ペンス演説は新たな冷戦時代を告げる

 ペンス米副大統領は10月4日、ワシントンのハドソン研究所で「政権の対中方針」をめぐって、40分に及ぶ演説を行いました。ニューヨークタイムズは「新しい冷戦の前触れ」と評しましたが、確かにこの演説はチャーチル英首相の「フルトン演説」を想起させるものがありました。フルトン演説でチャーチルは「バルト海のステッテンからアドリア海のトリエステまで鉄のカーテンが降ろされた」と述べ、「東西冷戦」が到来しつつあるとの認識を示しました。

今回のペンス演説を要約すれば、①中国の自由化や平和的台頭への期待は幻想②アメリカは中国の軍事力増強を受けて立つ③中国に自由、公正、相互主義的貿易を要求④インドからサモアに至る友好国と連携強化ーーといったことになりましょう。中国が豊かになれば西欧型の民主的な社会になるだろう、というオバマ政権までの対中スタンスは幻想だった、とペンス副大統領は繰り返します。そんな希望は満たされなかった、という訳です。

軍事面でも中国は南シナ海の人工島を軍事化しない、とオバマ氏に約束したはず。ところが実際は軍事基地を建設したではないか。中国国内には情報統制を張り巡らしている。新興国を借金漬けにして、債務のカタとして港湾などを支配下に置いている。前の政権までは見て見ぬふりをしてきたが、トランプ政権はそうした横暴を許さないぞ、と強調しています。中国のハイテク技術が軍事転用されている現実を踏まえ、米国は技術覇権で一歩も譲らない、とも明言しています。

演説の舞台が保守系のシンクタンクだったこともあり、ペンス氏が「我々は負けない」と力こぶを入れた部分では、聴衆から拍手喝采が巻き起こります。日本では米中の貿易摩擦や貿易戦争といった言葉が用いられることが多いですが、米国側から見る限り米中の対立は安全保障も含め「全面化」しつつあります。これからの国際情勢を見極めるためにも、ペンス演説のテキストは一読しておく必要があると思います。

https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-vice-president-pence-administrations-policy-toward-china/

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