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コロナ禍で実感した触れることの大切さ〜XR(Extended Reality)が拓く、「離れていても触れることが出来る」の先にある未来

こんにちは。
シリコンバレーでは、ワクチン接種率が高まり、ポジティブな雰囲気になってきました。学校も少しづつ再開の兆しがみえ、一年間リモートのみで授業を受けていた我が家の中学生はスキップしながら週4日、学校に通い始めました。一年間のリモート学習生活で辛い思いをした分、青春時代を思いっきり謳歌してもらいたいです。

コロナ禍で実感した「人と人が繋がる感覚」の大切さ

コロナ禍で「大切な人に会いたくても会えない」ことで辛い思いをした人はたくさんいることと思います。「会いたいのに、会えない」「触れたいのに、触れられない」「ハグしたいのに、ハグしてあげられない」、人にとって「触れ合う」ということは思いの外大切だということを私自身、実感しました。触れるという行為は、親密な感情を伝えるための主要な手段です。子供は親から身体に触れられることで、安心感や安全基地という感覚を無意識に得ているといわれます。心身の健康にとってもっとも重要な感覚であると主張する研究者もいます。もし、ソーシャルテクノロジーにタッチ機能が備わっていたら、ぬくもりを感じることが出来たら、人間関係を育むための手段になったかもしれません。コロナ禍で人々の孤独感が世界的な問題となっている今、たとえ距離が離れていても、人と人とが繋がる感覚を可能にするウェルビーイング・テクノロジーの可能性ついて探ってみたいと思います。

急増する「ビデオ会議疲れ」 − 米スタンフォード大の研究結果

コロナ禍でリモートで働くこと、学ぶことが一般的になりました。Zoomに代表されるビデオ会議用のテクノロジーを通してコミュニケーションを取ることに慣れた反面、「ビデオ会議疲れ」を感じる人々も増えてきたことも事実です。今年2月、米スタンフォード大学仮想ヒューマン・インタラクション研究所のディレクター、ジェレミー・ベイレンソン教授らは、リモートワークの在宅勤務者が、ビデオ通話により自分自身を見つめることに過度のストレスを感じている、通常の対面のやり取りよりも非言語コミュニケーションへの認知的負荷がはるかに重くなる、など、ビデオ会議疲れの原因に関する研究結果を報告しました。

このように、私たちは、Zoom, Facebook、AmazonのEcho Show、GogleのNest Hubなどのデジタル・ソリューションによって「離れていても繋がれる」という恩恵を被っている反面、これらのソリューションには「触れる、感じる」という側面が欠けていることから、精神的な面での倦怠感を感じている人も多くいるのではないかと思います。

「離れていても触れることが出来る」を実現する、バーチャル触覚実現 - ”Extended Reality (XR)”

現実世界の不便さを解決する技術は「X Reality (XR)」と呼ばれ、様々なアプローチで触覚を再現しようとする技術の開発が進んでいます。超音波できめ細やかな触覚を再現する技術「ハプティクス」の導入が社会に広がれば、電子部門業界にとつて新たな成長分野が誕生するといわれており、東京大学や村田製作所などでXR新技術の開発が進んでいます。

米国カリフォルニアで、XR技術を開発するスタートアップ、Emergeの創業者、スライ・リー(Sly Lee)は、米国移民のシンガポール人の両親をもつシンガポール系アメリカ人で、世界経済フォーラムのAR/VRのグローバル・カウンシル・メンバーを務め、雑誌Forbesの”30 Under 30"にも選ばれています。落ち着いた語り口のなかに秘めたパッションが溢れ出るスライは、孤独感という社会の課題をバーチャルに触れることを可能にする技術で解決したいと語る、ウェルビーイング・テクノロジーの起業家です。

「距離を超えて、”意味のある経験の共有”を最新技術によって可能にしたかったんだ」母国に残した愛おしい家族や友人に会えない、触れることの出来ないことの辛さを語るご両親のもとに育ったスライは、そんなご両親の思いにインスピレーションを受け、「たとえ離れていても親密なときを分かち合えるように」という願いを込めて、2015年より技術の開発に取り組んでいます。Emergeのハードウェアは、PCの半分くらいの大きさで、無数の穴が空いている四角いパネルです。このパネルの上に手をかざすと、穴から流れる超音波をアルゴリズムで制御することにより、手のひらに「触れているような感覚」を感じることが出来ます。超音波技術は、再現性の細かさが特徴で、手のひらを細分化した1カ所に当てる音波をプログラムし、振動や力を制御することで、皮膚の表面に伝わる振動などの感触の再現力は高いとされています。

MITメディア・ラボでもXR研究が進められています。inFORMというDynamic Shape Displayの技術は、スクリーンを超えてテーブル上のモノに触れるという経験を可能にします。

急伸するXRマーケットとXR技術がもたらす可能性

XRは、Augmented Reality (AR)、Mixed Reality (MR)、Virtual Reality(VR)を含みます。グローバルでのマーケット規模ですが、2020年度には$42.6 billion (426億ドル)であったマーケットは、年46.5%成長し、2026年には$346.4 billion (3464億ドル)に達するといわれています。実際、XR技術は、様々な分野で採用が検討されており、ゲーム、教育、車のタッチパネルなど、近い将来、我々の生活に身近なものとなると思われます。

XR技術を使えば、ビデオ会議の参加者Aが、スクリーンの向こう側の参加者Bと距離を超えてインタラクションを可能にすることが出来る日が来るのは近いのではないでしょうか。また、お仕事面だけではなく、遠く離れた愛おしい人、病室で生きるために頑張る大切な人など、バーチャルに触れ合いを感じることの出来る未来はすぐそこかもしれません。ソーシャルテクノロジーにタッチ機能が備わり人と人とが繋がる感覚が可能になれば.... 、病気の子供達が動物に触れる感覚を楽しめれば....、施設のおばあちゃんがお孫さんの頬を撫ぜる感覚を実感出来れば.....などなど、バーチャル触覚がウェルビーイングに及ぼす可能性をワクワクしながら見守りたいと思います。

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