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孤独リスクを回避する、身近にある「接続するコミュニティ」

誰がなんと言おうと、今後少子高齢化は進むし、日本の人口は今の半分以下の6000万人まで減少します。これから何か始めたとしても、人口推移というのは10年や20年で変わるものではありません。確実にそうなるのです。

人口減少をヒステリックに悲観的に叫びたいという気持ちはわかりますが、どうしようもないことを騒ぎ立てたところでそれこそどうしようもありません。

大事なことは、そうなる未来に備えて、個々人がどう適応していくべきかを考えることでしょう。

社会の個人化はどんどん進みます。ソロ社会化は不可避です。ソロ社会化というと、未婚の男女が増える社会だと勘違いしている人がいますが、そうではありません。結婚した人もいつかは誰もがソロに戻る可能性があるんです。だって、夫婦そろって死ぬなんてことは滅多にないわけですし、昨今増えている熟年離婚でソロに戻ることだってあるんですよ。

何度も言ってますが、離婚した男性の自殺率や異常に高い。自殺率と離婚率の相関を見ると、男だけが強い相関があります。死別はまだしも、妻に自己を否定され、一人にさせられた男の末路は悲しいものがあります。対して、女性は離婚したくらいでは自殺しません。

自殺に至らなくても、男は離婚後病気罹患による死亡率も異常に高いのです。

これは、既婚者に極度に多い「配偶者唯一依存症」によるものです。頼れる相手が妻しかいないために、その存在を失うと自分自身も失ってしまうのです。こうした症状は、特に定年後仕事をやめた60代以上の男性に顕著です。

2010年内閣府が実施した「第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によれば、60歳以上の男性の8割が「心の支えとなる人」は配偶者と回答しています。ドイツの69%、アメリカ57%と比較しても高い数値です。問題なのは、配偶者に依存してもいいのですが、日本の既婚者は、友達や近所の人には頼れず、妻だけに唯一依存してしまう傾向があることです。

一方で、日本の妻の夫依存度は54%です。この夫婦の意識の乖離こそ、世のお父さんたちは知っておくべきでしょう。

よく既婚者が独身者に対して「結婚しないと孤独死するぞ」と脅してきますが、現在孤独死している人のメインは70代以上の高齢男性ですが、そのほとんどが元既婚者です。つまり、何らかの理由で妻と死別や離別をして一人になってしまった男が孤独死しているんですよ。

さて、そんな妻唯一依存既婚者に向けて、僭越ながらアドバイスするとしたら、「ソロで生きる力を身につけてください」と言いたいと思います。

同様の内容は、今年春実施の朝日新聞主催の50代以上向けイベントでも登壇、お話させていただきました。

「ソロで生きる力」といっても、誰にも頼らずたった一人で生き抜く力ではないし、無人島でたくましくサバイブする野生力でもありません。逆説的ですが「ソロで生きる力とは人とつながる力」を指します。無理に友達や趣味を作ろうとしたり、どこかの集団に所属しようとするのではなく、日々の生活の中で多くの「接続するコミュニティ」を見つけ、そこでの人とのつながりによって自分の内面を充実化させるということです。

コミュニティに接続?

よくわからないという方のために具体例を言いますと、たとえば、本を読む。この本自体が「接続するコミュニティ」になりえます。著者の考えに触れるということも大事ですが、本を読んだら、ぜひなんでもいいから感じたこと、思ったことを書いてください。それは、書くことによって、自分の中にある今までの自分の価値観と対話することにもなり、そうして書きあがったものを確認することで、自分の中に新しい自分を確認することができるからたです。

さらには、今は各地で読書会イベントが開催されているので、そうしたイベントに出向き、同じ本を読んだ者同士で意見を交わしてみてください。全くの見ず知らずの間柄であっても、同じ本を読んでいるからこそ通じる思いというものがあるはずです。知らないからこそ純粋に言いたいことが言えるとも言えます。

他にも、今は、ひとりでも参加できて、見知らぬ者同士夕食を共にするというサービスもあります。行きつけの店を持つという発想ではなく、一期一会のつもりで、人との接続機会を増やしてみてください。まあ、スナックでもいいんですが、そういう接客業以外でトライすることをお奨めします。

さらには、旅に出る。とかく場所を巡ることが旅だととらえがちですが、旅とはそこでしか会えない人と触れ合うことです。いろんな所に行ったら、見知らぬ人に道を聞きましょう。地図を頼らず人を頼る旅をするのです。それをきっかけにいろいろお話をしてもいいと思います。

往々にして、ソロで生きる力のないおじさんは「名刺交換しないと他人としゃべれない」人が多い。まずは、学歴や肩書や年齢など、今までよりどころとしていたものに一切頼らず、見知らぬ方とどれくらいお話しできるかという訓練が大事です。知らない仲なんですから、マウント取る必要もありません。なかなか友達ができないというおじさんは、常に誰かのマウントを取ろうとする意識が外側に出ているからです。そんなの無用です。誰もあなたのことを知らないし、片意地張る必要もないのです。

そうした素の状態で人と対峙し対話する。それが結果として、自分の中の自分を活性化し、自分の中の自分とつながることになります。それは自分の外側ではなく、内面に安心できるコミュニティを築くことと同義です。

どこかのコミュニティに安心な居場所を求めるのではなく、安心なコミュニティは自分自身の内面に築いていくという視点を持つ。それが精神的自立としての「ソロで生きる力」となります。

接続するコミュニティの考え方に関しては、ぜひ拙著「ソロエコノミーの襲来」をお読みいただきたいのですが、こちらにもその内容を書いています。

…というわけで、そんな「接続するコミュニティ」のひとつの形でもある読書会。ありがたいことに、拙著「ソロエコノミーの襲来」を課題本とした読書会が開かれるようです。

はい。実はこれを言いたかったのですwww

繰り返しますが、読書会は「接続するコミュニティ」のひとつの形でもあり、もっとも簡単に参加できるものです。ぜひ参加していろいろ初対面に人たちとお話し合ってみてください。同じ本を読んだという共通点だけですが、そこには不思議な関係性を感じることができます。そして、人の話を聞き、自分の話をすることで「今まで感じなかった新しい自分」に気付くきっかけになります。ぜひご参加下さい!

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。