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地元の力を引き出す事業で笑顔を量産。

ソーシャルグッドという事業部が無印良品を展開している良品企画にあるという。今から約3年前に誕生した部署だ。日本では地方から人口減が始まり、国内ビジネスは少しずつ縮小している。そんな中、地域に資金循環を生み、地域を活性化するために設立された事業部だ。

千葉県鴨川市にオープンさせた「里のMUJI みんなみの里」や世界最大級の店舗である「無印良品 直江津」は、ソーシャルグッド事業部が手がけた新価値創造だ。どちらも、自社が全国展開している飲食事業を活用せず、地元の人や資源を活用した協業を進めている。移動販売の「MUJI to GO」も同様で、生鮮品を扱わないことで地元との競合を避け、車両と運行は地元のバス会社に委託している。その地域で商売をするなら、その地域に迷惑をかけないどころか、その地域に新たな商売を生み出していく。こんな取り組みだ。「暮らしの編集学校」というワークショップで編み出された地域の「おへそ」と「こへそ」というコンセプトもとても面白い。2つのおへそがあることで、交流が生まれ、住んでいる人の楽しみや新たな出会いの場所となっているようだ。

コロナ禍で様子が変わっているとは思うが、2年前、函館朝市でも興味深い取り組みを始めていた。高齢者の外出を支援する「おでかけリハビリ」と、外国人旅行者に通訳を手配する「タビヤク」という2つの新規事業だ。市場に来訪した高齢者には笑顔が溢れ、外国人は安心して消費を楽しめるようになったという。車椅子を使わずに買い物を楽しむ人も出てきたほどだ。「色々なところに出かけたい」という利用者の声を受けて、行き先は、朝市に留まらず、スーパーやデパートと広がりを見せたという。通訳ガイドも同様で、外国人の周遊効果を狙うべく、随伴エリアの拡大を計画していた。

少し話は飛ぶが、「幅広く情報を求める知的好奇心のひとつ「拡散的好奇心」が高い人は、観光や食事、移動などの新たな体験ができる旅行に行く」という調査結果を見つけた。調査はさらに「旅行頻度が高いと、認知機能低下を抑制できる」と続く。新たな体験を重ねていくと、脳の健康維持に役立というのだ。マンネリな日常では脳が弱っていくのも当然な気がする。無印良品のケースも函館朝市のケースもそうだが、移動や新たな出会いが明らかに人の幸福度を高めている。さらに、そうした人の移動を支えるサービスを地元で運営したり、通訳ガイドという仕事を作ったりして、人々の笑顔を支える仕事に就くと、さらに幸福度が増大しているようみえる。こんな様子を日本中に広げられないだろうか。

多くの地方では、「品質の高い商品やサービスを安価にかつ便利にどこへでも届ける」というユニバーサルサービスがまだまだ常識だ。これは、これまでの何十年もかけて、スケールと効率を追求して作り上げた全国ネットワークを通じて実現してきた世界だ。地方の人にも全国レベルの商品やサービスを消費することで幸せを感じてもらうという考え方である。しかし、人口減少の局面に入ったいま、少しずつ全国ネットワークの維持にも綻びや限界が来ている。供給側の経済合理性が合わなくなってきているのだ。ネットワークから外れた地方は雇用が減少し、負のサイクルが始まってしまっている。

新たなアプローチは待ったなしの状況だ。その地方に住む地元住民は「安価な商品やサービスの消費者」という見方から、「その地元にあったきめ細かいサービスの提供に最も適した人材」という見方に変えるべきだろう。地元で笑顔が笑顔を生む循環を作りだす人材になれるはずだ。そうすればその地方に新たな体験が溢れ、明らかに健康寿命が伸びる人が増えていくだろう。大企業はそうした地元の供給者の活躍を応援する役割を担うことにぜひ挑戦して欲しいと思う。目先の収益とは異なる、少し遠回りのアプローチかもしれないが、持続可能性のある社会の立役者になって欲しいと考えている。これからは地方が熱い。さあ地方をデザインしよう。

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