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「競合プレゼンはやめたほうがいい。」僕がそう考える理由を、プレゼンします。

あなたは「競合プレゼン」なるイベントに参加したことがあるだろうか。

僕のいる広告業界では、この競合プレゼン(通称:競合/競合コンペ)なるイベントがしょっちゅう行われている。

と言っても、イベントの主催者はクライアントで、僕たちはその参加者にすぎない。

僕たちの仕事のはじまりは大きく2パターンあり、競合プレゼンをせずにはじまる「指名」と、競合プレゼンからはじまる「競合」だ。

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少し特殊なケースとして、社内競合なるイベントもある。

とある会社が仕事をゲットすることは(ほぼ)決まっているけど、その社内で誰がその仕事をゲットするかを争う。この場合、同じ社内で複数のチームが結成され、その中の1チームが最終的に選ばれることになる。

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ちなみに「何で争うか?」は結構複雑だ。

一言にしてしまえば「提案の質」なのだが、広告会社の競合プレゼンにおける質とは

・戦略(大きな方針)の質
・戦術(具体的なアイデア)の質
・予算(費用面の効率)の質

など変数が多くて勝因が掴み難い。

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と、ここまで競合について説明してきたが、正直僕はこの「競合プレゼン」というイベントはやめた方がいいんじゃないか、と思っている節がある。

今日はその理由を、丁寧にプレゼンしてみる。

読了まで3〜5分。しばしお付き合いください

■競合がいると、優先順位が変わる

僕の業態は、BtoBだ。Bが僕の会社、もう1つのBがクライアント。

クライアントもまたBtoB企業の場合もあるが、多くは生活者を相手にするBtoC企業だ。

ただどちらにしろ、僕らはクライアントがその顧客に選ばれるためのお手伝いをしているので、広い意味でBtoBtoC企業だと思っている。

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繰り返しになるが、僕の仕事はクライアントがその顧客(toC)に選ばれるためのお手伝いだ。

だからクライアントのために、toCの気持ちを一番に考えないといけないtoCに選ばれることが、クライアントにとっての利益になるのだから。

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しかし競合になると、その姿勢がブレはじめる。なぜならtoB(クライアント)に選ばれないと、その提案は実行されないからだ。

最優先事項が「クライアントに選ばれること」になる。競合する相手がいることで、考えるべき優先順位が揺らぎはじめる。

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これが僕が「競合プレゼンはやめたほうがいい。」と考える理由の1つだ。まだもう少しある。

■競合がいると、方向性がブレる

このtoBとtoCを、2つの軸で考えてみる。

競合する相手がいない場合、軸は1つ。toCだ。
どんな提案をしたらtoCが飛びついてくれるのだろう。選んでくれるのだろう。

その精度をとにかく上げることに集中する。
提案Bの状態を、なんとか提案Aにまで仕上げるために時間を使う。

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しかし競合になると、軸がもう1つ出現する。それがtoB(クライアント)の飛びつきやすさ、飛びつきにくさだ。

新たな軸の出現と共に、優先される軸も変わる。

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例えば、先ほどの提案Bは優先度の高い軸に引っ張られていく。

ここで考えてみたい。

以下の図で、競合プレゼンで勝ち易いのはどちらの提案だろうか。

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これはかなり難しい。

個人的な経験からすれば、Bのパターンも、Aのパターンもある。

クライアント次第、というのが正直なところだ。


ただ、軸が2つになったことで、僕らとしてはどっちの方向に精度を高めるべきかがブレはじめる。

このブレは本当にクライアントのためになっているだろうか。

これ僕が「競合プレゼンはやめたほうがいい。」と考える理由の1つだ。まだもう少しある。

■競合がいると、いい提案が流される

質問を変えてみる。

以下のような場合、「いい提案」とはどちらだろうか?

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これは自信を持ってAだ。

「右上の提案があれば、それが一番いいに決まっているじゃん」

そんな声が聞こえてきそうなので、ここで謝っておく。

右上の提案なんて存在しないです。ごめんなさい。

先ほどはわかりやすく説明するために2軸を使ったが、本来「提案」とは以下のような法則の上に成り立っている。

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クライアント(toB)の飛びつきやすさを追求すれば、その先の顧客(toC)は離れていく。逆もまた然りだ。

その中でいい提案とは、この辺りではないだろうか。

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クライアントとしてパッとは飛びつき難い。しかし顧客のことを考えたら、このくらいのことをやらないといけない。

そんな
・有意義な悩みを誘発し
・クライアントの勇気のある決断を促し
・顧客との関係性を変えていく
提案こそが、いい提案だと僕は思う。

ただ、競合になると「いい提案」の領域が流れていく。

「まずは自分が選ばれること」
「選ばれないとはじまらない」

そう考えれば考えるほど、流れる方向は、世の中(顧客)と逆行していくのではないだろうか。

結果的にクライアントを独りよがりの存在にしてしまうのではないだろうか。

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以上3点。

終始同じことを繰り返したようだが、僕が「競合プレゼンはやめたほうがいい。」と考える理由だ。


ご清聴、ありがとうございました。


Appendix
もちろん競合プレゼン(コンペ)が行われる理由は、それまでのパートナーに不満があったり、複数案から検討する必要があったり、以下のように寡占や談合を避けて公平性を担保する必要がある、などなど、様々な側面があります。


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小島 雄一郎
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