2024年の中国ショートドラマに関する真面目レポートを熟読しました。はやくも市場規模1兆円突破は必然か
3ヶ月ほど前に中国のショートドラマについてのnoteを投稿したんですが、本当にたくさんの人に読まれました。日本の皆さんがこんなにショートドラマに興味があるなんて意外でした。
↑中国のショートドラマとは?日本で少しずつ広がっているみなさんの認識とは違います。そして、今や中国国内だけでなく欧米も席巻しているのはなぜなのか?といった内容はこちらを御覧ください。
つい先日、2024年も半年が経過したタイミングでショートドラマに関する定量的なデータ満載のレポートが発表されたので、今回はその内容をシェアします。
非常に長いレポートで様々な分析があるのですが、まずは市場規模とコンテンツ量について。
市場規模は2023年は358億6000万元に達しました。そして2024年は484億6000万元が予想されていて、さらに今後5年で1000億元(約2.2兆円)を突破するだろうとも記載されていました。これは以前のnoteでも紹介した通り、夢のある数字になっています。
また、明らかにコンテンツ量が激増しました。微短剧(ショートドラマ)の制作登録データによると、2023年に登録された作品数は3,574本。これは2021年のデータと比較すると382.2%らしいです。
ちなみに、微短剧市場規模とコンテンツ量がこれほど急増したのにはWeChatが多大な影響を与えたことは間違いなく、この仕組みについては上記にリンクを置いたnoteを参照ください。
そして、微短剧が増加したことにより動画プラットフォーム全体にも異変が。明らかに長編動画プラットフォームよりも微短剧のコンテンツ蓄積と消費が激増。
今後は長短編動画プラットフォーム間の新作数の構造がさらに変化し、ショート動画プラットフォームの新作数の優位性はさらに拡大する、スポンサービジネスのあり方も大きく変化するでしょう。
2023年だけで1兆円弱の市場になっていることもあり、微短剧のビジネス生態系が細分化され確立されてきたことも分析されていました。役割分担が明確になり、各プロセスごとに整備された産業チェーンが形成されていて、もはや新規参入できる隙間があるのか勝手に心配になります。
上流はコンテンツ制作から、脚本のアイデア出し、撮影制作、監督統制。中流はコンテンツ配信における、プラットフォーム統合、視聴数買い取り、二次流通。下流はコンテンツ消費における、公開配信、視聴、視聴後の課金消費、といったようにあらゆる側面がカバーされ、主要プレイヤーがリストアップされていてわかりやすくまとめられていました。
ビジネスモデルの面から見ると、微短剧は非常に多様です。既存の長編動画では、冠スポンサーやバンパー広告、会員購読やライセンスフィーが主な収入源となります。一方、微短剧はそれも収益化できるうえに、話数ごとの販売やトラフィック収入、動画に出てきた商品への販売誘導もあります。
中国版のTikTokなどはアプリにEC機能がありますのでシームレスに誘導可能。また、動画微短剧の出演者はそれほどのスターでもないから、積極的にライブECに参加する意欲も高い。収入源の選択肢が非常に豊富で、ビジネスやコンテンツを考える幅が広い。TikTokがECを開始した経緯は過去にnoteで紹介しましたのでご興味がありましたら↓
今後ですが、業界がさらに発展することで、コスト削減と効率向上のために分業集中がますます高まることは必須でしょう。将来的には、脚本、制作、運営、プロモーションなどを単一の企業が一貫したチェーン全体で完結する可能性も高いと分析されていて、どこがいち早く覇権を握るのかは激しい競争です。
ここからはボクの視点ですが、結局利益をあげる箇所は限定され、その差がさらに拡大していくのではと想像しちゃいます。現在大流行しているミニプログラムタイプの微短剧においての収益分配システムでは、メディアチャネルへの視聴者流入投資の割合の高さが顕著。ユーザーの課金収入の8割がメディアチャネルへの視聴者流入投資に費やされていると指摘されています。
つまりWechatやtiktokがめちゃくちゃ儲かっていることになります。当たり前ですが、ユーザー流入の入り口を押さえているプラットフォーマーが強すぎる。そして、残りの10~20%の収益が、制作側、配信業者などのプロセスで一定の分配比率で分けられます。
それでもかなりの収入にはなるのでしょうが、やはり不公平なのではないかと感じてしまいます。この状況を脱しようとビジネス的に頑張っているのは自分たちの独自ドラマプラットフォームを持つ運営社たち。ReelshortやShortMaxを直接立ち上げる利用者を増やし視聴獲得と課金を一気通貫のビジネスループにすることで収益を上げようとしています。
だからこそ、まだ大流行になってない市場にて先行することが重要になり、中国企業は日本にも進出してきてます。最近、日本にいる仕事つながりの人たちから紹介されて日本のショートドラマをちょこちょこ見ています。今後に期待ですね。
ショートドラマが動画革命を起こすような進化を遂げることを応援しています!
(参考資料)