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急成長する世界のeスポーツビジネス、ガラパゴス化する日本

最近、「eスポーツ」に関連したビジネスが盛り上がりを見せている。リンク先のニュースでも取り上げられているように、オランダの調査会社によると世界市場の規模は1000億円を超え、これからも伸びていくと予想されている。市場規模の1000億円は興行収入のみであるため、それに付随したゲームの売上やプロチームのグッズ収入、eゲームカフェや草試合の興行、TVやネットの放映収入などの関連ビジネスの市場規模も合わせるとなんとも景気の良い話だ。

今年開催されるアジア五輪での公開競技に選ばれ、2022年からは公式競技となることが決まっている。本家の五輪でも正式な競技化へと準備中ともいう。また、米国では、サッカーや野球のようにプロチームによるリーグ戦も開幕した。プロチームのオーナーは、New York Metsやアーセナル、サクラメント・キングなどの有名プロスポーツチームのオーナーも進出しているほど本格的だ。

当然、この勢いを逃してはならないと、日本でもeスポーツのビジネスが活性化してきている。日本国内のeスポーツ振興を目的とした「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」が今年2月に発足され、プロライセンス発行予定の6ゲームタイトルを発表した。

しかし、日本のeスポーツビジネスの流れだが、どうやら世界のトレンドとは大きく異なっているようだ。

下図は、JeSUが認定予定のゲームタイトルとアジア五輪のゲームタイトル、世界の賞金額の多いゲームタイトル、世界のプロが多いゲームタイトルをまとめたものだ。2つ以上のランキングに乗っているゲームを赤字に、3つのランキングに乗っているゲームをオレンジ字にしている。

© kunioik920

図 日本と世界の主要なeスポーツのゲームタイトル

図をみるとJeSUが認定したゲームタイトルの中で、アジア五輪競技となっているものは1つだけで、ほかのものはアジア五輪の競技でもなければ、世界のeスポーツの主流とは異なるゲームが選ばれていることがわかる。また、ゲームのジャンルも大きく異なっている。トレーディングカードゲームや、リアルタイムストラテジー(RTS)、マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)といった世界で人気のあるジャンルは日本では見向きもされていない。代わりに、世界では注目されていない対戦格闘やスマホゲームが選ばれている。ゲームを販売している会社(パブリッシャー)も日本の想定しているところとは大きく異なり、世界の市場はRiot Games、Valve、Blizzardの3社で市場が独占に近い形になってしまっている。

当然、これから新たなビジネスチャンスとして市場を創っていこうというのであれば、グローバル市場との接続はなくてはならないだろう。特に、急成長している1000億円の市場規模は、上図の左2つの列に乗っているゲーム群である。にもかかわらず、なぜか日本のeスポーツビジネスは世界の潮流を完全に無視した形になってしまっている。

© kunioik920

図 League of Legendsの世界大会の様子

五輪に選ばれる競技に着目せず、多額の賞金やプロプレイヤーの多い世界市場にもタッチせずに、どうやってこれまでeスポーツに関心を持っていなかった一般層を巻き込み、新たな産業を創造していくのだろうか。なんとなく、日本のゲーム業界と既存のプレイヤー層に忖度して、国内市場でガラパゴス化してしまっているような印象も受ける。

イノベーション研究の大家、ヨーゼフ・シュンペーターは、新しい組み合わせで生産要素を結合させることで新たな市場を作り上げることができると述べている。日本のeスポーツビジネスはうまく新結合を生み出すことで、新たな産業へと成長することができるのだろうか?今後の動向が楽しみである。

https://www.nikkei.com/article/DGXZZO31242830R00C18A6000000/

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