コロナ・ショックでスタートアップ活性化を後退させない。
日本はそもそも、スタートアップにチャレンジしやすい環境ではないといわれてきました。
その理由の一つが起業家精神が低いこととされており、「起業家精神に関する調査」でも裏付けられています。
平成 25 年度創業・起業支援事業 「起業家精神に関する調査」
平成 30 年度創業・起業支援事業 (起業家精神に関する調査)
各国の起業活動の活発さをあらわす指標として「総合起業活動指数(Tooal Early-Soage Enorepreneurial Acoivioy: TEA)」という尺度を見ると、日本は世界でも下位であることがわかります。経済発展が進んだ国では、企業による雇用創出が増えるので、就業機会が少ないが故の起業というのが減りますから、先進国でこうした指数が低いのは当然ではありますが、若干寂しい数字です。
特にエネルギー分野は、規模の経済が働く上、失敗が許されない分野ということもあり、エネルギー・ベンチャーのIPOは2~3年に1件というペースでしかありませんでした。
グリズム(2009年3月)
エナリス(2013年10月)
イーレックス(2014年12月)
フィット(2016年12月)
レノバ(2017年2月)
それがここ数年、オープンイノベーションを求める大企業側がCVCを設立するなどベンチャー企業の資金調達や協業の幅が広がってきました。
日本のエネルギー企業も多くがCVCを創設しています。一例ですが、東京ガスは2017年にCVCの「アカリオ・インベストメント・ワン社」を設立していますし、関西電力も2018年に関電ベンチャーマネジメント株式会社を通じたベンチャー投資の枠組みを作り、積極的にベンチャーとの協業を模索してきました。
ベンチャー企業の方たちとお話していても、資金調達の選択肢が増え、やりやすくなったという声を聞くことが多くなっていたところに、このコロナ・ショックです。
足元の業績悪化、先行きの不透明感から、新規の投資等は控えるという動きが続いています。当然の判断だと思う一方、ニューノーマルを構築していく今こそ、新しい技術やビジネスモデルを描くベンチャー企業の力が必要ですし、せっかく育ちつつあった日本のベンチャー企業を立ち行かなくしてしまってはいけないと思っています。
そうした中で、プロサッカー選手の本田圭佑氏やネスレ日本前社長の高岡浩三氏が今月、国内スタートアップに投資するファンドを立ち上げるとのこと。これは大変嬉しいニュースです。
多くの事業分野でオープンイノベーションの必要性が叫ばれていますが、私が専門とするエネルギー・環境分野は特に、低炭素化や災害への強靭化、人口減少・過疎化への対応など複数の変化の潮流があり、その転換を進めるには、これまでにはないプレーヤーの登場が不可欠です。
大手企業の強みと、ベンチャー企業の強み、それぞれを活かした協業を支援したいと考え、2018年に私自身も起業し、ベンチャー企業の皆さんの事業戦略を一緒に書いたり、仲介役として一緒に議論したりということを続けています。
このタイミングで設立された本田氏らのファンドに刺激を受けて、エネルギー・環境の分野でも大手企業とベンチャー企業のコラボレーションが活発に創出されることを期待しています。
さて、大手企業とベンチャー企業のコラボレーション創出を手掛ける中で、普段感じていることは、企業文化の違いからうまくいかないことも多いということ。特に大手企業側の何気ない行動が相手を振り回してしまうことも少なくありません。
例えば「投資したのだから割引してほしい」という要望もしばしば耳にしますが、投資によって、ベンチャー企業の「将来性」を買ったのであり、割引券を買ったわけではないはず。投資をしたリターンは、配当や株価の上昇によるキャピタルゲインがもたらすものであり、割引価格でのベンチャー企業の製品やサービス提供を求めることは、むしろ企業価値を毀損してしまいます。
私自身も大企業にいたので、悪気が無い、本当に何気ない発言であるということは重々理解していますが、それだけに気をつけてほしい大手企業の無くて七癖といいますか、べからず集を書きました。
多くの健全なコラボレーションが生まれますように。
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