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恋も家庭も捨てたら女性は偉くなれるのか。パワポで考えてみた。

モヤっとする会話が聞こえてきた。

オフィス街の昼下がり。
カフェでお茶をする男女。
2人とも、30代半ばに見えた。

モヤっとしたのは、女性の発言。

・もう恋人も子供も要らない。マンションも買った。
・だから私はこの会社で偉くなるって決めたの。
・上は女性管理職を求めているし、この流れに乗る。
・偉くなって、権力を持って、やりたいようにやるわ。

という内容だった。

どうだろう。

同じようにモヤっとした人はいるだろうか。

「たくましい女性だなぁ」

などと、適当に聞き流せばいいのだが、僕はつい手元のiPadでこのモヤモヤを整理しはじめていた。

当時のメモ(汚い)

今日はそんな話。

■有限な自己資産をどう分配するか

家に戻って、PowerPointを起動して、先ほどのメモを再整理してみた。

おそらく、彼女の考え方の背景にはこんな構造がある。

人は皆、有限な資産を持っている。
代表的な資産は「お金」「時間」、そして「エネルギー」

これらの資産を何に使うか。

彼女の話で言うと、主な使い道は「仕事」「恋愛」「家族や子供」となる。

・もう恋愛も、子供も要らない。
・(その分を)仕事に打ち込む。


という発言を構造に当てはめると、こうなる。

「時間」や「エネルギー」といった資産の大半を、仕事に分配する。
それによって、彼女は「偉くなる」という対価を得る。

その対価の1つとして給与(お金)が上がり、「お金」の母数が増える。

お金が増えても、主な使い道である恋愛や家族は存在しないので、結果的に「自分に使えるお金」の総量も増える。

冒頭の彼女が選んだのは、こんな生き方だろう。

もちろん、この分配は人それぞれだ。

「時間」や「エネルギー」、「お金」の大半は、家族や子供に分配する。仕事は最低限で、お金の総量は少なくてもいい。

そんな彼女と真逆のパターンの人もいるだろう。

と、ここまで整理してみたものの、やはりモヤモヤは収まらない。

その正体はやはり、この構造がトレードオフ(二律背反)を前提としているからだろう。

■女性活躍の表面と本質

冒頭の発言で彼女は、

・上は女性管理職を求めているし、この流れに乗る。

と言っていた。

そして「もう恋人も子供も要らない」価値観をシフトさせた自分はそれに最適だと考えていた。

そう決意した彼女が実際に偉くなった場合、周囲にこう伝えるだろう。

やはりモヤモヤする。

女性活躍って、それでいいんだっけ?

と考えてしまう。

もし彼女が「時間」や「エネルギー」を割いたことで偉くなったとしたら、会社の評価基準がそこにある、ということにもなる。

これってつまりは、あの世界観ではないだろう。

企業戦士を表現した1989年の栄養ドリンクの広告

このキャッチコピーで検索すれば実際の画像を見られるが、広告に出演しているのは、見事なまでに全員男性だ。

バブル絶頂期に日本のビジネス界隈で美徳とされていたのは、有限の資産を全て仕事に費やすことだった。

冒頭の女性の発想はまさにこれで、男性の顔が女性にすり替わっただけだ。

根本的な価値観は一切進化していないことになる。

「女性活躍」とは女性に(旧)男性的な活躍を求めていることだろうか。

きっとそうではないはずだ。

もちろん今の日本にとって、女性管理職が増えることは望ましい。

ただ「どんな女性を、どんな理由で偉くするか」
その本質を見失うと、時代を逆走することになりかねない。


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小島 雄一郎
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