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【日経_世界経営者会議】DeNAから考える人材輩出志向の組織作り

2021年11月9日(火)・10日(水)の2日間にわたって、世界の名だたる企業の経営者が介し、自社の取り組みと将来のビジネス環境について語る『第23回日経フォーラム 世界経営者会議』が開催された。ありがたいことに、昨年に引き続き、今年もオンラインで視聴させていただける機会をいただけた。

そこで、今月は5回にわたって、世界経営者会議での講演内容を題材として、これからのビジネスの変化について考えてみたい。

ザクロひっくり返し戦略

DeNA会長の南場智子氏の講演では、人材を抱え込まない組織作りの在り方について語られた。南場氏と言えば、今年、女性初の日本経済団体連合会(経団連)副会長となり、様々なメディアで終身雇用で人材を抱え込む旧来の日本企業の在り方を改革しようと発信している。組織の大黒柱はあえて引っこ抜き、起業を後押し、社会全体のイノベーションを活性化させるべきだというメッセージは、南場氏の熱い思いと将来の日本に対する危機意識の高さを感じさせる。「絶対数が足りない。」「数が少なすぎる。」という言葉は講演の中で何度も聞かれた。

そのような危機意識に従って、DeNAで取り組まれているのが「ザクロひっくり返し戦略」だ。DeNAでは、元々、従業員のキャリアとして3つのパス(①事業リーダーとなる道、②スペシャリストとなる道、③独立起業・スピンアウト)が期待される。この中で、③独立起業・スピンアウトを強く従業員に勧め、社外に出て挑戦し、同じ夢やビジョンを共有するDeNAギャラクシーを作り上げることを目指している。ザクロと例えているのは、固いザクロの皮のような組織の中に従業員を囲い込んでいるのではなく、皮を破り、ザクロをひっくり返すと赤い粒上の実が零れ落ちてくる。この零れ落ちる実を自社の中の優れた人材と捉え、独立・起業や転職など、活躍の場を広げて欲しいという。同社では、独立・起業を促進するためにファンド(CVC)を設立して支援するとともに、出資比率を25%以下に抑えることで経営の独立性を高めさせている。

人材輩出を組織の軸とする

人材輩出企業として知られるDeNAだが、かつてから同じように人材輩出企業として知られる企業はあった。リクルートやSONYは、古くから人材輩出企業として従業員の転職や独立・起業を推奨し、出戻り社員も珍しいものではなかった。最近では、パーソルやサイバーエージェントも同様に評価されている。それでは、DeNAがこれらの企業と異なるところはどこにあるのだろうか。それは、外に出る人材との距離感だと思われる。

例えば、これまでの人材輩出企業での起業は、これまでの業務の延長線上で事業を興す所謂「のれん分け」のような形態や、出資をしたときに取締役を親会社から派遣し、100%子会社にするなど原籍の企業との関係性が非常に強いものが多かった。典型的な例が、サイバーエージェントからスピンアウトしたマクアケだろう。同社は上場しているが、株式の53.09%はサイバーエージェントが保有している。

しかし、DeNAのCVCは出資比率を25%以下に抑え、独立・起業をした元従業員の独立性を重視している。この独立性の高さがユニークな点であり、事業も人材もゆるく繋がり、コミュニティに拡がりを持たせている。

人材輩出が国の特徴となっているオランダ

さて、それではDeNAのようなゆるい繋がりでコミュニティを広げていくような組織の在り方は、世界で観たときに参考となる事例があるのだろうか。そうしてみたときに、参考となる国がオランダだ。オランダは、様々な面で人材の輩出国家として知られている。

人材輩出国家としてのオランダで、世界的に最も知名度が高いのはサッカーだろう。特に、アムステルダムを本拠とするアヤックスは、国際スポーツ研究センターの調査で、欧州1部リーグに最も多くの選手を輩出しているクラブとして選ばれたこともある。アヤックスだけではなく、オランダのクラブチームは若手を育成して、他の欧州トップクラブに排出する優れた育成メソッドを持つことで知られている。日本でもその育成メソッドを学ぼうと、2018年にサガン鳥栖がアヤックスと提携をしている。

また、教育機関「メディアラボアムステルダム」は、欧州で最も最先端を行くクリエイティブ人材の育成機関として知られる。受講生は世界中から集まり、デザイン思考やデザインマネジメントの最新理論と実践的学習によって、社会課題を解決したり、新しいビジネスを生み出す創造性をもったリーダーが育成されている。デザイン思考というと日本ではスタンフォード大学の d.school や IDEO社 が有名だが、ここ数年、イタリアやオランダ、英国などの欧州の大学や研究機関で研究が盛んであり、優れた研究成果が次々と公表されている。

オランダはもともと、小さい国だということもあり、優秀な人材はドイツやフランス、英国などの近隣の大国に移住して活躍するという歴史的背景のある国だ。そこから、人材の育成、とりわけイノベーションやクリエイティビティに優れた人材の輩出を強みとする組織が作り出されてきた。オランダの在り方を学ぶことで、日本の若者の育成とキャリアパスについて新たなモデルを構築するヒントを得ることができるだろう。

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