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急回復するイタリア経済に潜むリスク

先週金曜日、S&Pがイタリアの格付見通しを安定的からポジティブに上方修正した。見通し改善理由として、前回2021年4月の見直し期対比で明らかに好転した次の三点があげられる。

第一に、GDP成長率がS&Pの予想2021年4.7%対比で強含んだことである。イタリアの2021年上期成長率は既に4.7%成長にあり、かつ足元の経済状況も強め推移にある。第二に財政収支指標の改善である。S&Pの4月時点予測では11.6%であった2020年の財政赤字対GDP比がイタリア国家統計局によると同9.5%。また2021年の公的債務対GDP比は155.6%となったものの、IMF予想では同161.8%であったため、予想以上の悪化には歯止めをかけられた。第三に、現在進行している改革プログラムに対する政府の強いコミットメントが見られたことである。

ただし、リスクがないわけではない。第一に、政治リスクである。現政権が2023年まで権力を維持すると考えられるベースケースに加え、ドラギ首相が2022年初めに大統領に選出される可能性がある。もっとも誰が担おうと改革の進展なくして次世代EUのリソースにアクセスできなくなるため、混乱することは考え難い。第二に、改善はしていてもGDP対比で見た債務残高は決して低いわけではないこと、である。構造改革の手綱が緩めば、次世代EUの資金を当てにできなくなる。第三に、モンテパスキに関する再編スキームがとん挫中であること、である。経済財務省MEFの計算では必要資本は25-30億ユーロ程度なのだが、合併するウニクレディトは70億ユーロ以上必要として譲らない。金融システム不安が払しょくされているわけではないのである。

今後、コロナ禍からの回復や改革の進捗状況についての前進が見られれば2022年には格上げも視野に入る。短期的にもS&Pと同様の判断にフィッチやDBRSなど他の格付け機関が追随することが考えられ、イタリア投資はアップサイドがありそうだ。しかし、述べたように一定程度のリスクがあることは、頭の片隅に常に置いておきたい。

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