で比較的容易に開業することが可能だが、企業として参入する場合は、理容師・美容師の人材を新たに確保する必要がある。不定期の日時に現場へ出張して施術を行うため、フルタイムの勤務ではなく、副業者やフリーランスも求人の対象になっている。

全国には理容師の有資格者が60万人、美容師の有資格者が123万人いるが、その中の4割にあたる約72万人は、関連の仕事に就いていない休眠資格者とみられている。それらの休眠者は、訪問理美容を手掛ける企業にとって格好の人材である。

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しかし、理容師や美容師の立場では、時給ベースの報酬額で働くよりも、個人で起業したほうが収入とワークスタイルの自由度は高い。そのため、高齢者専用の理美容師として無店舗で開業するケースは、全国的に増えてきている。※以下は、NTT西日本大阪病院で出張営業されている「理美容室 LEON」の映像です。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。高齢者向け訪問美容サービスの起業方法については、JNEWS 2019.11.8号で特集しています。詳細は公式サイトをご覧ください。

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