「尊敬する人」がいるということ
"Never meet your heroes"とはよく言ったもので、心の底から尊敬して憧れて、人生の指標にしている人とは、極力会わないほうがいい。一方で、幻想が壊れても良くて「現実を見たい」というのであれば、会うべきだ。
「有名人」や「天才」と呼ばれるような人々、特にアーティストと仕事や私生活で身近に接することで学んだことが、多くの人が羨むような才能と人気に恵まれているような人でも、おそらくみんなが想像する100倍の苦労や努力を積み重ねているし、おそらくみんなが想像する100倍の絶望を抱え、見てしまったら幻滅するようなカッコ悪い私生活を送っている、ということ。
一つのことに集中して取り組むという姿勢や熱意には、「努力」だけではなく、「才能」が伴う。しかし同時に、彼らの原動力として突き動かすものに「向上心」という純粋なモチベーションだけでは、なかなか持続して高みを目指し続けるのは難しいというのも事実だ。結果として、多くの場合は「知名度」「カネ」「権力」「名誉」など、外的なモチベーションを追求し、その狭い空間の中で「競争」に勤しむことでやみくもに走り続けることが可能になる。
しかし、何がしたいのか明確にわからないまま、ただ単に「今の自分は虚構の自分(本当の自分はもっとすごい)」と傲慢になっていたり、権力や地位に執着することにしか関心がない場合は、必ず多くの人にとって最悪の結果をもたらす。この悲劇は何度も目撃してきたし、才能を潰す行為だ。
同時に、スキャンダルや解散など「残念」な情報が出た際、憶測や噂が必ず飛び交うが、「表」に出回る情報なんてごく僅かで、実際にはほとんどの人が一生真実の全貌を知ることのないまま世の中は回り続ける。「わかりやすさ」とか「業界の裏事情」とか「問題の根源」みたいなものを求めるのは愚かだとも思う。実際の「リアル」は、誰にもわからなかったりする。