欧州ガンプラ「文化」の可能性=ドイツから考える
近年、ドイツのアニメファンイベントでは「ガンプラ」の楽しさを伝えるファンブースを見かけるようになりました。ワークショップも盛況のようです。今回はインタビューも紹介しつつ、欧州でも存在感を増しつつあるガンプラの可能性について考えてみます。
日本の新聞でも報じられてることが増えた「ガンダム」
「ガンダム」といえば日本でも日経新聞では、大型商業施設に設置された実物大の「νガンダム」(今年4月25日)や、「ガンプラ」も品薄による転売対策(今年3月30日)などが報じられています。一部のファンだけでなく、もはや世間全体の大きな関心事と言ってもいいのかもしれません。
ガンプラファン団体「WeDoGunpla」の活動とは?
タイトル写真に使用したガンプラの作成風景は、筆者が去年2021年の夏にドイツの大型アニメファンイベント「Dokomi(ドコミ)」で撮影したのものです。実はブースを見学したついでに関係者の方にインタビューをしていました。
代表のフォン・グラシェフスキーさん(写真右)に聞いたところ、自身の「ガンダム」との出会いは『ガンダムSEED』や『ガンダムW』で、当時、ドイツ語吹替版で楽しんでいました。
バンダイナムコの拠点はパリにあり、「プロモーションキット」の提供を受けているそうです。メンバーの皆さんは宣伝も手伝うことで「ガンプラ」の人気拡大に貢献したいと話してくれました。
余談ですが、パリの「バンダイホビーストア」は日本でも2020年末にその盛況ぶりが報道されています。
さて、そんな彼らですが、どのようにして「ガンプラ」を入手しているかというと、日本から取り寄せることが多いのだとか。ドイツでも購入機会が増えつつあるが、品揃えがイマイチなのだそうです。
もっとも、「ガンプラ」を購入できる場所はドイツやフランスだけではなく、イタリア、ベルギー、オランダなど欧州各国に広がっていると教えてくれました。
欧州の「ガンダム」ファン同士で交流することもあります。その時のドイツらしいエピソードとして、イタリア人たちが「ジーク・ジオン!」と皆で敬礼して盛り上がったそうですが、フォン・グラシェフスキーさんはドイツ人として一緒に敬礼することはできなかったそうです。
後日、この「ドコミ」で実施されたワークショップのもようも報告してくれました。
ワークショップには老若男女、様々な人が参加したそうです。プラモデルを初めたきっかけは、『ポケモン』や『デジモン』。色を塗った経験は、ミニチュアボードゲームの『ウォーハンマー』のフィギュアが最初だったという人もいたとか。いずれにせよ、「ガンプラ」の可動部分の多さなど精巧な作りに驚いたひとが多かったようです。ちなみに、この「ドコミ」ではプロモーションキットを120個使用したそうです。(今年6月に開催予定の「ドコミ」でもワークショップが計画されているようです。)
「ガンプラ」がさらに浸透するためには?
アニメファンが多く集まるドイツのイベントで、「ガンプラ」の組み立てを楽しんでいる人たちを見ていて筆者はこれだと思いました。つまり、商品の使い方、そしてその楽しさは、店頭に並べているだけでは分からないということです。
ドイツとプラモデルといえば、そもそも相性が良いようにも思えます。ドイツの模型好きといえば、ハンブルクの大型模型ミュージアム「ミニチュア・ワンダーランド」が有名です。
ドイツ人の職人気質と言えばステレオタイプに聞こえるかもしれませんが、鉄道や飛行場、町の作り込み、細部へのこだわりは注目すべき点であるのは間違いないです。また、ドイツの模型店に行けば、軍艦や戦車のプラモデルを見かけることもあります。
しかし、気になっていることもあります。それは、それぞれのジャンルのファンは重なっているようで、実はそうではないという可能性です。カジュアルなアニメファンとジオラマや鉄道模型にこだわる人は意外と重なっていないのではとないでしょうか。であれば、「ガンプラ」のワークショップなどを通じて、アニメファンに作り方の楽しさ、もしくはその奥の深さを体験してもらうのは「ガンプラ」という商品の普及だけでなく、ガンプラ取り巻く文化の醸成が必要なのかもと思いました。
日本人の協力の仕方とは?
まとめます。アニメファンに「ガンプラ」の作り方や楽しみ方を伝える仕組みが今後の普及拡大の鍵になっているように見えます。「ガンプラ」という商品を日本から欧州に輸出することはとても大事で大前提となりますが、同時に、例えば現地のファン団体と協力すれば「ガンプラ」文化の浸透も可能なのかもしれません。
そして、日本は「ガンプラ」が生まれた国であり、かつ「ガンプラ」文化で先行する「先進国」でもあるわけです。ただの輸出に終わらない、文化の伝播や伝導といった分野でも協力できるのではないかと筆者は思いました。皆さんはどう思いますか?
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取材協力:P.フォン・グラシェフスキーさん(「WeDoGunpla」)
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