データは医療機器になれるか?
コロナ禍における人工呼吸器
医療現場を支えるための、様々な取り組みが、あらゆる人によってなされています。
日本では、国立病院機構新潟病院の臨床研究医療機器イノベーション研究室室長で医師の石北直之氏らのグループが、3Dプリンターで生産可能な人工呼吸器に関する研究開発プロジェクトを始めた。同氏の発明した人工呼吸器の研究成果と3Dモデルを無償公開することで、人工呼吸器を迅速に生産・供給するシステムの実現を目指す。
この人工呼吸器は、2017年に国際宇宙ステーション内の3Dプリンターへの電送実験の対象となり、無重力環境下で動作試験に成功したもの。圧縮空気を動力源としており、電源がない状況で使えるほか、手動でも動作する。一定の性能要件を満たす汎用3Dプリンターと、材料であるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂があればどこでも造れるという。
ただし、現時点で医療機器としての認証は取得できていない。今後、まずは日本において、後発医療機器として3Dプリンターで生産した実機に対する医療機器認証の取得を目指す。
上記は、以前、カンブリアナイトでも登壇していただいた石北さんの活動です。前回登壇いただいた内容は、下記のリンクにまとめています。この時は、宇宙ステーションで麻酔が使えないという問題に対する内容でした。
新しい医療機器流通の模索
今月開催したカンブリアナイト32にて、再度登壇いただき、この宇宙ステーションでの課題解決のための活動が、コロナ禍の医療現場での人工呼吸器不足に対して役立つ、という内容について共有いただきました。
上記のYouTubeにて、公開試験をいつでも閲覧することができます。
石北さんのプロジェクトがユニークなところは、データを送り、現地の3Dプリンターで機材を生成するというところです。設計図としてのデータが流通できれば、すぐに現地で医療に役立つ製品が調達できる。輸送コストげ激減する、スピードも在庫も関係ない。だからこそ、宇宙でも使えました。
ここ数年、ソフトウェア医療機器が新しい領域として徐々に認められてきました。医療機器に関する様々な規制は、もちろん安全性と有効性のバランスを検証するものとして重要です。物理的な医療機器だけではなく、ソフトウェアならではの特性を理解した上で、新たな時代の管理体制を積極的につくっていく必要があると思います。実際に、そうした動きに対して、ベンチャー企業を中心に、新たな座組みも生まれ始めています。
設計図データは医療機器となるか?
石北さんの試みは、そうしたソフトウェア医療機器というものを、さらに一歩先に進めたものだと思えます。設計図のデータそのものを医療機器として承認もしくは認証できないか、という挑戦だからです。医療機器には、製造工程そのものに対して安全性を担保することが求められます。そこを、どう解釈し、実際の安全性を担保しつつ、新しいファブリケーションの時代ならではの、医療機器の製造と流通を実現できるのか。
この辺りに知見を持っておられる方々、ぜひサポートをお願いします。ご興味ある方は、ご連絡ください。僕自身は、このプロジェクトに関わっているわけではないのですが、次の時代をつくる動きを後押しできればと願っています。