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国際イベントの未来

世界のさまざまなイベントが新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって中止になったが、その再開を模索する動きが出はじめている。

ヨーロッパを代表するスタートアップ関連イベントのひとつ、ウェブサミットは今年は時期をずらし、オンラインとオフラインの両方で開催をすることにしたとのことだ。

この記事で語られているように、引き続き対面の価値がなくなることはない、というのは間違いがないことだろう。一方で、このウェブサミットが開催される今年12月の時点で、例えば私たち日本人が開催地であるリスボンに足を運べるのかどうかというところは、未だに分からない。欧州域内の移動は解禁されているかもしれないが、域外との移動が年末までに元通り自由にできるようになっているのかどうかは、現時点では誰にもわからないことだろう。
数日間の見本市に参加するために、現地に2週間前に入って自己隔離し、感染がないことを確認した上でイベントに出て、帰ってくる時にまた日本で2週間自己隔離をする、といった必要があるなら、合計で約1か月間の自己隔離期間が必要なことになる。自己隔離中はリモートワークをしていればよい、とも考えられるが、家族と過ごすことなど、プライベート・ライフは犠牲になることになり、1つのイベント参加のために1ヶ月間の自己隔離をしなければならないということは、多くの人にとって必ずしも理にかなったものと言えないのではないだろうか。

そうであるなら、主催者や主催地の自治体が期待するようなリアルなオフライン集客が本当に実現するのだろうか、とも思う。行けるとしても、感染を気にしてオフライン参加を見送る人もいるだろうし、まして要職にあったり有名であったりして見本市の目玉となるような登壇者や出展社が軒並みオフライン参加を見送るようなことになれば、一般参加者もオンライン参加にシフトする可能性も否定できない。

そしてCOVID-19問題が起きる以前から、これまでの見本市の存在意義を問う声は、一部の出展社を中心にあったことは間違いがない。記事にあるようにトヨタはフランクフルトモーターショーの出展を見送ったり、CESへの出展も断続的だった。自動車とは別な業界のことであるが、ある出展社側の関係者が、この形での見本市はいつまで続くのだろうか、そう長くはないのでは、と数年前にした雑談の際に語っていたことを思い出す。

そして記事にもある通り消費者の行動が変化するのであれば、さらにこうした傾向に拍車がかかる可能性もあるだろう。消費者がオンラインをベースに様々な消費行動や生活行動を起こすようになるなら、見本市は従来通りオフラインがないと成り立たない、ということであるとすると、ややちぐはぐな気がしてしまう。もちろん消費者に関するB2Cの話と、商談などの B2Bは違う話だが、消費者がオンラインをベースに自分たちの生活を組み立て始めるのだとしたら、そういう消費者に対してビジネスをする人たちがオフラインでないと対応できないとなると、消費者側の意識の変化についていけないことになるのではないだろうか。

もちろん対面の価値を否定するわけではないし、なくなるとは思っていない。対面はこれからも重要なコミュニケーション手段であり続けるだろうし、むしろこれまで以上に対面の価値は高くなっていくのだろうと思う。それなら、多くの人が多くの人と一斉に会うという、言ってみれば価値が比較的低い、ないしは玉石混交な n対n の対面よりも、ピンポイントで設定される1対1かそれに近いような対面が、非常に大きな価値を持つということに変わっていくのかもしれない。

また、こうしたイベントの中止または開催については、いわゆる見本市に限らずマラソン大会のようなスポーツイベントについても同じことが起きている。ほとんどの主要な国際的マラソンイベントは今年の開催を見送っているが、まだごく一部開催中止を決定していないイベントもある。こうしたところがどのように今後の開催あるいは延期・中止するのかというところは、非常に興味深く見守っているところだ。見本市はオンライン参加が可能だが、いわゆる市民マラソン大会にリモート参加する、という方法は、少なくても今のところ想定できない、という違いがある。

いずれにしても対面の価値を今後どのように扱っていくのか、また対面をベースにするとしても、国と国との間がこれまでと同じように自由に行き来できるまで時間がしばらくかかるのだとすれば、その間はどのようにするのか。そしてそういう期間が長くなる間に、消費者つまりは個々人を起点に、世界全体の意識や企業の姿勢が変わるのだとしたら、それにどう対応していくのか。非常に変数は多く先行きは見えないのだが、これまで多数の見本市・展示会にお世話になってきた身としては、この点についてしっかりと見極めていきたいと思っている。

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