ウルサス時代も、賢い人はモノに恋するのをやめない。
ウルサス時代が来た。これから、SNSを通じてものが売れるようにより一層なるのだろう。
KATALOKoooの翠川です。年間100以上のブランドとやりとりしながら、小売の未来を作る使命を感じています。作る側の規模に関わらずもっと、「いいもの=誰かのお気に入りになり得るもの」の流通が増えることを願って早18年経ちました。
ULSSAS時代がやってきた
ULSSAS(ウルサス)とは、
U:UGC(ユーザー投稿コンテンツが最初のきっかけ)
↓
L:Like(いいね!する)
↓
S:Search1(SNSで検索する)
↓
S:Search2(Google/Yahoo!で検索する)
↓
A:Action(購買に結びつく)
↓
S:Spread(さらに拡散される)
ユーザーの、モノの購買行動の新しい形を表すマーケティング用語です。要するに、SNSの普及がものの購買に当たり前に影響を及ぼすようになったよ、ということ。詳しくは、ホットリンクの飯髙悠太さんの著書ウルサス本こと「僕らはSNSでモノを買う」にとてもわかりやすく書いてあります。
これは、正当に良いプロダクトやストーリーのあるブランド、ビジョナリーな企業には追い風だ。この風はこれから主流になる。
本の中にもある通り、大きな広告費がなくてもはじめられるところ、規模関係なく効果が出るところ、語られる機会が増えるので長所が多い商品に有利なところ、など発信する側からするといいことばかり。私が日々関わっている、真面目で正直なブランドや作家にもかなり有効だといえる。
ただこの流れで湧くタイムラインを見て、私はひとりなんとなく焦っていた。
モノが情報として消費されそう
モノがそこに存在した瞬間から生まれる世界、それがいいものの醍醐味。モノの存在は、過ぎ去らない。存在する前にはなかった世界が、ずっと続いていく。ずっとそこに在るのだ。
ものひとつひとつに背景があり、ブランドそれぞれにストーリーがある。最初のUGCでは、そういった内容が語られていることも多い。そこに、たくさんいいねがつく。でも、拡散されはじめると、多くの人にとっては一旦情報になってしまう。
モノは世界感を作っていくものだ。情報ではない。モノとの関わりはずっと寄り添って線として続くはずなのに、タイムラインで出会う情報として置き変わってしまうとたちまち点になってしまう。「モノ」と「情報」というのは性質がまったく違う。
点になったとたん、「ああその投稿見た」「いつ頃話題になったやつね」となってしまう。世に出されたモノが、タイムラインに流れる情報として消費され過ぎ去ってしまうのは、寂しい。手に入ったものが、過ぎ去った情報が物質になっただけのような感じになるのは、本当に残念だ。
さらに、よく見かけるのが誰かインフルエンサーが素晴らしい投稿で拡散したあと、手に入れた人からのコメントが、「便利」「コスパ」など事実ばかりであること。そのモノがその人のところに届いて生み出した世界のことが語られることは、圧倒的に少ない。これはSNSの特性なのか、元ネタの人以上に語るのNGな雰囲気というか、インフルエンサーを気取っているように見えないよう配慮なのか。もっとその世界を楽しんで欲しいし、語ってもらって拡散されるようになるといいなと思って見ている。
モノを見る目が育たない問題が悪化しそう
もうひとつ、気になった点は、SNSは、「人」であり「メディア」であり、「売り場」ではないというところだ。
SNSでモノが売れる場合一番重要な点は、「誰」を媒体にした情報かだ。信頼している人が推奨している分、自分で判断しなくなる傾向にある。きっかけが、「テレビCMで見た」なら使ってみて確かめたりする。使い心地が悪かったらやめる。でも、信頼している誰かがいいと言ったモノは、悪いはずないと思って盲目になることは実際ある。そして、回数を重ねると盲目であることに慣れてしまう。
自分で判断しないことが増えると、目利き力は育たない。自分で調べる、たくさん手に取ってみる、これでしか目は育たないので、判断しないとなれば目が肥える機会が圧倒的に減る。これはあまりに残念だ。
コンシェルジュ・外商のように専任の目利きとして一生寄り添い続けてくれるのであればいいかもしれないが、「売れるまで」関わって面倒見てくれたりはしない。
この二つの問題は、発信する側の問題ではない。情報の受け取り手=消費者が、受け身にならないよう意識するしか解決方法はない。だから、何度でも言いたい。モノを情報として捉えない、賢い消費者になろう。
賢い消費者はモノに恋するのをやめない
人にいわれて好きになった、はいい(モノに関わらずよくあることだ)。人にいわれて好きってことにする、はまずい。ちゃんと好きになって欲しい。きっかけはなんにせよ、恋に落ちてほしい。
恋に落ちたら夢中になって調べる。わかろうとしたら、少し目が肥える。それからの世界を楽しむために買う。点ではなく、線での付き合いがはじまる。そのモノと過ごす時間を、そのモノが作りだす新しい世界を、十分に楽しむ。それが毎日モノを愛でるということだ。そういったお気に入りのモノが散りばめられている生活はゆたかだ。
賢い消費者は、恋をしてモノを愛でるのをやめない。
そういう出会いとして情報を活用できる人、それが賢い消費者。そして、そういう賢い消費者は、実は企業やブランドも一番大切にしたいお客さまでもある。両想いで大切にされる。賢い消費者は、一番得をする。
そして、そういう賢い消費者が増えてこそ、ウルサス時代はもっと面白い時代になる。
縮小するリアル店舗、競合しないD2Cなど、溢れる情報に流されて損をするのは消費者。受け身にならず、流れてきた有益な情報を活用し、得たモノを愛でることができる、賢い消費者になろう。
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