シニアの社会的責任としての投資
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シニアの社会的責任としての投資

この記事を読んで、すこしホッとした。若年層の方がインフレの影響を受けにくい政策効果が出ているという。

若い世代にばかりしわ寄せが行ってしまうことで、この国の将来がとても心配な状況だと感じている。高齢世代の社会福祉のために若い世代にお金が回らなくなると、結婚して家庭を持てなくなり、持てても子供をもうけることが出来なくなり、子供が生まれても十分な教育を施せなくなる。

その結果は、若年人口の減少と、教育レベルの低下、端的に言えば稼ぐ力の低下となり、結果として高齢世代を支える力は、質・量ともに一層弱まってしまう。

日本は民主主義国である以上、国のあり方は投票で選ばれた人たちが決めることになるので、選ばれる側だけでなく、選ぶ側がこうした点を意識していないと、高齢者に口当たりのいい・耳障りのいいことばかりが施策にならんでしまい、国の将来を損なう危険性は、「いまそこにある危機」であると思っている。

こうした事態を回避する方策のひとつとして、ミドル~シニア世代の「資産形成・投資」を社会的責任として位置づけ、そのための教育の機会を設け、またそれを実践するのにふさわしい金融機関の育成が出来ないだろうか、と思う。自助努力としての「貯蓄から投資へ」というのは、ミドル~シニア世代にとって、若い世代の負担を極力少なくするための社会的責任、とすら言っても良いのではないか。

数年前に「2,000万円問題」が世間をにぎわせたが、高齢世代にとって主要な問題が老後資金であるなら、それを少しでも自助努力で解決することを考えなければならないだろう。

そのために、適切な範囲でリスクをとり、またリスクをコントロールする方法を身につけて資産の運用・投資を行うことは、年代的に多くの資産を保有しているシニア世代にとっての、社会的責任とでも言うべきものではないかと思う。

まずは、ほぼゼロ金利(0.001%程度)の銀行預金を国債(個人向け最低金利0.05%)に変えるだけで、50倍の金利がつくことになる。10万円預金して年1円の利息だったものが50円になるだけ、ではあるが、ちりも積もればで、小さなリターンを堅実に積み上げていくところが、広く多くの人が投資をする場合に大切なことだと思う。国債は国が発行するものだから、そのリスクは民間の銀行に預けておくよりも小さい。銀行であれば1,000万円を越える預金は保険の対象にならないことも、どれだけ認識されているのだろうか。

もちろん、闇雲にやって、老後資金を溶かしてしまってはかえって若い世代に負担をかけることになり逆の効果を生んでしまうので、それは避けなければならない。慎重には慎重を期しつつ、でもトライするという、矛盾するようなことが求められる。そのためには、ある程度の基礎的な金融や投資の知識と理解は必須のものだと思う。

今年度から高校で金融教育が始まるが、それをシニア世代も含めた社会人世代も「聴講」することはできないだろうか。例えば、文科省と金融庁が監修して模範的な授業をビデオ収録し、誰でも見られるように動画サイトなどに投稿して公開するだけでも違うのではないだろうか。実際に学校で金融教育の教鞭をとる先生にとっても、お手本の教材として活用してもらえるのではないか。おそらくは多くの先生も投資や資産形成に関する経験は限られているだろうから、こうした教材が先生の授業をレベルアップする効果は大きなものがあるのではないだろうか。

そして、そうした資産形成に相応しい金融機関や金融商品を用意することも大切なことだ。現在の金融機関が退職者に向けて売り込んでいる金融商品は、ほとんどが売り手にとって都合がよいものであって、退職者の老後資金を守り増やすものは非常に限られる、というのが、実際に早期退職して金融機関のアプローチを経験した自分の偽らざる本音だ。知り合いの退職者に聞いても同様の感想が返ってきた。

つみたてNISA制度の開始にあたっては、金融庁が対象の金融商品を厳選して、つみたてる側に不利なものを排除したというが、何らかの方法で、一般消費者が安心して金融機関や金融商品を選べる仕組みを作る必要もあると思う。

もちろん、個人の自助努力を促すことも同時に大切だ。自分が勤務先の持株会に入った約20年前のことを思うと、今は驚くほど投資環境も整った。そのころはまだ特定口座もなく、米国株も普通には買えず、投信はあったが手数料(信託報酬)も今より高く、ETFもまだ一般的ではなかった。そういう中で、当時はどうしてよいか分からずにいた。

今は、信用するに足る資産形成や投資に役に立つ確かな情報も、普通に出版されている本を買うだけとか無料動画をみるなどの、わずかなコストと手間で手に入るようになった。高齢世代からは冷ややかに見られがちなFIRE(ファイア)にまつわる情報にも、役に立つヒントはたくさん詰まっている。

ただ、情報が多すぎて、かえって信頼に足る(怪しくない)もの、自分にフィットするものを探すのはちょっと大変かもしれない。

私は投資や資産形成の専門家ではないが、まずは1か月数千円からでも、少額で「練習」をしてみて、すこしづつ増やしていくとよいのではないかと思っている。今は、100円から投資信託が買えたり、日本株を1株から、つまり数百円から数千円程度で1株を買えるサービスもいくつかのオンライン証券会社が提供している。こうした練習を助走としてやっておけたら、初期の初心者としての失敗があっても影響は軽微で済むだろうし、時間をかけて助走から本走に入っていれば、退職金もある程度自信をもって自分の判断で運用できる人も増えるのではないだろうか。

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川端 康夫(アクティブビジョン株式会社 代表取締役)
アクティブビジョン(株) 代表取締役。大手企業とスタートアップ双方の事業創造・成長のサポートを手がけ、短期的な戦略コンサルティングの後に必要となる、地味な伴走型の戦術コンサルティングを手がける。 http://www.aktivevision.com  tw:@yasuok10