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工場を再現した日本のオフィス。脱工場化へのアイデアとは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

新しい働き方の波が次々と押し寄せてきたこの2年。リモートワークやワーケーションなどの言葉もよく耳にするようになりました。さらにはAIなどの新テクノロジーによる職の再定義、長寿化による人生100年時代のキャリア等々、会社と個人が考えるべきことが山のようにあります。

前著に続いて多くの人の不安に応える『LIFE SHIFT2:100年時代の行動戦略』(リンダ・グラットン他著/東洋経済新報社)がベストセラーとなっています。

著者のグラットン氏とキャリア論を専門とし「プロティアン・キャリア」を提唱する法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授との対談は、これからの我々の行動のヒントが詰まっています。

「率直な意見を申し上げますと、多くの日本企業は工場をオフィスで再現しようとしています。第2次世界大戦後の目覚ましい産業化の過程で、工場を起点に新しい仕事のやり方が生まれたのだと思います。そして今、日本企業が何に苦しんでいるかというと、デザイン関係やテクノロジー業界などクリエーティブな仕事ですよね。ナレッジワーカー(知識労働者)がいるにもかかわらず、日本は工場っぽいオフィスになっていて、同じ時間に出社する。タイムカードで管理する。そうした働き方が固定化されていて、今も本質的に変わっていないのではないでしょうか」

上記記事でのリンダ・グラットン氏の発言より

タナケンさんと私ははソフトバンクアカデミア1期生の同期でもあり、個人的に親交があります。『転職2.0』では市場価値をあげるための個人のキャリア戦略について論じましたが、タナケンさんのいう外部の変化に応じて変幻自在に対応していくキャリア(プロティアン・キャリア)というのは非常に共感するものがあります。人生において1つの仕事だけ全うするというよりは、二毛作、三毛作としていかなくてはならない時代です。広くネットワーキングをして常に変化できる柔軟性を持ち続けること、ひいては「すべてを学びとして自身に取り込む能力」が求められていると考えています。

しかしながら、1つの会社で同じ場所に住み続けていると、環境も付き合う人々も固定化してくるため変化に対応する機会に恵まれないこともあるでしょう。それを打破するための、会社として仕組みを整えているところもあるようです。

デジタルマーケティング支援会社シンクロでは月1回旅をすることを「必須業務」としており、上限5万円まで補助も出るそうです。「どこで働いてもいいし、好きなことに取り組んでいい」という、ちょっとびっくりするような働き方を実践しています。

 「始めはかなり苦戦しましたが、潮が通ってきてからはブリを3本釣りました」「でか、何キロ?」「8kgです。10kgオーバーは出ず……」「脂がめっちゃ乗ってそう」――これは休日に釣りに出かけたときの日記ではない。デジタルマーケティング支援会社シンクロ(東京・品川)の社員による業務日報とそれに対する社長や上司のコメントだ。

社長の西井敏恭氏は20代からバックパッカーとして世界中を旅し、30代でシンクロを設立。複数の企業の取締役も務めている人物です。

起業して気づいたのですが、マーケティングの仕事をしなければいけないはずなのに、実は8割くらいをマネジメントの時間に割いていた。
シンクロでは、自分の好きなことを業務にして集中できる会社にするために、いかにマネジメントをなくすか、という発想から会社を作っています。情報をオープンにして、社員ひとり一人が自分の意志でシンクロらしい仕事を阿吽の呼吸でできるようにしたい。
一緒に旅行をすると自然とお互いがわかり合える状態になります。だからこそ、みんなと旅行する時間をすごく重要視しています。

実は8割くらいをマネジメントに割いていた、というのはドキリとする方も多いのではないでしょうか。いわゆる「管理職」の名の通り、メンバーを管理することが仕事であると捉えているのがこれまでの主流でした。しかし、実際に会社が期待していることは、チームを率いて個人では達成不可能な大きな成果を出すことです。そのようなチームをつくりあげ、リーダーシップを発揮することこそが本来業務ではないでしょうか。

シリコンバレーのテック企業の多くで運用されている「OKR」という仕組みも、チームが一丸となって大きなインパクトを出すための手法です。これまでのMBO(目標管理制度)では全部できてB達成、のような評価をしています。一方OKRでは「半分達成できたら御の字」というような高いハードルを掲げることが良しとされています。このような考え方の違いが、個々人の日々の行動に変化を与えるのでしょう。

冒頭の記事にあったように、工場を再現しようとした日本のオフィス。そこでは不良品ゼロ=ミスゼロを目指し、均一化した質の高い製品をつくるようにクリエイティブワークに取り組もうとしています。そうではなく、根本的に仕事のデザインをし直すことが、これからのメガトレンドに乗って成長するためには必要でしょう。


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タイトル画像提供:phonlamaiphoto / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

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