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日本はいずれ「時間差一夫多妻制」へ移行する?【データ10】

日本では、民法732条に「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」と規定されているように、法律上「一夫一婦制」となっています。しかし、これは、同時期に重婚してはいけないということであり、複数の相手との結婚を禁止するものではありません。

つまり、離婚して再婚し、また離婚しては再婚をし…を繰り返している人は、ある意味「時間差一夫多妻(一妻多夫)制」を生きていると言えます。

ご存じの通り、現代の日本は3組に1組が離婚しています。そして、それと連動して再婚件数も大きく増えています。以下、婚姻数と再婚数の推移をグラフ化してみました。

婚姻総数はずっと下がり続けているのに対して、再婚数が上昇しています。これは、離婚数が増加している影響が当然あるのですが、注目したいのはその再婚の組み合わせの形態です。

終戦間もない1950年当時は、「夫再婚×妻初婚」の組み合わせが圧倒的に多かった。ところが80年代頃から、「夫婦ともに再婚同士」の組み合わせが同等に増え、その傾向は今も継続中です。以前より増えているとはいえ、「夫初婚×妻再婚」という組み合わせがもっとも少ないのです。ここから言えるのは、離婚して再婚するのは男の方が多いことがわかります。一度、結婚した男がいかに「ソロで生きる力」を失うかがここにも表れていますね。

© 荒川和久 無断転用禁止

再婚数の増加について、都道府県別の傾向を見てみましょう。

1980年から2015年までのそれぞれの年で「再婚夫×初婚妻および再婚妻」「再婚妻×初婚夫および再婚夫」の数を算出し、各都道府県別の婚姻数全体における構成比の上昇率で比較してみました。

なんと男女とも、断トツの1位が滋賀県でした。

ちなみに、滋賀県は離婚数の上昇率でも1位です。だからといって、滋賀県の人たちが「浮気な男女が住む県」だというつもりはありませんが、この36年の間に、滋賀県でいったいどんなことが起きたんでしょうか? 正直、よくわかりません。

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離婚と再婚を繰り返すことをネガティブにとらえる人も多いかもしれませんが、もともと日本人というのは、離婚と再婚の多い民族なのです。離婚率に至っては、江戸時代まではおそらく世界一でした。「夫婦は離婚すべきでない」という規範ができたのは明治期以降のもので、江戸時代まで日本人は離婚再婚を自由に繰り返す人たちだったわけです。詳しくはこちらの記事を参照ください。

https://comemo.io/entries/5680

もちろん、夫婦関係が長く続くことはいいことですし、離婚を推奨するつもりもありません。が、「離婚=不幸」という規範に縛られ、やり直しの機会を自ら排除する必要はないと考えます。人生100年時代と言われている中で、仕事もひとつの会社で勤め上げるという形が常識ではなくなっていきます。結婚に関しても同じことが言えるのではないでしょうか。

「失敗できない」と気にするあまり、一回目の結婚すらできなくなっているのが現状の未婚化の正体かもしれません。

ちなみに、離婚再婚が激増した滋賀県はシングルマザー世帯率が東京に次いで2番目に低い県であり(2015年国勢調査より)、総務省が今年5月に発表した「統計トピックスNo.101」によれば、人口に占める子どもの割合が高い県の2位も滋賀県です。滋賀県の人たちは、「子どもたちにとってよりよい環境は何か?」を最優先し、離婚も再婚もそのための前向きな手段のひとつとしてとらえているのかもしれません。

https://comemo.io/entries/8858

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。