見出し画像

人口動態の変動が潜在成長率に与える影響

パスポートが映す「縮む国」 保有4割減、海外永住は増加 - 日本経済新聞

国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によれば、2020年時点で1億2615 万人存在した日本の総人口は、2070年には8700万人へと3割以上も減少することになっています。このように、日本の総人口及び生産年齢人口の減少が中長期にわたって続くことは確実であり、人口減少が日本経済の潜在成長率に与える影響が懸念されます。

こうした中、潜在成長率を被説明変数として、「人口伸び率」、「生産年齢人口(15~64歳人口)伸び率」「20~69歳人口伸び率」の3種類の人口指標を説明変数として用いた推計結果からは、20~69歳人口の伸び率が最も潜在成長率に与える影響が大きいことがわかります。

そこで、潜在成長率と最も関係が深い20~69歳人口を用いてローリング回帰の時系列変化を見ると、人口動態が経済成長に与える影響は、2010年代以降低下した後、2020年代以降は横ばいとなります。背景には、潜在労働参加率の上昇以外に全要素生産性や資本投入量等の上昇が考えられます。このため、仮に今後も人口減少が続いたとしても、資本投入量や全要素生産性の寄与を高めることができれば、潜在成長率を維持できる可能性があります。

続いて、20~69歳人口伸び率を用いて、将来的な人口動態が潜在成長率に与える影響について試算すると、2020年代後半は人口動態が潜在成長率の押し上げ要因となりますが、2030年代以降は潜在成長率の鈍化が示唆されます。そして、人口動態的には2040年代前半が最も厳しい局面に入りますが、2040年代後半以降は20-69歳人口の減少幅が縮小するため、2050年代後半以降は潜在成長率がプラスに転じる可能性も示唆されます。

年金財政を悲観的に誤解する最大の原因として、支える側を「生産年齢人口」で見ていることがあります。しかし「20~69歳人口÷20~69歳以外人口」の比率で見れば、低下は緩やかになります。さらに、年金や社会保障制度の本当の状態を表すのは、年齢に関係なく「就業者数 ÷ 非就業者数」となるでしょう。そして、この考え方によれば、むしろ改善しており、その理由は、特にアベノミクス以降に女性や高齢者で働く層が増えたことなどがあります。

以上を踏まえれば、胴上げ型から肩車型への変化を前提とした社会保障亡国論は必ずしも正しくないことを多くの国民が理解することが重要といえるでしょう。そして、働き手を増やすことで超高齢化社会を乗り切る一助となるとの理解が広がれば、人々の将来不安も軽減する余地はあるのではないかと思います。

いいなと思ったら応援しよう!