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貧困支援とリンクさせるフードロス対策への違和感

世界では年間に約40億トンの食品が生産される中、3分の1の食材は廃棄されている。このフードロス問題を何とかしようとする風潮は世界的に高まっており、各国で食品メーカーやスーパーマーケットで売れ残った食品の廃棄を規制・禁止する法律が制定されはじめている。日本でも、食品ロスの削減を推進する法律は、4月中にも成立する見通しだ。

そうした動きに伴い、店頭で売れ残った商品をどのように有効活用するかという問題は、食品の生産や流通に関わる業者と消費者とが、共に考えていく必要がある。成立予定の法律では、店頭から撤去された食材は廃棄するのではなく、「フードバンク」と呼ばれる非営利の仲介組織を経由して、福祉施設や、いま全国的に広がっている「子ども食堂」などに寄付することが推進される見通しだが、それが真のフードロス対策とは言えない面もある。

日本には、「3分の1ルール」と呼ばれる、業界独自の商慣習があり、パッケージに表示する賞味期限よりもかなり早く、売れ残り商品を回収するのが一般的である。 3分の1ルールでは、賞味期限の3分の1にあたる期間内に小売店への納品を行い、次の3分の1にあたる期間までを、消費者への販売期限としている。そのボーダーライン(賞味期限の3分の2以上)を経過した商品は、売り場から回収されて、返品→廃棄の対象となっている。

現代の消費者は、店頭で1つだけ売れ残っている食品を買いたがらない。そのためスーパーやコンビニ店舗では、以前の在庫がさばけない段階で、新しい商品を追加して陳列棚の見栄えが良くなる演出をする。それが消費者の購買意欲を刺激して、売上の向上に繋がるため、廃棄ロスは一定率の割合で生じることが“善”という、マーチャンダイズ(商品政策)の指導が、チェーン本部からは行われているのだ。

このような販売方針に軌道修正をかけるには、消費者が食品に対して正しい知識や価値観を持つことが重要になる。もともと、売れ残って廃棄される商品の損失分も上乗せされている価格設定は、消費者が割高な商品を買わされていることに他ならず、そうした販売戦略に乗ることは賢いとは言えない。

食品は生産された時点から時間が経過する中で、少しずつ商品価値が下がり、最終的には価値がゼロになる。しかし、その過程で、衛生面や安全面には何ら問題が無く、割安に購入できるタイミングがあれば、敢えて製造年月日から少し経過した商品を買い求めるスタイルもある。

こうした買い物の選択肢は、じつは貧困層よりも、金銭感覚に長けた富裕層のほうが好む傾向もあり、フードロス対策→貧困者支援という発想自体を変えていったほうが、この問題は上手く解決するのかもしれない。

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。詳細は公式サイトをご覧ください。フードロス対策の具体的なビジネスモデルについては「JNEWS LETTER 2019.2.26号」で詳しく解説しています。




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