ドラマや映画を倍速で楽しむ人は、脳内で通常速度に戻している。
今月の日経COMEMOのテーマは「#倍速で楽しみたいこと」とのこと。
Z世代はコスパじゃなくて、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視。
ドラマや映画を倍速で楽しむ人だっている。
こんな話は、僕の本業である「若者研究」で頻出だ。
最近はwebニュースでも「タイパ」と言う表現を聞くようになった。
ただその代表的な行動として挙げられる「倍速視聴」に関しては、批判的な声も多い。
・そんなに生き急いでどうするの?
・倍速で観て楽しいの?
・制作者に失礼だ!
これらの批判の気持ちはわかる。
ただ落ち着いつて考えみると、ちょっと違う気もする。
今日はそんな話。
■情報爆発で、差分も爆発
若者がタイパを意識するようになった背景として、こんなグラフを提示することがある。
総務省やら海外の調査やら、その出典は様々だが、ネットの登場以来、世の中に流通している情報量は増え続けているという話だ。
1日は変わらず24時間だが、処理対象となる情報が増えている。
故に、人はタイムパフォーマンスを意識するようになった、という裏付けだ。
ただこれはあくまでも相対的な話で、もちろん人によって差がある。
例えば丸一日スマホを放置した時、あなたのスマホには何件通知が溜まるだろうか。
10件の人もいれば、100件の人もいるだろう。
同じ時代に生きていても、日々処理している情報量には個人差がある。
処理する情報量に差がつきやすいのも、情報爆発している時代ならではの現象と言えるだろう。
■情報処理は筋トレ
僕はこの処理する情報量の格差から冒頭の「倍速視聴」という現象が生まれるし、それを自然のことだと捉えている。
若者ではない僕(38歳)だって同じだ。
例えばリモートワークがはじまって、移動時間がなくなり、打ち合わせの数が格段に増えた。時には2つのミーティングに同時に出なければいけないこともある。
前もって断った上で2つのミーティングに出る時は、右耳と左耳で聞き分ける。最初は慣れなかったが、徐々に聞き分けができるようになってきた。
もちろん、聖徳太子ではないので両方を100%で聞くことはできない。ただ最初は両耳30%程度しか集中できず効率が悪かったが、最近は50%ずつで聴けるようになってきた。
このように、処理する情報量が恒常的に増えると脳内の処理能力も徐々に上がってくる。
近頃の若者は集中力がない。
そんな風に揶揄する記事もあるが、僕はこれを「進化の過程」と捉えている。
情報処理力とは、筋トレのようなものだ。
■倍速視聴は濃縮還元
こうして情報処理能力が鍛えられた先にあるのが「倍速視聴」ではないだろうか。
倍速視聴を楽しむ人は、情報処理力が上がっているため通常速度が遅く感じているという仮説を唱えてみる。
2倍までにはなっていないとしても、1.1〜1.3倍でないと楽しめないのかもしれない。
その感覚が倍速視聴につながる。
つまり倍速視聴とは濃縮還元ジュースのようなもので、脳内で本来の速度に戻せる人がとる行動ではないだろうか。
結果的に批判している人と同じようにコンテンツを楽しんでいるだけかもしれない
にもかかわらず、その感覚を持っていない人が
・そんなに生き急いでどうするの?
・倍速で観て楽しいの?
・制作者に失礼だ!
と自分の尺度だけで論じているだけだとしたら、それは昨今時代錯誤と言われる「いいから、やれ(=いいから、そのままの速度で観ろ)」と同じ類のものかもしれない。
「通常の速度」なんて、自分の中にしかないのではないだろうか。
この記事が参加している募集
サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。